第34話
大きなメイスを両手に持ちマウンテンウォールの脚に叩きつけた。
その瞬間に爆発が発生しプロトナイツも大きく衝撃を受けた。
爆発メイスにある5つあるコアの内1つが爆発して消えた。
『ぐおおおおおおおおおお!』
「くうううううううう!」
この新武装は埋め込んだコアの力により攻撃のヒットと共に自動で爆発を引き起こす。
武器に魔力を込めなくても使える優れモノだ。
ただし作るコストが高く、1回の戦闘でメイスがボロボロになる。
マウンテンウォールと戦うためにあるような武器だ。
あまりの衝撃でプロトナイツが後ろに吹き飛びマウンテンウォールの脚が後ろに下がった。
機体の画面を見ると肘関節と肩関節、そして手首の関節が赤くなってきている。
魔法弾を受けて突撃しブルーモードを使い爆発メイスを使っている。
このままではプロトナイツが持たない。
いや、いい。
持たなくてもいい。
プロトナイツ1機で帝国四将を倒せるなら安い!
「腕が壊れても! いい!」
更にマウンテンウォールのすねをメイスで殴り爆発させた。
またメイスのコアが1つ消えた。
後3発!
騎士が歓声を上げる。
『ふんぬううう!』
「おりゃああ!」
後2発!
振り下ろされる拳にメイスを当て爆発させた。
プロトナイツが後ろに吹き飛び、マウンテンウォールがぐらりと体勢を崩した。
「行ける!」
「いっけええええええ!」
前に走りメイスをマウンテンウォールのすねに当てると爆発を引き起こす。
後1発!
左腕が完全にイカレタ!
片手でメイスを振るい最後のコアを爆発させた。
僕は爆風を受けて下がり、そのままハーフエッグに向かい走った。
マウンテンウォールが追ってこない。
……そういう事か。
「ジャンプして帰還します! その後プロトナイツを乗り換えて攻撃します!」
「ウインドイーグルを出すんだ!」
『危険すぎます!』
「魔力はまだ持ちます! マウンテンウォールはあの巨体です! 起動するだけで少なくともプロトナイツと同じ程度の魔力は消費するはずです! その証拠にマウンテンは追って来ていない! マウンテンはウォーリアとバウンドの操縦者が逃げる時間を稼ぐために、無理をしているだけです!」
『し、しかしナリユキ殿はあれほどの速度で戦い体に負担がかかっているはずだ!』
「マウンテンを休ませてはいけない!」
「ウインドイーグルとドッキングしよう! 空から攻めて地上からナイツと白ウォーリアで魔法弾をたくさん撃とう!」
『妖精殿の言葉、分かりました。空を飛ぶナリユキ殿に意識が向かった瞬間に総員で魔法弾による攻撃を仕掛ける!』
ナイツとウォーリアが先行してマウンテンウォールに向かって行く。
プロトナイツを乗り換えウインドイーグルと共に出撃した。
「ドッキングだよ!」
『行きます!』
サンの乗るウインドイーグルがプロトナイツの背中を足の爪で掴む。
ドッキング成功!
ウインドイーグルの翼に魔力が込められ飛行する瞬間に僕は前に飛んだ。
一気に空中に舞い上がり徐々に加速する。
攻撃するイメージが思い浮かぶ。
空からブルーモードを使ってドッキングを切り離しマウンテンに向かって落下。
速度をプラスした威力で殴る。
これで行ける気がする!
