第1話 品川駅、三宅竿は動揺していた

 東京駅から品川駅までは、案外さほど遠くない。十分程度だ。値段も千円。しかしそこからが本番なのだ、とひかりがつぶやいているようだ。


 三宅竿は、「次は品川」という自動音声を聞いて、ほっと胸を撫で下ろした。ふと、後ろに何かいるような気配がした——恐怖が蘇ってきた——。十一時十五分。


              *


 その二十分後、東京駅で……


「んな! 一体どうしたってんだ!」


「ったく! 下田さんのせいですよ!!」


「あーあ、報酬が……」


「まあいいじゃないですか。ほら、後続のひかりに乗りますよ!」


 二人も吸い込まれていった——。


               *


「え、竿さんが死んだ!?」


塩田しおだセアは叫んだ。十九歳の青年だ。彼は探偵たちから、電話で、三宅竿の死を伝えられた。


「え〜! 嘘だぁ、悲しいです……」


 塩田も三宅と同じ新幹線に乗っていた。


「そういやさっき、パン! という音がしましたが、あれ銃声だったんですね……」


 電話の向こうから、『どうして違和感感じないんだよ!』と怒号が送られてくる。セアは探偵軍のスパイだった。今回限りのスパイである。三宅竿の護衛を募集した時、一番熱烈なメッセージを送ってきたのが同級生の塩田であった。


 電話が切られると、塩田の顔に笑顔が浮かんだ。


「あーあ、あの探偵ども、まだ気づいてないのか……」

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