四智円明に月輝る

たこやきこうた

エピソードZERO:四智円明に月輝る 転生した禅師と式神の誕生

四智円明しちえんみょう月輝つきひかる 転生てんせいした禅師ぜんじ式神しきがみ誕生たんじょう 


 ――早緑色さみどりいろの山のふもとのとある村の静まり返った夜、月の光が優しく差し込む「禅のぜんのいずみカウンセリングルーム」。

                         

 白蓮びゃくれんが、鼻歌を歌いながら、楽しそうに、お菓子作りをしている。

白蓮:「う・ふんふ~ん♪う・ふふ~ん♪」


 お菓子作りは、白蓮のリラックス法であり、相談者や式神たちへの「お・も・て・な・し」の一環としている。


 実はこの白蓮、現代のオネエ様系カウンセラーに転生した白隠禅師はくいんぜんじなのだ。

白蓮の年齢性別不詳で、体格はマッチョ系で背が高いので、一見すると、「チビT」が似合いそうな「オラオラ系」に見える。

 たくましい見た目とは裏腹に、女子力高めの乙女キャラクターなのだ。


 白蓮の日常をちょいとのぞいてみようじゃないか。どうやら仕事中のようだ。


白蓮:「今日は、心を落ち着けるためのマインドフルネスの基本を教えちゃうわよ~。まずはねぇ、深い呼吸をしてみましょ♪」


相談者初音はつね:「あっ、はい」


白蓮:「ゆっくり目を閉じて~、自分の呼吸に意識を向けてちょうだいね~。吸う息、吐く息に集中することで、心を落ち着けることができるのよ~。ちがうちがう~、チカラ入りすぎ~、体を楽にして~、肩の力を抜くのよ~。」


相談者初音:「あっ、はい」


白蓮:「あらやだっ!のみ込みが遅いわね~、解釈不一致だわ~、ちょっと休憩しましょ♪」


相談者初音:「あっ、はい」


白蓮:「GABAぎゃば入りのチョコレートを使って、ガトーショコラを焼いておいたのよ~、召しあがってちょうだい!菩提樹リンデンのお茶もあるのよ~、これでリラックスできるはずよ~、どうぞ召しあがって~!」


相談者初音:「先生、お気遣いありがとうございます。いただきます。」


白蓮:「リラックスできたようね♪ 続きをしましょ~」


相談者初音:「とても美味しかったです。ごちそうさまでした。」


白蓮:「それじゃあ、いくわよ~、心の中に広がる静けさを感じて~、

呼吸を通じて、体と心が一つになる感覚を味わいましょ~。全集中よ~。」


――相談者初音、マインドフルネスに全集中。リラックスできている様子。今にも眠ってしまいそう。



 白蓮が過去に交わした契約について回想してつぶやいている。


白蓮:『雪華せっかとの契約は、「冷静さと洞察力どうさつりょくさずけることで人々の役に立つ。」だったわね~、

炎華ほのかとの契約は、「美学に従った審判しんぱんを行い、善人には褒美ほうび、悪人には天誅てんちゅうを与える。」だったわね~、

華丸はなまるとの契約は、「癒しとこの先のみちに希望を与えることで人々の役に立つ。」だったわね~。』


――今まさに、白蓮お手製の「編みぐるみ」に込めた祈りによって、三体の式神(雪華、火華、華丸せっか、ほのか、はなまるが白蓮によって召喚されようとしていた。


白蓮: 「さてと、やりますか!やられますか!やっちゃいますか!」(両手の人差し指と親指で2つのきゅんハートを作って見せながら)「編みぐるみに祈りを込めて、あ・げ・る♪雪華、炎華、華丸、あたしの祈りにこたえなさ~い!」


――三体の式神が、月の灯にみちびかれるように、白蓮の目の前に降臨こうりんした。


 雪華 は、冷静で知的な口調と強い意志で、頼もしい存在。

青いの白い蛇という外見がとても美しく、雪華には、ミステリアスな魅力がある。


 火華 は、情熱的な九尾きゅうび白狐びゃっこ悪戯好いたずらずきで気まぐれな性格も、彼女の魅力である。


 華丸 は、人懐ひとなつっこくて癒し系の大きな白い犬である。

モフモフの毛とプニプニの肉球は周囲を癒し、彼のフレンドリーで優しい言葉は、周囲に希望を与える。



雪華: (不敵な笑みを浮かべながら静かに話す)「多少の苦痛はつきものです!わたくし慧眼けいがんを信じて!」

炎華: (無邪気に動き回りながら)「悪い子は、うちの天誅てんちゅうを、良い子には、素敵なご褒美ほうびあげちゃうよ~!」

華丸: (お座りして右前足みぎてを上げて肉球を見せる)「おいらが、みちの先には希望があると教えてあげる!このぷにぷにの肉球の感触にかけて!」



――相談者のカウンセリングや施術せじゅつの合間に、悩みや不満をかかえた式神たちも、目的の八割がたは、おやつを目当てに、白蓮を頼ってくる。

 そして、今日もまた・・・。


雪華:「みんな、わたくしの有能さに嫉妬しているんです!きっとそうに違いない!それなのに、なんでわたくし)が上から目線とか言われなきゃいけないのです?周りが浅はか過ぎるだけなのでは?」


炎華:「うち、みんなからワガママとか激しすぎって言われる!おかしくな~い?おかしくなくなくな~い?」


華丸:「おいら、声をかけているだけで、本当にみんなのお役に立ててるのかな・・・不安でしかない・・・。」



 白蓮は、式神たちの空腹はらを満たし、リラックス効果のある飲み物を与えて、ストレス解消につとめようと考えた。


白蓮:「あらあら、みんな、どうしちゃったのよぉ?今日はねぇ、いただもののフィナンシェがあるのよ!」


雪華・炎華・華丸「フィナンシェ!!!」


白蓮:「あらやだ!ハモったわね!オレンジピールのお茶をれるから、おやつにしましょ♪」


――白蓮は、紅茶風味こうちゃあじのフィナンシェとオレンジピールティ―を、式神たちの座っている「禅の泉カウンセリングルーム」のロビーの椅子いすの前のテーブルの上に優しく置いた。


白蓮:「さあ、め・し・あ・が・れ♪」


――式神たちはお腹を満たすと気持ちも豊かになったようだった。



白蓮:「みんな元気になったわね♪あんたたち、全国各地あちらこちらに散らばって行っても、式神なんだから、一瞬でこの場所に戻れるのよ!明日からも一緒よ!みんなで楽しく暮らして・き・ま・しょ♪」


――確かに!式神たちのお腹も心も、満たされた様子だね。

 また明日も、今を楽しんで、どこかの誰かを助けてくれると信じようじゃないか。


 読者の皆様、また会う日まで、アディオース!


(ナレーションは天の声でした エピソードZERO完)


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