第2話:1000年って長かったわ。

「お兄さん、あなたね・・・ご神体が祀られてる横の立て札読まなかったの?」


「あ、ごめん読んでないわ・・・あはは」


白瀧大明神しらたきだいみょうじんのご神体は白蛇だよ・・・で、私がその白蛇・・・女性特有の

病気の治癒や安産の信仰を集めてるの」


「白蛇?・・・って、どこからどう見ても女性じゃん?」


「そうだよ・・・今は人間の女性に化身してるんだよ」

「お兄さんのためにね・・・白蛇のままじゃ日本語の発音が難しいの、ちゃんと

会話できないからね」


「でもさ、なんであの玉、俺の足元に転がってきたんだ?」


「あのね、お兄さんが白瀧大明神に来た日、あの日はね、私が1000年の封印から

解けて、ようやくあの格子の中から出てくることができるようになった日だったの」

「1000年って長かったわ・・・」


「いつ出てやろうかなって思ってたところに、なんだか間抜けヅラで

格子を覗いてる男子がいたから・・・こいつについてっちゃおうかなって思って」


「間抜けヅラって俺のことか?・・・失礼な女だな」


「本当は、お兄さんが 人畜無害で人の良さそうな人だなって思ったからね」


「 神社に1000年も閉じ込められてたらさすがに飽きちゃうでしょ・・」

「だから玉になって持って帰ってもらおうと思って・・・」


「はあ・・・確信犯的な・・・」

「分かった・・・悪いけど玉に戻ってくれる?・・・明日、玉を白瀧大明神に

返しに行くから・・・」


「え〜せっかく出てきたのに、私を見捨てるつもり・・・お兄さんってそんなに

薄情で冷たい人なの?」


「だってさ、白蛇の飼育方法なんか知らないし・・・」


「飼育ってなに?・・・その言い方ひどくない?」


「だってさ・・・蛇って生きたネズミとか喰うんだろ?」


「あのね、人間でいるときはネズミなんて食べないの・・・」


「じゃ〜なに食べるんだよ」


「人間の心臓と肝臓・・・」


「まじで?・・・絶対置いとけないだろ、そんなやつ」

「ネズミ食うって言われた方がまだマシだわ・・・」


「って言うか、最初にもどって冷静になって考えてみろよ」

「白蛇が女に化けてるって、そんな馬鹿な話あるか?」


「あら、中国じゃかなりメジャーな話だよ、白蛇伝説って言って・・・」

「もっともあっちの白蛇はめっちゃエロくて、やっぱり人の心臓と肝臓を

食らうって話だけど・・・ 」


「さっきのは冗談でね私、心臓も肝臓も食べないから安心して・・・あ、エロい

ってところだけは同じだけど・・・」


「エロいって・・・まあそこはいいけどな、でもやっぱり爬虫類は無理だわ」

「今夜はここに泊まっていいから・・・明日、白瀧さんへ帰ってくれないかな 」


「俺、明日白瀧大明神まで玉を持って行ってやるから・・・」


「ダメだよ・・・せっかく来たんだから・・・ここから動かないからね・・・

どうしてもって言うなら白蛇に戻ってやるから ・・・」


「いや、待て待て、俺はまじで爬虫類ダメなんだって」

「勘弁してくれよ・・・よりによって蛇って、俺トカゲもダメだし・・・」


「ただの蛇じゃありません・・・白蛇です・・・」

「白がついてるのとついてないのじゃ大きく違うからね」

「蛇ってひとまとめにしてしないでくれる?」


「私はご神体、神の化身なんだよ、それって、めちゃ尊いんだよ」

「ほんとは崇めてもらわないといけなんだからね」


「そうなんだ・・・君って偉い蛇の部類の白蛇なんだ・・・」

「つうかさ・・・白蛇の話って広島あたりで有名だよね」

「・・・ちなみに聞くけど・・・君の名前は?あるんだよね一応名前とかって?」


「私の名前は「寧々ねね」 ・・・言っとくけど私のルーツは市杵島姫神イチキシマヒメって女神様だからね・・・一般的には弁財天とも言うけどね」


「女神様?・・・弁財天ってあの七福神の?」


「そそ、その七福神・・ちなみに、大黒とえびすはスケベじじいだけどね」


「うぇ〜・・・大黒さんとえびすさんのイメージ悪う〜?」

「あ、君の名前のことだった・・・」

「ねね?・・・ねねって言うんだ、君さ昔、豊臣秀吉の奥さんだったことある?」


「とよとみって誰よ、それ?」


「ん〜まあいいわ、蛇なんて言うからもっとオドロオドロしい名前かと思った」

「意外と可愛い名前なんだね・・・君って」


「蛇じゃなくて白蛇だよ・・・いいかげん覚えろ!!ボケ」


「あ〜だな・・・白蛇の寧々ちゃんか・・・」

「なにわともあれ君に名前があってよかったわ」


つづく。

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