ずっとそばで、あいしてる
椿
第1話
父は、とても厳しい人だった。
父が家に居る日、私達姉妹はほとんど声を出さずに過ごしていた。
母は、私達を置いてパートへと出かけて行き、それ切り帰って来ない。
ある日、父は姉を厳しく叱っていた。
理由は分からない、ただ、なにか大きな声を上げながら、姉を何度も何度も殴っていた。
(た、たすけなきゃ…)
しかし、恐怖に震える私の体はそう思えば思うほどに震え、一度入り込んだ布団から出ることが出来なかった。
「お姉ちゃん、大丈夫?」
やっと父から解放された姉は、顔を腫らしながら「大丈夫、今日はツイてないや」と微笑んでいた。
姉はいつもそうだった、
どんなに酷いことを言われても、強くぶたれても私の前では"大丈夫"と微笑んでいた。
「どうしてお父さんはあんなに怖いんだろう…あみちゃん家のお父さんは、あみちゃんをぶったり怒鳴ったりしないって…」
私の言葉に姉は頬に薬を塗りながら笑う。
「なんでだろうね、お姉ちゃんにも分からないけど…分からなくて良いんだよ」
「どうして?痛いのはお姉ちゃんなのに!」
そう言ってしまってから、私は自分が大きな声を出してしまったことに気が付き、とっさに口を押さえた。
幸い、父は外出していた為、私はほっと息をつく。
そんな私の様子を見た姉は、更に呑気な声で笑った。
「だからだよ。お姉ちゃん"だけ"で済んでるんだからそれで良いの。それに、あんな怖い人の気持ちが分かってしまったら、それは穂乃香も怖い人になっちゃった証拠だよ?」
「えっ!嫌だ!」
私がそう言って顔を顰めると、姉は「凄い顔」と言って大笑いした。
私はそんな姉の笑顔が大好きだった。
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