第24話

『ムカデ! すぐに撤退しろ!』


 前を向いていたムカデが反転して後ろに走ろうとしたその時、ムカデの後ろに飛び乗った。

 ムカデに飛び乗るとピンと来た。

 前の車両以外胴体を何両も連結して走る構造だ。

 電車と同じ構造だけど車両は長くはない。


 背中には等間隔に丸いコアと魔装ゴーレムが出入りする入り口のような作りの天井がいくつも並んでいる。


『させん!』


 後ろを見るとシャトロクリムゾンが走って杖を乱射して来る。

 後ろを向きながらプロトナイツのお腹を左手でガードしつつムカデのコアを殴った。

 するとコアの光が消えて最後尾のムカデが動かなくなっていった。

 シャトロクリムゾンの方に体を向けたまま魔法弾を受けながらもバックして走り次のコアを破壊する。

 ムカデの速度が遅くなっていく。


『後方2両を切り離せ!』

「うお!」


 連結が切り離されると慌ててムカデの前車両の上に飛び乗った。

 着地するとシャトロの魔法弾を5発受けた。

 魔法弾を避けるためコアの破壊を諦めてムカデの前車両上部に飛ぶ。


「く! シャトロさえいなければムカデを止められたのに!」

「いいよ、壊せるだけ壊そう!」


 着地したムカデ上部のコアを殴って壊した。

 シャトロクリムゾンが迫って来る。

 

「来た! まずいまずい! ムカデの中に入る! えい!」


 天井の入り口を殴って破壊してムカデの中に入った。

 1両に2体魔装ゴーレムを収納して整備でき、中央に魔装ゴーレムが1機移動して別車両に行ける空洞のような作りになっていた。

 その横に人が使うサイズの扉があった。


 ムカデがドスンと揺れた。

 シャトロクリムゾンが上にいる!

 壊した入り口から杖が出て来て魔法弾を撃ちこまれた。


「くう!」


 慌てて隠れる。


「画面を出して」

「分かった」


 画面を出すとピュアが叫んだ。


「中に入ってこい! 勝負だ!」

『わざわざ狭い場所で戦う気はない』

「そっか、じゃあ、前の車両に行ってそこをぶっ壊そう」

『ち! 決闘を申し込む!』


「受けて立つよ!」

「断る! シャトロは騎士らしからぬ行動を取る。騎士道を大事にしないシャトロと正々堂々は無いよ」


 戦う気はない。

 車両を連結する部分の扉を殴って前の車両に移動する。

 まるで列車を前に行くのと同じ感覚だ。

 シャトロは降りてこない。

 扉をどんどん壊して前に進む。


「ムカデの前まで行って顔を破壊するよ!」


 ムカデの中に乗っていた人が逃げていく。

 一番前の車両に行こうとするとそこだけは魔装ゴーレムで通れない。

 人しか入れないようになっている。


 壁を殴って壊し強引に前に出た。

 するとムカデが止まっており操縦席と思われる場所には誰もいなくなっていた。

 殴って操縦席を壊そうとすると窓の外にシャトロクリムゾンがいて杖を構えていた。

 杖が光る。


「まっず!」


 魔法弾が乱射されて僕は後ろに下がった!

 それでも魔法弾の乱射が止まらない。

 一本道があだになった!

 隠れる場所がない! 


 天井を殴ってムカデの背中に出るとそこにシャトロクリムゾンが迫る。

 魔法弾を乱射してきた。

 僕は慌ててムカデの下に飛び降りた。


『やっとムカデから出てきたか』

「あっぶね、魔法弾でムカデを壊す気?」

『それでナリユキを潰せるならそれもいい』


 シャトロ、こいつ頭のねじが飛んでいる。

 奇策を使い奇襲を好む強敵。


 ちらっと横を向くと敵ウォーリアと味方ナイツ&白ウォーリアが乱戦状態で戦い始めていた。


『ムカデ、下がっていろ! プロトナイツは私が叩く』

「く、結局戦うのか」


 ムカデが下がって行った。

 シャトロ、最初に会った時は皆と一緒にフルボッコにしようとした。

 シャトロを囲んで戦ってそれでも何とか撤退させるのが限界だった。


 本当にシャトロとは戦いたくない。

 適当にごまかそう。


「でも、作戦成功だね(適当)」

『なに?』

「帝国の奇襲をうまく阻止できた」

 

『おお! 流石ナリユキ殿だ!』


 王様が声を漏らす。


『ふむ、だが戦いは勝った者がすべてを得る。全力で行かせてもらおうレッドモード!』


 シャトロクリムゾンが赤い光を放ち、獣の唸り声が合唱するように不気味な音を発する。

 急に切り札をためらいも無く使ってくる!

 だから嫌なんだ!


「ブルーモード!」


 プロトナイツが青く光り

 キュイイイイイイン! と高い音を出す。


『さて、始めようか、前のように邪魔は入らんよ』


 シャトロクリムゾンの杖が光る。


「くっそ、やるしかないか!」


 プロトナイツの拳が青い光をまとい強く輝く。

 シャトロクリムゾンの魔法弾が僕に迫った。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る