第2話 弟子入り志願

▶時期:延長八年(930)


満月丸の父の葬儀を行うために、父に仕えていた陰陽師の賀茂忠行が来た。葬儀の後、満月丸は忠行に弟子入りを志願する。気が進まない忠行の様子を見た満月丸は、弟子にしてくれたら金烏玉兎集を差し出すことを約束して、弟子として受け入れられた。


家に帰る途中で満月丸は百鬼夜行を目撃して、忠行と一緒に身を隠してその場をやり過ごした。ただ者ではないと思った忠行は、満月丸に余す所なく陰陽の道を教えることにした。


満月丸の父の死は、白雪の生活に大きな影響を与えた。冥界では、妖狐が人の姿に化けて人間を誘惑する事件が絶えないとの報告があった。その中には、満月丸の父が妖狐を妻としていたという報せもあった。この問題を解決するために、白雪は世界中から妖狐を集めて自分に仕えさせる計画を立てる。だが、彼女の父である泰山府君はまだ幼い彼女の提案をすぐに受け入れず、真神に昇格したら願いを聞き入れることを約束する。衆生を守るという神仙の重大な役目を果たすために、白雪は満月丸への気持ちを心の奥底に閉じ込めて修行に邁進する。


賀茂家に迎え入れられた満月丸は、忠行の息子保憲に仕えながら陰陽道を学ぶことになった。心優しい保憲は身寄りのない満月丸を憐れみ、本当の弟のように接した。あまり勉強のできない満月丸は、人一倍努力しなければならなかった。こうして、彼が一人前の陰陽師になるまでの長い道のりが始まった。


数ヶ月後、天変や怪異が頻りに起こり、世の中が落ち着かなくなった。宮中に鬼がいたという噂も流れた。陰陽寮がこれらの異変について吉凶を占ったところ、兵革あるいは火災の兆しがあった。


程なくして、大きな雷が清涼殿の柱の上に落ちる事件が起こった。柱から火が燃え広がり、大勢の貴族が命を落とした。陰陽寮の官人たちは急いで清涼殿へ向かい、雷火を鎮めるための祈祷を行った。忠行は藤原忠平の傍らで鳴弦の法を行い、雷から身を守った。雷は鎮まったが、翌日から醍醐天皇は体調を崩してしまう。世間の人々は、天皇に恨みをもつ菅原道真の怨霊による災いだと噂した。加持祈祷が行われたが天皇の病は治らず、寛明親王(後の朱雀天皇)へ譲位が行われた数日後に崩御された。


数年後、満月丸が元服を迎えた。忠行は満月丸を”晴明”と名付けた。どちらの字にも日月が含まれているため、陰陽道を志す満月丸にふさわしい名であった。彼は心の中に白雪を思い浮かべ、立派な陰陽師になると誓った。

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