風の吹くままに
千才生人
第1話 春の病
入学式を終えてみんなが高校生活に慣れてきた頃、僕、
校舎徘徊はとても面白い。普段見えない部分が見えたりするのだ。例えば、クラスカーストの順位によって弁当を食べる場所が違ったり、偶然面白い話が聞けたりする。
別に僕はぼっちではない。普段は学校を徘徊しているが趣味を話し合える友達がいる。多くはないが、ある程度は学校生活を充実している。
成績もそんなに悪くない。勉強は嫌いだが、将来のためにもきちんとしないと。
周りから不思議な奴と呼ばれている僕は今、放課後に今日も今日とて校舎徘徊をしている。今日はどんなことが見れるのか、聞けるのか楽しみで仕方がない。
「・・・」
面白いこと、早速発見。
なにやら怪しい男子生徒を僕の目がロックオンした。図書室の前で妙な挙動をしている男子生徒は誰かを待っている見たいな――否、誰かがいないかを確認しているようだ。
怪しい。非常に怪しい。
話しかけてみようとしたが、ここは様子見をすることにした。
するとその男子生徒は図書室へ入った。彼の目を盗んで図書室へ潜入し、ばったり会わないように気をつける。
男子生徒は受付にいる図書委員に近づいた。
その図書委員は男子に有名な文学少女で僕と同じクラスだ。用があって話しかけた時は、返事が氷のように冷たかった。
さぁ、どう動く。
男子生徒が口を開いた。
「ねぇ、今暇してるでしょ」
なんだこのチャラそうな言動は。
かなり仲が良くないと話せない口調だ。この二人はどんな関係なのだろうか。
「いいえ、仕事中です」
「誰もいないから暇でしょ?」
「私の手元に何があるか、見えますか?」
「本」
「暇をしていません。読書をしているんです」
ヒエエエェェッ! 返事がひえひえだ。冬が過ぎ去って暖かい春が訪れたのに、まるで図書室だけが冬じゃないか。駄目だ、誰かコタツを用意してくれえええ!
「ねぇいいから遊ぼうよ」
「・・・」
鬱陶しく思ったのか返事をしなくなった。
というか、先からこの男はナンパをしているみたいだ。バリアを破壊できるかが見どころだな。
「俺さ、実は君のこと結構好きなんだよね」
「はぁ・・・」
「だからさ、俺と付き合ってよ」
「あなた、身長いくつですか?」
「163cmだよ」
急に話の方向が変わった。身長の話をして、いったい何をしようというのだ。なかなか面白くなってきたぞ。
彼女はナンパ男を壁ドンし、奴を見下ろす。
ナンパ男は混乱した顔をしている。今起きていることに頭がついていけていないようだ。
「私は自分より背の高い人が好きです。ちなみに私は167cmです」
どうやらナンパ男は振られてしまったみたいだ。その後彼はとぼとぼと図書室を後にし、その翌日にまた図書室を訪れた。
偶然見かけてよかった。
しかし、いつも背丈が違うように見えた。制服の上には白衣を着ているし、ズボンが長く見える。
図書室へ入り、再度告白をする。
「これでどうだ。今なら俺と付き合うだろ?」
すると文学少女は、彼が着ていた白衣を勢いよく脱がした。
バサ・・・!
そこには、竹馬に乗ったナンパ男の姿があった。
あんな風に振られて竹馬に乗って出直す人はこの世にはこいつ一人しかいないだろう。
ある意味―――天才だ。
「あなた、バカなんですか」
そうして彼はとことこと音を立てながら図書室を去り、二度と戻ることはなかった。
仕方がない。彼は多分、春だから恋をしたくなるという変な病にかかってしまったのだろう。
強く生きろ、ナンパ男っ!
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