第21話

「…そうですか」



(好きだったからこそ、みたいな意味なのかな…?)



かすみはいまいち白川の言葉の意味を理解していなかったが、白川の悲しそうな微笑みを見て、思わずその頬にそっと触れてしまった。



「あ…、きみ…?」



急に頬に触れられ、キャラメル色の瞳を見開く白川。



そんな白川の反応に、かすみも我に返り、慌てて手を離そうとしたが、すぐに白川の自分より大きな手に掴まれてしまう。



「こんな風にされたら、僕は後悔出来なくなっちゃうじゃないか」



「後悔?」



「そう…君をここに連れて来て閉じ込めてしまおうとしている、僕の醜さへの後悔」




「閉じ込めるって…どうして…私はこの夢から醒めないってことですか?」



かすみの質問に、白川はかすみから目を逸らし、握りしめているかすみの手のひらで自分の頬から唇を撫でる。



「いや?」



そうして形の良い唇にかすみの指を滑らせながら、キャラメル色の甘い瞳で試すような視線をかすみに送る。



「!?」



(うっ…!か、顔が良い…!!)




キラキラときらめく顔でまるで甘えるような、縋るような白川の表情にかすみは心臓をガッシリと掴まれた気分だった。



そして内心で胸を押さえながら、(まあ確かにこんな正統派イケメンと居られるなら悪くないか)と思った瞬間、脳内にパッと黒百合の顔が浮かんだ。



「あ…だめだ…」



(会社に行かないと黒百合さんに会えない…ジャケットのお礼言ってないし…今は絶対に無理だけどいつか告白だってしたいし…)




かすみがポツリと独り言のように呟き、スっと白川から距離をとると、次の瞬間白川のキャラメルのような瞳が陰り、冷たい声が響いた。




『やっぱりそうか』

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