引きこもり少女と始める学園ラブコメ
だーな
第1話 野生の着ぐるみパジャマっ子に出会いました。
高校2年生初めの期末テストが終わり、1周間が経った7月9日、眠り目を擦りながら今日も今日とて、見慣れた通学路を歩いてた。
うーん、見慣れた通学路ね.....いや、そうでもないな。そう、今日の通学路には何か違和感がった。
「えっと、大丈夫ですか?」
「......」
反応はない。何かがあったかというと、俺の眼の前には着ぐるみパジャマを着た女の子が倒れていた。まあ、倒れているというか、寝落ちてる?
まるで、ポケモンスリープのようだった。野生の着ぐるみパジャマっ子?
「こんなとこで寝てると、風邪ひきますよ!」
女の子の体を軽く揺らす。
「......」
相変わらず、反応はない。
流石に、このまま立ち去るのも問題あるだろうし、どうしたものか。そんな中、彼女の足元に目をやると、商品が入ったレジ袋が落ちていた。
「エナドリ?」
近くのコンビニで買ってきたのだろうか。まだそれなりに冷えていた。
俺は冷えたエナドリを手に取り、ダメ元で彼女の首筋に当ててみた。
「つ、冷たい...ん...」
「大丈夫ですか?」
「う、うーん......って誰!?」
彼女は飛び上がり、距離を取る。
「あ、怪しい者じゃないですから!あなたがそこで寝落ちされていたので、起こしてたんですよ!」
「あーそっか...私、またやっちゃったのか...」
と、彼女は頭を抱えながら言った。どうやら、常習犯のようだ。
「いつも、こんなとこで寝てるんですか?」
「今日はたまたまというか...いつもはちゃんと家の敷地内で寝落ちてること多いんで!ほら、あそこが私の家なんで!」
と言って、彼女が指を指す。
「あ、そうなんですね...ほんと、家の目の前で寝落ちてたんですね...」
「そうなんですよ〜あはは。いつもはちゃんと敷地入って、玄関前で寝落ちるようにはしているんですけどね〜」
「あははは、そ、そうなんですね。何はともあれ、気を付けてくださいね」
ちゃんと敷地入って、玄関まで寝落ちるようにしてるってのはかなり引っかかるが、この際は触れないでおこう...
にしても、かなり立派な家だし、結構なお金持ちなんだろうか。寝落ちてたときは分かりにくかったが、歳はだいたい同じくらいかな?
「じゃあ、私はそろそろ失礼しますね」
「あ、はい」
「あっあとこれ、良かったら!」
そう言って、先程のエナドリを渡された。
「あ、ありがとうございます」
そんな一連の流れを挟み、俺はその場をあとにした。
野生の着ぐるみパジャマっ子、朝の通学路にいずれまた現れるのだろうか――
※※※
その日の放課後、俺は担任の山本先生に職員室に来るように呼ばれた。何か怒られるようなことをした覚えはないが、一体、どんな要件だろうか?
そんな中、俺は渋々職員室に向かう。
自己紹介が遅れたが、俺の名前は吉田奏斗。青翔高校に通う、どこにでもいるごく普通の男子高校生だった。だったというのも、今朝、野生の着ぐるみパジャマっ子と遭遇し、普通ではなくなったのでは?と考えていたり。
そんな冗談はさて置き、職員室に着いた。「失礼します」と言って中に入り、山本先生の席に行った。
「お、来たか。突然だが、折り入ってお前に頼みたいことがある」
彼女の名前は山本ちかげ。2年3組の担任で、数学教師である。年齢は30代だと聞いている。
「なんですか?」
「うちのクラスに不登校生の椎崎美羽っているだろ?」
「あ、はい」
「それでだな、お前には椎崎が学校に来るように説得してもらいたい」
「......え?」
「そうか、やってくれるか――」
「いや、まだ何も返事してないですよね!?」
出たよ、この人の無茶振り...嫌な予感は薄々していたが、まるで人の話を聞かないこの感じ、何回目だろうか。
「まあ、細かいことは気にするな。それに、自分の受け持つクラスに不登校生がいると、私のメンツが立たないんだよ〜」
「自分でなんとかして下さいよ!どうして、毎回俺に面倒事を押し付けるんですか」
「私は色々と仕事があるし、面倒くさい!あと、部活やってないから、暇だと思ってさ!それに〜私とお前の仲だろ〜」
「はあ、そうですか...あと、そのダル絡みやめて下さいよ」
このクソ教師、今はっきりと面倒くさいって言いやがった。相変わらず、自分勝手な人だ......
