君の悪夢も君の恋も全部僕が食べてあげる。
椿
一章
第1話
かすみはいつも同じ夢を見る。
夢の中でかすみは、いつも高校の制服の様な格好でひたすらに走っているのだ。
ブラウンのシックなデザインの制服は、どうやら秋服のようで、かすみが駆け抜ける景色は紅葉した葉が物悲しくも温かな景色を作り出ている。
その日もかすみは、落ち葉を踏みしめ、必死に履きなれないローファーで走り続けていた。
煉瓦造りの街並みの中、自分以外にもハチマキやバトンを持って走る男子生徒もいれば、
着ぐるみのような格好をして、一つのグールプとして走っている生徒達もいる。
まるで街全体を使ったマラソン大会の様な光景だ。
しかし、そんな中でもかすみだけはいつも後ろから来る"何か"から逃げるように必死に走っていた。
(今日は何処から出てくる?)
ハラハラと焦りから目だけを動かして周囲の様子を見渡すが、自分の周りを走っているのは、お祭りモードの至って普通の生徒達だ。
(ふぅ…今日こそはもっと先に進めそうだ…)と、かすみが内心息をついた時だった、
突然辺りから「きゃ〜!」「白川様〜!!」「白川くんこっち見て〜!」と黄色い声が湧き上がった。
(きたっ…!)
「ひぃ!」
かすみは後ろに現れた黄色い声援を一身に集める人物にある種恐怖に近い感情を覚え、
上半身を前屈みにして、頼りない足を全力で動かす。
全ては"白川"から逃れる為。
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