『おお! これなら勝てる!』
『何と雄々しく頼もしい』
『まるで空を舞う妖精のようだ!』
マウンテンウォールが僕を見た。
ナイツとウォーリアの魔法弾がマウンテンウォールを攻撃する。
『やりました! やっと役に立てます!』
「うん、サンは前から活躍しているよ」
「ドッキング最高だね! ロボットアニメのロマンだよ」
『あと少しでマウンテンウォールの上空までたどり着きます』
「うん、上から切り離して、落下速度を乗せたブルーモードで一気に叩くから」
『はい!』
その時、背中からミシ! っと嫌な音がした。
ウインドイーグルの左爪が割れてバランスを崩す。
「まっずい! 切り離して!」
『は、はい!』
サンは僕が着地出来るようにプロトナイツの体勢を崩させないように切り離した。
プロトナイツは無事地面に着地出来た。
でもその分ウインドイーグルがバランスを崩して地面に落下した。
「サン!」
『はあ、はあ、わ、私、そんな、また、失敗を、う、うああああああああ!』
サンが号泣する。
『サンは無事です! すぐに走ってください!』
「く!」
「サン、ごめん!」
ピュアが謝る。
「サン、すまない!」
言われるがままに走る。
うまく行くと思った。
サンの自信になると思った。
何が悪かった?
僕が飛び立つときにジャンプをして脆い爪に負荷をかけた?
いや、それ以前にピュアの言葉は100%ではない!
ピュアの考えに乗った僕にも落ち度があった。
どうする? どうする?
「そうか」
簡単な事だ。
「無かったことにすればいい」
「気が合うね、私も同じ意見だよ」
「「勝てばいいんだ!」」
失敗を無かった事にする。
『ナリユキ殿と妖精殿が太陽のように光を放っている! まさか!』
『あれは妖精と人が聖なる心を持ち気持ちを完全に重ね合わせた時にしか発動できない奇跡の力!』
『『妖精共振!』』
まるで電動自転車に乗っている時のように普通に走っただけで速度も、パワーも上がっている。
ブルーモードと違い機体をサポートするようにプロトナイツを包み込む。
マウンテンウォールに向かって走った。
『く! これだから妖精付きは潰さねばならん!』
「マウンテン! 勝負だ!」
妖精共振はピュアの魔力を僕と混ぜ合わせる事で発動する。
ピュアの魔力が切れれば妖精共振は切れる。
その前に終わらせる!
【ファイン視点】
『ナリユキ殿の素晴らしさで私の手が震えている』
絶望的な状況で立った1人、諦めずマウンテンウォールに向かって走っている。
その姿はまるで光をまとう妖精そのものだ。
妖精共振、それは妖精と心を1つにするほどの聖なる心が必要だと言う。
私はナリユキ殿とサンが落下したあの時、何も出来なかった。
妖精殿の言葉が外れた。
その事で騎士達は希望を失いかけていた。
だが違う、そう確信した。
恐らくこれは女神様がナリユキ殿に与えた試練に違いない。
ナリユキ殿は自分自身が倒れるほどに研鑽を重ね続けてきた。
それでもなお女神様はナリユキ殿に試練を与えると言うのか!
ナリユキ殿は聖なる光、そして希望そのものだ。
ナリユキ殿への試練はあまりにも過酷。
だが試されているのは私も同じ。
そしてその試練はナリユキ殿よりもあまりに軽い。
ここで試練を受けずして騎士隊長などと名乗れるはずがない!
『今だけは魔力が切れて倒れもいい! マウンテンウォールに魔法弾を撃ち続けろ!』
『無理をしろと言わない隊長が、無理をしろと言った』
『ああ、ああ、そうだ、今だけでいい! 無理をして魔法弾を撃ち尽くす! これは女神様の試練なのだ! 妖精殿のお言葉が外れた事には意味がある! いや、妖精殿の言葉は結果奇跡を引き起こしてる!』
『は! その通りだ!』
『これが女神様の試練! 女神様は耐えられない試練などお与えにはならない!』
『撃ち尽くす! この身を燃やすようにな!』
皆がマウンテンウォールを狙って魔法弾を放つ。
『私も、撃つ!』
スノーがメイスの先端から巨大な氷の塊を放った。
『はああああああん!』
スノーの乗る白ウォーリアが仰け反り倒れたまま動かなくなった。
魔力酔いだ。
私も魔力酔いを起こし倒れるまで魔法弾を撃つ!
氷の塊がマウンテンウォールの上半身に向かうが腕で防がれた。
その攻撃でマウンテンウォールが仰け反った。
『行ける! 撃ち尽くせ!』
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