「それはともかく、吉田!」
「なんですか」
俺はため息交じりに言う。
「お前はクラスのやつが不登校になっているんだから、何とかしてやりたいとは思わないのか?こういう時こそ、みんなで力を合わせる時だろ!」
と、意気揚々に力説する。
正直、あんたには一番言われたくねぇーよ......それに、説得力が全く感じられない。
「分かりましたよ〜やりますよ〜」
このままでは埒が明かないし、引き受けるまで帰してくれそうにないので、仕方がなく引き受けることにした。
毎回、こんな感じでパワープレー決め込まれてるんだよな......実際、憎めないとこもあるし、俺もお人好しだよな〜
「ありがとうな、吉田。なんせ、お前は引きこもりの取説は詳しいだろしな!まあ、ちゃんと借りは返すから、楽しみにしとけよ〜」
山本先生の「借りは返す」なんていう期待値のない言葉を受け流しつつ、住所と電話番号の書かれた紙を受け取った。
それに、いつから俺はひきこもりの取説に詳しい人認定をされたのかは知らんが、一応言うと、俺の家族に起因するものである。なぜ、山本先生が俺の家族について詳しいのかは、追って説明するとしよう。
※※※
俺は渡せれた住所を基に、椎崎の家に向かっていた。
「てか、この住所って毎朝通ってる道だよな」
スマホのマップに従っていると、見慣れた道に出た。
そういえば、まだ「椎崎美羽」について、ほとんど知らないんだよな...1年生〜2年生の5月くらいまでは来ていてらしい。ただ、同じクラスとはいえ、1年生の頃は面識ないし、2年生にもなったばかりだ。正直、そんなやつがクラスにいてたような〜いなかったような〜みたいな認識である。
そんなこんなで歩いていると、椎崎の家らしき住所に着いた。
「えっと...ここって、マジで」
そんなこと一切考えてもいなかったが、そこは野生の着ぐるみパジャマっ子の生息地だった。住所の検索間違いしていないか、再度入力し検索するが、確かにそこを示していた。
やっぱ、俺はどこにでもいるごく普通の男子高校生ではないかもな......
そんな冗談はさて置き、俺は渋々インターホン押す。
「は〜い、どなた様ですか?」
「せ、青翔高校の吉田奏斗です!山本先生の遣いできました!」
「あ〜吉田くんですね!山本先生から話は聞いています〜」
話し方から、優しくておっとりとした雰囲気の人だと伝わってくる。
「そ、そうですか」
「今、行きますね〜」
しばらくして、椎崎のお母さんらしき人が家からできてきた。年齢は俺の母さんと同じくらいだろうか?それにしても、話し方もそうだが、見た目もおっとりとしていて、すごく美人な人だな。今思えば、確かに野生の着ぐるみパジャマっ子もかなり容姿は整っていたな。
「わざわざありがとうございます〜私は美羽の母です。どうぞ、中に入って下さい」
「お、お邪魔します」
丁寧な出迎えに緊張するのと同時に、いつもはここで寝落ちているんだなと玄関の前を横目に家に入った。
「今、飲み物を持ってきますね〜」
とリビングに案内され、ソファーに座るように促された。
「べ、別にそこまでしていただかなくても結構ですよ!」
「まあまあ、遠慮はしないでくださいね〜」
そう言って、エナドリとお菓子を持って戻ってきた。
「ってエナドリ!?」
「お嫌いでしたか?」
「いえ、そういう訳ではないんですが、エナドリをいただくのはあまりないので、ついびっくりしまして...」
人にエナドリをあげるのは、まさかの母親譲りだったのか?
