第20話

「それで、一体なんの話をしていたのです?」



ジルはいつもと変わらない穏やかな笑顔を浮かべ、敢えてオリヴィエの向かい合って斜め左に腰をおろした。



「………………」



いつもなら自分の隣に座ろうとするジルを知っているオリヴィエからすれば、明らかに彼が自分を避けていることが分かり、余計に不愉快さが募る。



「それが…」



ジルの柔らかな雰囲気と人柄にすっかり魅せられてしまった4人は、自分達の話に積極的に耳を傾けてくるジルの様子が嬉しくなり、さっきまでオリヴィエに話していた話を再びジルに話して聞かせた。



そして、オリヴィエの友人4人は、話の中でジルが驚いたように目を見開いたり、医学知識を交えながら考察を分かりやすく話して聞かせる時の一つ一つの動作を細かく観察し、すっかり惹き付けられていたせいで、



途中、オリヴィエが席を立ったことにジル以外、誰も気が付かなかった。



ジルは黙って席を立ち、自分に一目も視線をくれないオリヴィエを、悲哀に満ちた横目でチラリと見やったが、何も言えず見送った。

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