雪ん子
菜月 夕
第1話
『雪ん子』
その子が転校してきたのは雪がチラつき出した冬の始まり頃だった。
男の子だけど線が細くて美形と言う言葉をそのまま体現した雪野君はクラスの女子どもをとりこにした。
たちまち彼女達の壁の中に取り込まれ、男子は阻害されて体育の着替えでさえ何故か女子に阻まれて一人で行っている。
田舎の学校なんてこんなイベントは少ないのだ。しょうが無いのと女子に睨まれるのも怖いので雪野君は彼女達のおもちゃになったままだ。
僕は偶然隣の席になったのと、最近まで大病していたせいで友人になっても他の男子どものように排除される事は無かった。
「ボクの手、冷たいでしょ」
彼が時々熱をぶり返す僕の額に手を当ててくれても女の子達は暖かい眼で見ているようだが、男子として見られていないのではないか、と言うちょいと尊厳を疑ってしまう気がする事もあるが、彼との付き合いは体育にまともに参加できない僕に付き合ってくれたりで心暖まるものだった。
冬のそんな中、学期末の12月も後半過ぎ、僕は授業中に久しぶりに大きく体調を崩して熱を出して保健室に担ぎ込まれた。
雪野君も心配そうに僕に付き添ってくれていた様だが、熱で朦朧としてそれからの事は夢か現実か判らないほどだった。
「僕が熱を貰ってあげるね」彼はそう言って僕を裸にして彼も服を脱いで一緒に保健室のベッドに入ってくれた気がする。
たちまち熱は引いて僕はその気持ちの良さに安心して眠り込んでしまった。
気が付くと僕は病院に搬送れていて安全の為と3日ほど様子を診て入院する事になってしまった。
入院してる間に冬休みに入ってしまい、雪野君に逢えないまま冬休みになって冬休み明けには彼が急な事情でまた転校していた事を聞かされる始末だった。
あの時の事は夢うつつ、幻の様な出来事だったけど、彼が服を脱いだ時に胸に膨らみが見えた気がするのも熱の影響だったかもしれない。
一年経って初雪がまた降り出した時にチラチラ降る雪が「パパ!」とか僕に呼びかけながら降ってくるのを見るまでは。
雪野君はあの時、オトナになって雪女になったのだろうか。
僕はあの時、彼-彼女とどういう風に寝たのだろうか。
雪は僕に纏わり付くように降っていた。
雪ん子 菜月 夕 @kaicho_oba
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