「あ、そうなんですね〜私、てっきり、あの子がよくエナドリを買ってくるので、若い子たちは好きなんだと思って。ごめんなさいね〜」
母親譲りというか、彼女のお母さんは少し天然ぽいのかな。にしても、あいつはそんなにエナドリが好きなのかよ。
「まあ、自分も嫌いではないので、ありがたくいただきます」
実は、今朝も娘さんにエナドリをいただきまして〜とは言えず、プシュッという音を鳴らしつつ、用意されたコップに注いだ。
「吉田くんはしっかりしてますね〜」
「いえいえ、そんなことないですよ」
「そんなことありますよ〜安心して、美羽のことを任せれますね。なんでも、吉田くんは引きこもりの取説に詳しいとか」
「別にそういうわけでもないですよ。ただ、自分も家族に引きこもりがいるので、山本先生が大げさに言ってるだけです」
「あら、そうなのね~でも確か、先生が吉田くんは過去にも引きこもりだった生徒を救った実績があるって言ってたような?なので、私としてはとても心強いです」
「は、はあ......」
そんな実績ねぇーよ!あのクソ教師、やってくれたなぁ!あと、お母さん、そんあ期待の目で俺を見ないでくれぇ......
「じゃあまあ、美羽の部屋に案内しますね〜」
「は、はい」
そして、俺は彼女の部屋へ案内された。ドアには可愛らしい字体で「美羽 ノック必須!」という札が吊り下げられていた。
「ちょっと呼んでみますね」
「お、お願いします」
そういえば、椎崎の引きこもり理由をまだ聞いていなかったな。
一体、何が理由で......?
「美羽〜?クラスの友達が来てくれましたよ〜」
「......」
「どうやら、ヘッドホンをしてるみたいで。鍵はかかってないので、適当に入ってもらって大丈夫ですよ〜」
「あ、え、本当にいいんですか?」
「まあ、ノックさえすれば大丈夫でしょ〜では、お任せしますね〜」
そう言い残して、お母さんは1階へ戻って行った。
いやぁ〜すごい不安なんですけどぉ!?まあ、ヘッドホンと聞いて、何をしているのかは思い当たる節はあるが......
ついでに言うと、俺の家族にいる引きこもりっていうのが姉貴である。まあ、その姉貴の引きこもり理由ってのがゲームであり、よくヘッドホンを付けてるので、同じなのかなって。
「まあ、ここまで来たらやるだけやってみるかー」
俺は恐る恐る部屋に入ると、部屋は真っ暗でモニターにはFPSと呼ばれるゲームの画面が映し出されていた。
「あ〜もう〜こいつ、マジでうっざい!」
彼女はゲームに集中していて、俺が部屋に入って来たことにすら気付いていない。
あー家でよく見る光景だわぁー朝は見慣れた通学路、放課後は見慣れた引きこもりの光景ってか。
「まあ、確かにこのタイプの取説は詳しいかもな...」
よし、この場合はあの手で行くか。
1、ゲームの電源を無理やり切る。
2、カーテンを開けて、部屋の電気をつける。
3、あとはなるようになる。
俺はミッションを遂行すべく、すぐに行動に移る。まずは、即座にゲームの電源を無理やり切った。
「はぁぁぁぁ!?あんた、誰――!?」
怒号と驚きが入り混じった声が聞こえる。
そしてすぐに、カーテンを開け、部屋の電気をつける。
「ま、まぶしぃ!」
今度は可愛らしい声が聞こえ、彼女が顔を伏せる。
「よし、ミッション完了!」
「ミ、ミッション完了じゃない!何してくれてんのよ!それに、あんた誰よ!」
彼女は血相を変えて、俺に言い寄る。
「ご、ごめん...あと、山本先生の遣いで来ました、吉田奏斗です...」
「......ってあなた今朝の?」
「あ、ども...そうです」
「「......」」
2人の間に沈黙の二文字が続く......
あと、彼女は今朝と変わらず、着ぐるみパジャマっ子のままであった。
「け、今朝、会いましたよね...家の前で」
「そ、そうですよね...その節はお世話になりました」
やはり、お互いどこかよそよそしく、なかなか話が進まない。
まあ、当然ちゃあ当然か。ここは俺からいくか。
「俺は訳あってここに来たんだけど、話いいかな?」
「な、なによ。てかさっき、山本先生の遣いとか言ってなかった?」
「まあ、そうなるな。改めて、俺は吉田奏斗。君と同じ2年3組のクラスメイトだよ」
「げぇ、やっぱり山本先生の遣いなんだ...私は椎崎美羽。どうやら、吉田くんと同じクラスみたいね」
彼女は山本先生の遣いという点に対して、あからさまに嫌そうな反応を見せる。
「まさか、椎崎さんが今朝の野生...じゃなくて、寝落ちていた女の子だとは思ってもいなかったよ」
「野生...?なにそれ?」
「いや、何でもないよ!こっちの話!」
あぶねぇ...はっきり言っちまうとこだった...
