第21話
「…そうですか」
(好きだったからこそ、みたいな意味なのかな…?)
かすみはいまいち白川の言葉の意味を理解していなかったが、白川の悲しそうな微笑みを見て、思わずその頬にそっと触れてしまった。
「あ…、きみ…?」
急に頬に触れられ、キャラメル色の瞳を見開く白川。
そんな白川の反応に、かすみも我に返り、慌てて手を離そうとしたが、すぐに白川の自分より大きな手に掴まれてしまう。
「こんな風にされたら、僕は後悔出来なくなっちゃうじゃないか」
「後悔?」
「そう…君をここに連れて来て閉じ込めてしまおうとしている、僕の醜さへの後悔」
「閉じ込めるって…どうして…私はこの夢から醒めないってことですか?」
かすみの質問に、白川はかすみから目を逸らし、握りしめているかすみの手のひらで自分の頬から唇を撫でる。
「いや?」
そうして形の良い唇にかすみの指を滑らせながら、キャラメル色の甘い瞳で試すような視線をかすみに送る。
「!?」
(うっ…!か、顔が良い…!!)
キラキラときらめく顔でまるで甘えるような、縋るような白川の表情にかすみは心臓をガッシリと掴まれた気分だった。
そして内心で胸を押さえながら、(まあ確かにこんな正統派イケメンと居られるなら悪くないか)と思った瞬間、脳内にパッと黒百合の顔が浮かんだ。
「あ…だめだ…」
(会社に行かないと黒百合さんに会えない…ジャケットのお礼言ってないし…今は絶対に無理だけどいつか告白だってしたいし…)
かすみがポツリと独り言のように呟き、スっと白川から距離をとると、次の瞬間白川のキャラメルのような瞳が陰り、冷たい声が響いた。
『やっぱりそうか』
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます