第19話

(…お化けってお供え物とか本当に食べれるんだ…)


柚は台所に置いてある空の缶ビールを洗いながらそんなことを考えた。


そうして洗い終わる頃になってハッと気が付いた。


「え、待って。さっきなんて言った?」


濡れた手を拭い、ひよふよと気分も体も浮かれている様に空中を浮遊する春を見上げた。


「?さっきっていつですか?」


「自己紹介の時、なんて言った?」


「ああ!僕の名前ですね?ちゃんとした神様になれれば、いずれ名前は変わるんですけど、今はハルです、ふふふっ♪」


「ちがう、ちがう、その前!」


「え……あの…び、貧乏神…?」


「貧乏神!?」


大きな声で復唱する柚に、春は体をビクつかせ、あっという間に体を小さくする。



「あ、あの…えっと…うぅ…」


貧乏神とは、神の中でも最下層を表す。


その中でも春は同期からかなり遅れをとっており、同期が既に小の神へと昇神していく一方で、彼だけがずっと信仰を集めることが出来ず、最下層の位にとどまっているのだ。


貧乏神とは、貧しさを振りまく疫病神の呼称ではなく、所謂、"神見習い"なのである。

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