第1話の変更点の解説(後編)


・ユーキと父・サイラスの馬車旅の描写



 梶野カメムシさまからは「私なら、2話の馬車の旅の部分はまるまるカットします」とのアドバイスを受けたのですが、残留。


 理由はサイラスが重要人物であり、第2章で退場してしまうので少しでも登場シーンを残したかった事ですね。

 単にサイラスが私のお気に入りだったのもあります。(ちなみに一番のお気に入りはロドニー)




・”ゴトン、ゴトン……”


「ふぁ~っ……あふっ」


 馬車の荷台に乗ったユーキは大きな欠伸あくびをしながら、「英雄王ローランドと7つのリング」と表題された本を閉じてかたわらに置いた。

        ↓

「ふぁ~っ……あふっ」


 車輪を軋ませる馬車の荷台に乗ったユーキは、盛大に欠伸あくびをしながら『英雄王ローランドと7つのリング』と表題された本を閉じてかたわらに置いた。



 こちらも前編の“パシッ”などと同じ理由です。

 代わりに最初の地の文に「車輪を軋ませる」の一文を追加。




・ これらの本は馬車旅の退屈しのぎにと、ユーキの父親・サイラスが手当たり次第に買いあさっていた物だ。まったく、「健やかに育てる初めての赤ちゃん」などという本はいったい何の為に買ったのか。

        ↓

       カット



 書かなくても後の会話で理解できると判断。




・軽口の応酬ではユーキはサイラスに敵わない。いや、体を使ったケンカでは子供のユーキにはなおさら勝ち目が無いのだが。

        ↓

 軽口の応酬ではユーキはサイラスに敵わない。いや、体を使ったケンカではまだ10歳のユーキにはなおさら勝ち目が無いのだが。



 年齢を明かすタイミングを早めたのは梶野カメムシさまのご指摘です。

 年齢を10歳に変更したのは、アレクと同様に『オープニング』の変更に伴ってです。




・町に到着するシーンをシームレスに変更



 セリフを大幅にカットし、地の文で町に到着した事を説明。




・以前は冒険者業を営んでいたサイラスだったが、妻の死を切っ掛けに兵士になると言い出したのだ。ハッキリと口に出して言ったわけではないが、息子であるユーキを想っての決断だろう。

 それをユーキは何となく察していたし、嬉しくも感じていた。だが同時に、ただ庇護の対象とされる自分自身に不甲斐なさを感じてもいたのだった。

        ↓

 以前は冒険者業を営んでいたサイラスだったが、妻の死を切っ掛けに兵士になると言い出したのだ。

 シュアーブは平和で、兵士といっても主な仕事は町の治安維持と訓練だ。

 ハッキリと口にはしなかったが、息子であるユーキを想っての決断だろう。この時のユーキには、そこまで思いを巡らす事はできなかったが。



 梶野カメムシさまから「シングルファザーが兵士になるのは不自然」との指摘を受け「平和で安全」を強調しましたが、私としては「とってつけたような文章」に感じてしまい……。何か表現を間違ってしまった気がします……。

(梶野カメムシさまから提案された「借金の為に兵士にならざるを得ない」「兵士ではなく、衛士に転職したが戦争に駆り出される」などの設定は、後のストーリーに大きく影響が出そうなので使えません)


 またサイラスの転職理由を、ユーキは察していない事に変更。(8歳や10歳なら、察せない方が自然だと思ったので)




