第7話
【わ、私は…その…そんなにに、におう、か?】
しどろもどろになりながらも野獣は娘から少し身を引きながら訪ねた。
「におう?…ええ、伯爵様の匂いはなんというか…安心出来て、とても落ち着く…そうです!太陽の匂いがします」
【太陽……】
娘の言葉に野獣は皮肉るようにふっと自分を笑った。
(太陽の光などこの森に閉じ込められてから一度もこの身に受けたこともないのにな…)
「……伯爵様?」
ボソリと呟いて、それきり何も言わなくなった野獣に娘は不安そうな声を出す。
「も、申し訳ありません…。どんなご事情があるのかを配慮もせず失礼なことを…!ただ、私はこのお屋敷に使用人が居ないのでしたら、私をここで働かせて頂きたいとお願いしたかっただけなのです」
【働く?お前がここで?】
「はい…目が不自由でも、手先は器用です。伯爵様のお食事やお洋服を仕立てることなら出来るかと思います」
【…そうか…しかし食事は火を使う。お前には裁縫を頼みたい。私は手先が不器用なんだ】
「!ということは、私をここで使ってくださるのですか!」
じっと俯き、自信無さげに服の裾を弄っていた娘はパッと顔をあげ、微笑んだ。
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