第11話
二人で朝食をとった後、野獣は森へと出掛けて行った。
【訪ねてくる者などいないはずだが、誰も屋敷の中に入れないように】
野獣はそれだけ言い残し、屋敷を出て行った。
野獣が出掛けた後、ジルコンは一人暖炉の傍で野獣の古くなったコートを繕っていた。
野獣のコートのサイズはジルコンが今までに見たことも無いほど大きく、形だけしか捉えられない灰色の目と小さな手を使って大体の大きさと形状を把握するのに時間がかかってしまった。
そうしてようやくジルコンが刺繍針を手にした時、突然ガンガンとドアノッカーで扉を叩く音が響いた。
誰も来るはずがないだろうと言われていた為、突然の来訪者にジルコンは驚き、刺繍針を落としてしまう。
誰とも分からない来訪者の存在に、ジルコンの体はガタガタと震え始める。
「だ、旦那様かもしれない…」
震える足にやっとのことで力を入れ、立ち上がったジルコンは足音を殺してゆっくりと玄関へと向かうが、
ジルコンが作業していた2階の部屋から玄関までには長い廊下と大きな階段があり、ジルコンか調度大きな階段へと差し掛かった時、ノック音がパッとやんだ。
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