天川裕司

タイトル:靴


「え?靴買ってくれたの!?」

「ああ。お前その靴、欲しいって言ってたろ」

「うれしい!ありがとう♪」


俺たちは遠距離恋愛。

久しぶりに会った時、前からずっと

欲しがっていた彼女の靴を買ってやった。


彼女はとても喜んでくれ、

その日からその靴を履いて生活してくれた。

俺も嬉しかった。


その日はゆっくりまったり過ごせた。

また別れると、今度いつ会えるか分からない。

俺も彼女も仕事をしており結構忙しいから、

会える日はちゃんと日を見繕い、

お互い予定を合わせなきゃならない。


「じゃあまたね♪」

「ああ」

別れる時はやはり寂しいものだ。

今度できるだけ又早く会おうと2人で約束し、

いつもの改札で別れた。


(数ヵ月後)


それから数ヵ月後。

結構早めに予定を合わせる事ができ、俺たちは会うことに。


(電話)


「今駅に着いたから♪すぐ向かうからね」

「ああすまんな、迎えに行ってやれなくて。でも気をつけてな。俺もすぐ帰るから」


俺はその日、仕事。

出先で彼女から電話が入り、

先に俺の家に行っといてくれと伝え、

俺もすぐ帰ることにしていた。

彼女は合鍵を持ってるからこんな時便利だ。


そして急いで帰った俺。

玄関に入ると、彼女の靴が置かれてた。

「(あ、もう来てんだな)おう〜すまんなぁ、今帰ったよ」

玄関からリビングへ向けてそう言った俺。

でも返事は返らない。


「帰ったぞ〜」

ちょっと変に思いながらリビングへ行った。

すると置き手紙が1枚。


(手紙)

靴、ありがとね。

ホント嬉しかった。

またそれ履かせてもらうからちゃんと取っといてね。

ずっと愛してるミサキより。


「……なんだこれ」

部屋の中はしーんとしている。


あとで知ったことだが、

ミサキは数日前に事故に遭い、亡くなっていた。


ミサキはこの部屋に帰って来てたんだ。

靴がその証拠。

俺はその靴をずっと取って置くことにした。

俺が世界で愛したのはあいつだけ。

だからあいつなしの人生は考えられない、

その正直がどうでも残る。


人はこの世を離れても、

消えて無くなるもんじゃないと信じている。

俺とミサキを繋ぎ止める物理的なものがあの靴。

そして愛は、見えないところで

俺とミサキをしっかり繋いでくれている。


(後日)


「ただいま、帰ったぞ〜」

それから俺は会社から戻るたび、

部屋に向けてこう言う。


「おかえり♪お仕事お疲れ様。疲れたでしょう?ご飯できてるわよ」

ミサキが必ずいつか

こう言ってくれるのを信じていながら。


動画はこちら(^^♪

https://www.youtube.com/watch?v=gAKtWWBhsso

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天川裕司 @tenkawayuji

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