最終章
第19話
すみれがしばらく暗闇の中を足任せに歩いていると、後方からバタンッと扉の閉まる音が聞こえた。
そして次に鍵が締まる音が響いたタイミングでふんわりと明かりが灯った。
明かりに照らされて初めて、すみれは自分が西洋風の造りの長い廊下を歩いていることを知った。
真っ直ぐに伸びた廊下をそのまま真っ直ぐ進んでいくと、突き当たりに黒いシックな扉が現れた。
(ここも鍵が必要なのかな…)
すみれはぼんやりとそんなことを考えながらも、試しにドアノブを回してみると、鍵はかかっておらず、すんなりと扉は開かれた。
そしてその扉の中は廊下と同じ様な、雰囲気の広いロビーの様になっていて、正面には2階へと続く大きな階段が伸びている。
(なんか豪華なホテル…みたいだな、行ったことないけど…)
何処に向かって良いのか分からず、すみれは周囲を見渡すが、すみれ以外誰かが居るような気配もない。
(どうしよう…)
すみれはしばらく考えた後に、意を決して正面の階段を使わず、脇に伸びる別の廊下を進む。
しかし、歩き始めてすぐにすみれは違和感を覚えた。
ゆっくりではあるが、すみれは確実に前に進んでいるはずなのに、景色が全く変わらないのだ。
「な、なんで…」
得体の知れない恐怖に、すみれは走り出した。
しかしやはり、通り過ぎる景色はいつまでも同じであり、前方にはいつまでも突き当たりが見えてこないのだ。
そして果てしなく続く廊下をひたすらに進んでいたすみれだったが、ふと気が付くと再びあの大きな階段のある広いロビーへと戻って来てしまっていた。
「……階段?」
階段を使うのが正解なのかと、すみれはフラつく足でトボトボトと長い大きな階段を登り始めた。
そしてやっと登り切ると、沢山の絵画が飾られたフロアがあり、それを眺めながら進むと、複数の黒い扉が並んでいた。
「…………」
複数の扉の並びを見たすみれは、反射的に額に手を当て、深い息を吐いた。
そして意を決して手前から扉を開けていくと、その先には更にそれぞれ廊下が続いており、その先にはやけに大きく立派な黒い扉が待ち構えている。
なかなか出口に辿り着けない事態に、すみれがその場でへたり混んだその時、
一番奥の扉から人の声が聞こえてきた。
「!?」
まさか自分以外に誰かが居ると思っていなかったすみれは、声の方向に顔を向けた。
すると、奥の扉がバンッと乱暴に開き、その中からドサッと乱暴に人の体が投げ捨てられた。
「!?」
目を見張るすみれの視界に、次に映ったのは、ボヨンボヨンと一頭身の体を揺らしながら短い4本の足で歩く白い猫のぬいぐるみと、そのすぐ後ろからスラリとモデルの様に背の高い褐色の肌の青年だった。
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