第15話


 裸、だと!


「は、裸って、だい、じょうぶ、なの?」

「私だけスライムスーツでお風呂に入るのはおかしいですよね?」


「そうだと思う、おか、しい」

「ええ、そうです」

「背中を、流していいですか?」

「お願いします」


 サンは素手で僕の背中を洗う。

 撫で回すように素手で洗うサンの手が気持ちいい。

 腕も頭も洗って貰った。


「前も洗います」


 サンが後ろから抱え込むように僕の胸を洗う。

 僕のシックスセンス(意味不明)が背中で発動した。

 サンのバストが、背中に当たっている。

 当てる事にためらいがないかのように何度も当たる。


 目を閉じて感覚を研ぎ澄ます。

 魔力でサンを、サンのバストを感じる。

 ん?

 サンの手が、僕の股間に伸びる。


「ちょ! そこは、自分で洗うから!」

「そう、ですか」


 思わず断ってしまった。

 僕はまだ修行不足だ。

 常駐戦陣。

 常にエロイベントが起きてもいい心構えが必要だったのに!


 エロイベントには即座に乗らなければ駄目なんだ。 

 次は無いかもしれ無いのに!

 サンが横に座るとバストが見える。


「ナリユキさんは頑張っていますよね?」

「僕はまだまだだよ(エロイベントを逃した)」

「凄いですね」

「サンの(バスト)方が凄いよ」


 横に並び体を洗う。

 サンがバストを洗う。

 そのバストがムニュポヨンと姿を変える。


「向こうの世界では一緒にお風呂に入ったりしないんですか?」


 胸に意識が行ってしまう。


「ごめん、サンが綺麗で、言葉が入ってこなかった」

「え? ……疲れているんですよ」

「僕は、元気(性欲が)だよ」


「ナリユキさんは無理をし過ぎです」

「そんな事、何の話だったかな?」

「向こうの世界では一緒にお風呂に入ったりしないんですか?」


「無いかな、捕まってしまうよ」

「やっぱりそうなんですね……ここではお互いに入ると言えば男女でお風呂に入って大丈夫ですよ」

「そ、そうなんだね」


 なん、だと!

 いいの!

 ウィーの!?


 僕は驚愕した。

 そして後悔した。

 不覚なり!

 チャンスを見逃した!


 いや、待てよ?

 今から洗ってもらう……不自然だよね?

 もう洗ってるのにまた洗ってもらうって。


 サンを見ると頭を洗う。

 バストがプルンプルンと揺れ思考を持って行かれた。

 すっごい!

 

 2人でお風呂に浸かるとサンの胸がたゆたう神秘的な情景を見せる。

 まさに奇跡。


 僕はサンに圧倒されたままお風呂を出た。

 お風呂から上がりサンが部屋まで送ってくれた。


「座りましょう」

「うん」


 ベッドに座るとサンも隣に座った。

 そしてサンが僕の胸に手を当てた。


「ゆっくり休んで、いいんですよ」


 僕の頭を撫でてベッドに寝かせる。

 そしておでこに手を当てる。

 サンが子供をあやすお母さんのように目線を合わせる。

 まるでキスをする前のようだ。


 本当に顔が近づいてきた!

 マジで!


 部屋のドアがノックされた。


「ナリユキ殿、王からの招集です」

「ファ、ファインさん、すぐに行きます」


 サンと一緒に部屋を出るとファインさんが頭を下げた。


「こ、これは、失礼! 邪魔をしました!」

「い、いえ、何も無いので、大丈夫です」

「……」


 部屋の外で横を向くと女性文官が僕を見て「しまった」と言い出しそうな顔をしていた。

 その頭の上には、ほふく前進のポーズでこっちを見るピュアがいた。

 その隠れるポーズ意味あるの?


