第6話

「兄さんは殺されたんです」



「……なんだって…?」



セリーヌは、泣き腫らした真っ赤な目でオリヴィエを見つめながら、ぽってりとした厚めの唇を噛んでいた。



悲しみにくれるセリーヌの涙の跡が残る頬を柔らかな春の風が優しく撫でるが、今のセリーヌにはその春風さえも鬱陶しいだろう。



「オリヴィエさんは、兄に会いに来てくれましたよね」



「ああ…一度だけだけど…結局顔も見れなかったが」



「いいえ…ありがとうございます…」



オリヴィエに対して礼を言いながら嗚咽を漏らすセリーヌに、オリヴィエは彼女の肩をそっと抱く。



「セリーヌ、君は何を知ってるんだ?俺に話してくれないか」



オリヴィエは自分より20cmは背の低いセリーヌの顔を覗き込む様にして、冷静さを装って、いつもより低いトーンの声を出した。



するとセリーヌは、涙を堪えられなくなり、自分にそっと寄り添うオリヴィエの胸に顔を押し当て、頷きながら声を上げて泣き出してしまった。

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