第25話
私は、もう一度、上田さんに話してみることにした。
「この前の話なんだけど…。チエちゃんママ本人に言っても無反応で、作り話じゃない?って、言われた。」
「え。本人に言ったの?そりゃ、否定されるわ。私がやりました〜なんて言っちゃったら、子どもがいじめられるかもしれへんやん?そりゃあ、私がやりました〜。ごめんね。テヘッ。とか、ならへんと思うわ。
監視カメラに映ってたのは?ほんとらしいよ。幼稚園の職員会議で、みんな確認して議題に上がったって言ってたから。」
「じゃあ。私は、どうしたら良かったん?我が子が、疑われて、我慢して、真実を言ったところで、邪険にされて我慢して?って、おかしくない?」
「まあ。気持ちは、分かるけど…。
知ってる?チエちゃんママって、あの人、園長にブランド物のバックとかプレゼントしてるらしいよ。そりゃあ。この幼稚園での扱いもVIPになるよね…。勝ち目ある?きっと無いよね。貸しを、ひとつ作ったと思って、あきらめた方が良いんじゃない?私は、あなたの、味方だけどね。どうしようも無いことってあるよ。権力にひれ伏すっていうか、権力を持った者が勝ち。この園も、そういう権力で回ってる。一般の保護者は、VIPに逆らっちゃダメってこと。わかる?」
言いたい事は、わかる。職場でも、卑怯なやつとか、上にゴマをすって、忖度を受ける人、出世する人って、いる。そういう卑怯な人間が、良い思いをする事もわかってる。でも、幼稚園だよ?子どもが絡んでるのに、ほんとにそれで良いの?
私は、上田さんに、自分のやるせない気持ちを聞いてもらった。
ほとんど愚痴っていう内容だけど、沢山うなづいてくれた。
この世は権力を持った者が勝ち。
真実なんて、関係ない。
私は、一通り愚痴ったあと、上田さんに言った。
「社会の仕組みを学んでるって、思うしか無いよね。」
もう、そう思うしかなかった。
所詮、私は、職場でも、幼稚園でも負け組だ。
保護者として、子どもを守ってやるには、力や権力も必要なんだな…。
残りの年少組の期間は、どんよりした気持ちで過ぎていった。
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