・「今日は聖誕祭だからな。レゾールでも祭りやってたろ?」


 ユーキは馬車旅ですっかり忘れていたが、今日はブライ教の初代聖女が生まれたとされる記念日だ。ほとんどの国ではこの日を祝日としている。

 サイラスの言う通り、ユーキ達が以前に住んでいたレゾールの町でも豊作祈願と合わせて祭りを行っていた。


 祭りのせいか、まだ朝の早い時間にもかかわらず町は賑わっている。

        ↓

「ちっ、しまったな。今日は聖誕祭かよ、めんどくせぇ」


 ユーキたちは馬車旅ですっかり忘れていたが祭りのせいか、まだ朝の早い時間にもかかわらず人が多く、並ぶ屋台が道をせばめている。



 こちらも梶野カメムシさまのご指摘です。「祭りの日を狙って引っ越したように見えてしまった」ようなので。

 また、セリフを変更して「引っ越し前の町の名前」を削除。少なくとも今は必要ない地名なので。


 祭り(聖誕祭)の説明は、アレクの方の冒頭で行ったので簡略化しました。【旧版】の第1話と第2話を統合しましたので冗長かと。

 代わりに、「屋台が出ている」という文章を追加。




・新居に到着するや、荷降ろし・荷解きの仕事が待っている。

 2人はせっせと荷物を家の中へ運んでいく。やたら父親の私物が多い気がするが、ユーキはなるべく気にしないようにする。

 そして30分ほどで全ての荷物を運び終え、ユーキが一息ついた時だった。

        ↓

 新居に到着するや、荷降ろし・荷解きの仕事が待っている。

 そして30分ほどで全ての荷物を運び終え、ユーキが一息ついた時だった。



 こちらも梶野カメムシさまのご指摘ですね。




・「んじゃ、オレは馬車の返却してくっから荷解きは任せた。飯はこれでテキトーに食っとけ」

        ↓

「んじゃ、オレは馬車の返却してくっから荷解きは任せた。飯はそこらの屋台で食っとけ」



 こちらも梶野カメムシさまのご指摘です。

 「知らない町でテキトーに外食するのは、子供には難易度が高いだろう」との事です。返す言葉もありませんでした。




・誰に話すでもなく、ひとり叫ぶユーキ。

 確かに誰かに話したならば、ユーキの言う事は至極真っ当だと言ってくれるだろう。

 だが悲しいかな。サイラスは真っ当な大人ではなく、ユーキの話を聞いてくれる者はこの場にはいない。

        ↓

 ユーキの叫びは至極正論だが、頷く者は誰もいない。

 もっともサイラスが聞いたとして、まともに耳を貸さないだろうが。



 こちらは梶野カメムシさまから頂いた例文を、そのまま採用させて頂きました。




・悪態をきながらも荷解きを始めるユーキ。

 幸い、棚やベッドなどの大きな家具は前の住居者が置いていった物が残っている。当然というべきか、ユーキたちの新居は新築ではない。

 各部屋の魔法灯が問題なく点く事を確認し、軽く掃除を始める。掃除が終わったら、調味料や食器を棚へ直し、調理器具は台所へ、トイレや風呂に紙や洗剤を置いてついでに水回りのチェックもする。ずいぶんと手際のよい8歳児である。


 荷解きの1/3ほどを終えて、次は自分の私物に取り掛かろうとした時、近くから子供がはしゃぐ声が聞こえた。

        ↓

 愚痴をこぼしても仕方がないと、荷解きを始めるユーキ。

 そして作業を始めてしばらくした時だった。



 こちらも梶野カメムシさまのご指摘です。

 文明レベルの高さを表現していましたが、それを伝える機会は後でいくらでもあるだろうと判断。




・「そぉ~ら、パース!」


「ほら、エメロン行くぞ! 落っことすなよ!」

        ↓

       カット



 繰り返しのシーンになるので、不要な部分をカット。




・ それを見たユーキは(家のすぐ横に公園か。犬のフンとか、酔っ払いが出たら嫌だな)などと子供らしからぬ事を考えていた。……本当に8歳だろうか?

        ↓

       カット



 梶野カメムシさまから「公園の認識がファンタジーでない」との指摘を受け、カット。




・ユーキは少しイラっとしながらも、作業に戻る事にした。

        ↓

 ユーキは少し不快になりながらも作業に戻る事にした。



 こちらも「表現のばらつき」を抑える為、擬態語を避けました。




・輝くような金髪と、大きな碧眼へきがんに吸い込まれそうになる。

        ↓

 陽の光に照らされた金髪が輝いて見える。



 ユーキの視点から、アレクの瞳が見えるのは不自然との指摘を受けて変更。




・「確かにユーキの思う通り、もう少し成長すれば物語の主役としても役者不足のないルックスと存在感を出していた」

        ↓

 「確かにユーキの思う通り、成長すれば物語の主役に相応しい若者になるに違いない」



 こちらも梶野カメムシさまのご指摘です。

 頂いた例文を、そのまま採用させて頂きました。




・だって、あの男の子は最高にカッコよくて、でも今ピンチで、それを見ぬ振りをしたら最低にカッコ悪くて、だから――。

        ↓

 大人びていてもユーキも男の子だ。

 物語のワンシーンのような現場を目にして「自分も」と思ってしまったのも無理はない。



 一人称のような表現から、三人称に変更。

 梶野カメムシさまからは「かっこよくユーキの決意を描くところ」と言われましたが、あえてここでは「子供らしさ」を表現。

 そうした理由は……私の好みですかね? 「子供のケンカ」「くだらない」と考えていたユーキが「子供らしく」飛び出す方が、「らしい」と考えてしまいました。




・「大丈夫か? お兄さんが加勢してやっから、踏ん張んな」


 ……つもりだったが、後日になって「あんまりカッコよくなかったな」と後悔するのだった。

        ↓

「安心しな。俺が守ってやっから」


 だが口から出たそのセリフは、どこかで聞いたような気がした言葉だった。



 「ただの締まらない決め台詞」だったのを、劇中劇の台詞から引用したものに変更。(アレクの「やめるんだっ!」も同じ)

 少し変えてあるのは2人の口調に合わせたのと、読者が気付いても気付かなくても問題は無いと判断したからです。




 以上で、『転福為禍のインヴォーカー』の【旧版】【改稿版】と、その解説は終了です。

 何かご意見やご感想がありましたら、遠慮なく書き込んで下されば嬉しく思います。。

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