 会議室に集まると騎士さんが全員集合していた。

 さっきの女性文官が王の耳元でひそひそと話をしている。


「な、なんと、タイミングを逃したか、報告を不要とした私のミスだ」

「何かあったんですか?」

「い、いや、何でもない。何でも、ないのだ、会議を始める」


 王が真剣な顔で言った。


「まずは結論から言おう。全魔装ゴーレムを持って都市の奪還を行う!」


 皆が驚き口を閉じた。


「な! 全魔装ゴーレムで!」

「王都の守りはどうするんだ?」

「無茶では?」

「失敗すれば王の命はありません!」


「静かに! 今から説明する!」


 それでもみんなが静まらない。



 王様は皆が静まるまで待った後話を始める。


「皆の想いは分かる。全ての魔装ゴーレムで都市の奪還に向かえば王都の守りが疎かになる。ましてや帝国四将の1人が王都を襲撃したばかりであると。だが王として皆に希望を見せる必要がある。皆も分かっているだろう? 都市の奪還無くして希望は無いと! 賭けにはなる。だが今のままでは確実に負けるのだ!」


 みんなが王の言葉に耳を傾ける。

 王の言葉には人を惹きつける魅力があった。


「奪われた7つの都市の中で特に王都に近く重要な都市が次の4つだ」


 王が出した画面には都市名・王都からの方角・簡単な説明のみが記載されていた。


 ビートルヒル東(カブトムシの産地)

 クロスファーム西(農業と酪農の拠点)

 ドラゴンテイル南(ドラゴンの狩場がある草原)

 ストーンマウンテン北(魔石が取れる山がある)


 4つの都市の中で特に奪還の効果が大きいのは西のクロスファームと東のビートルヒルらしい。

 今食料が特に足りない。

 そして東はカブトムシの産地でその殻を使ってナイツの部品と装甲を作っていてその部品が足りなくなるらしい。

 今は倒したウォーリアを再加工して何とかやりくりしているが錬金術師の作業が遅れてもいる。


 でも西と東の奪還は簡単ではないようだ。

 西は帝国に近い為激戦になる可能性がある。

 東にはウインドベル王国の動きを止めるように帝国四将の1人が都市を守り王都の動きをけん制している。

 北と南も選択肢に入るようだ。


 残る3つの都市は王都から遠い。

 オールラウンド東北(目立たないが農業・酪農・漁業・小さな魔石の山・カブトムシが少し取れる)

 マリンフィッシュ東南(漁業で有名)

 ボーダーマウンテン最西(魔石が取れるが帝国に隣接)


 奪還したとしても占領された都市から交易路を潰される危険があるようだ。


 話を聞くと帝国はこの国が何も出来ないように追い込んでいるように聞こえた。

 それが帝国の狙いならリスクを冒す価値はある。


 普通に考えれば今の状況で王都の防御を疎かには出来ない。 

 でもそこで奇襲をするように都市を奪還できれば帝国の打撃は大きいだろう。

 そもそも帝国は奪った都市に魔装ゴーレムが全機で攻撃を仕掛けてくるとは思っていないだろう。


 普通はやらない作戦だからこそ効果がある。

 王様は自分の命を守るより都市の奪還を優先している。

 敵からすれば捨て身戦法をしてくる敵は脅威だ。


「……と、言うわけだ。そこで妖精殿に聞きたい。どこを奪還すべきか? もし奪還自体やめた方が良いと思えば言って貰っても構わない。他の案があれば言って欲しい。良いと思う道を聞きたいのだ」


 妖精の言葉はよく当たる。

 でも100%ではない。

 王様も不安なんだろうな。


「西の奪還が良いと思う」

「もし理由があれば聞きたい」

「勘だよ」


 西のクロスファーム。

 ここを奪還できれば食料が入って来る。

 その代わり西の帝国に地理的に近い。


「ピュア様が言うのなら、行けるかもしれない」

「おお、妖精殿のお言葉はよく当たる!」

「希望が見えてきた!」


「決まりか。今すぐに秘密裏に完成させた魔装ゴーレム運搬機、ハーフエッグに乗り込むのだ! これは隠密作戦である!」


 王様が優秀だ。

 でも、実践は怖いな。


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