論説「人力飛行機活動について」(総括的に、令和初期において)
国枝 安
1. 背景
1.1 はじめに
人力飛行機について、日本では日大等における研究の実績が有名であるが、それ以上にテレビ番組である「鳥人間コンテスト」での露出が認知されている。すでに半世紀弱の歴史を持つ同番組は広く一般に知られることから、Twitter(現X)を見ていると鳥人間コンテストの経験者は他の航空機の製作等に関心はないのか、という趣旨のコメントを見かけることはしばしばある。飛行力学に興味を持った学生等が、その関心をそのままに伸ばし、航空業界で社会に貢献できるのであればそれに越したことはないとも思う。
一方で、筆者は人力飛行機活動が直接的に航空機産業等への寄与を与えるものとは考えていない。それは、そもそもレクリエーションは仕事等から切り離されたもので、その興味を追求し普段と異なる場に自分を置くことは重要な要素と考えているからである。また人力飛行機の楽しみ方はその他のスカイスポーツや航空機の楽しみ方と異なる部分が多いからである。
このように遊びを仕事と関連づけることにこのように抵抗を持っている一方で、その独特の活動がもたらす効果は社会にとって有益であるとも考えている。社会に出る前の学生が情熱を燃やす場として、あるいは社会人となっても創造性のあるレクリエーションの場として意味があると考えている。
本紙は、記録が多く残る時期、かつて人力飛行について世界的ブームがあった1980年代後半から40年ほどの期間を経た現在の人力飛行機活動の状況を明らかにし、レクリエーションとしての発展の可能性及びその他の社会的貢献の可能性についての論考を試みるものである。
人力飛行機活動は、当事者から見れば非常に魅力的なものであるが、テレビ番組として長く放映された期間を経ても今後爆発的に増えることはないと思われる。むしろ、実際の活動人数の増減もはっきりしない。さらに世界の様子を見れば、一部の国で開発が行われているが決して盛り上がりがあるわけではない。
日本の状況の今後について、時代の情勢の影響を受けるのはテレビ番組であるからなのか、かつては多かった社会人が主な構成員であるチームは激減し、夏の景色とも相まって、現在は技術系学生の甲子園的とらえ方をされるほど大学生によるチームが参加者の大半を占める。この図式は当面変わらないだろう。しかしその他の可能性について知っておきたいと思う。
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