「何よそれ。まあ、私もホントびっくりよ。いきなり、部屋に知らない男が入ってきて、ゲームは切られるわ、その男が今朝会った人とか」
「その節は申し訳ない...それで、今日来たのは先生から椎崎さんを学校に来るように説得しろって言われてさ」
「それ、吉田くんのことだったんだ...なんか、先生から『近い内に私からの刺客を送る!』って電話があってさ」
「いや、刺客ってなんだよ」
てか、面倒くさいと言いつつ、椎崎さんとはちゃんと連絡は取ってるんだな。
「私が聞きたいわよ。まあ、立ったまま話すのもあれだし、座りましょ」
「お、おう。意外とこの状況をすんなり受け入れるんだな」
俺は言われるがまま、その場に座る。
「まあ、一周回ってみたいな?」
「分からんでもないな。一応、質問とかしてもいいのかな?」
「別にいいわよ。ただ、話をするだけで、学校には行かないわよ」
「じゃあ早速、椎崎さんはどうして引きこもりに?」
お言葉に甘えて、俺は早速切り込む。
「いきなり、ストレートね。まあいいけど、1つは学校の制度に嫌気が指したのと、ついていくのがしんどくなったのよ」
「なるほどな。確かに、他の学年でもそういう人がいるってのは聞くな...」
実際、彼女以外にもそういった理由で不登校になったり、学校自体を辞めていく人がいるっていうのがうちの高校の現状ではある。俗に言う、自称進学校たる所以というか。
「だって意味分かんなくない!?65分授業に、赤点は50点!おまけに、小テストは週3ってなんなのよ!そんなの入学前に聞いてないっつーの!」
よっぽど不満が溜まっていたのか、彼女は一気に吐き出した。俺は思わず、勢いに圧倒される。
「お、おう...そうだよな」
そう、彼女が言う通り、入学前にはそんな制度は知らせておらず、俺たちが2年に進級したタイミングで始まったのだ。
え、俺?俺自身も最初はめんどくさいことになったなとは思ったが、何とかやれてはいるんだよな〜
「吉田くんは不満とかないの?」
「うーん、全く不満がないわけではないけど...」
「けど?」
「何とかやれてるし、別にいいかなって感じ?」
「はあ...何よそれ。もしかして、吉田くんって勉強できる人?」
と、少し呆れたように言った。
「いや、成績は中の中だけど」
「ふーん、中の中ね〜それはできるようなもんじゃん」
「そ、そうかな?てか、理由の1つが学校の制度って言ってたけど、他にもあるの?」
「そうりゃあもう、如月ユイカ様とゲームよ!」
よくぞ聞いてくれました!と、言わんばかりに彼女は言った。
「は、はあ...」
「学校に嫌気が指し、引きこもるようになった私に光を照らしてくれたのは、如月ユイカ様!私に学校だけが全てではなく、色んな生き方があると教えてくれのよ!」
と、意気揚々にヲタクさながらに語る。いや、これもう正真正銘のヲタクか。今度はまだ違った熱に、俺は思わず圧倒される。
「如月ユイカ様ね...」
「え、吉田くんも知ってるの!?」
彼女はものすごい速度で距離を詰める。
「し、知ってるというか...えーと、姉もその人のこと好きでさ!」
か、顔がちけぇよ......
ちなみに、如月ユイカっていうのは、YouTubeで大人気のバーチャルYouTuberで、FPSと呼ばれるゲームを中心に配信をしているそうだ。と、姉貴が言っていた。
「お姉さんも見る目あるわね!」
「し、椎崎さんにとって、その人ってそんなにすごい人なんだ...あと、ちょっと距離が近いというか...」
「ご、ごめんなさい...つい熱くなっちゃったわ」
彼女は顔を赤らめて、俺から離れた。
「ま、まあ、話を戻すけど....如月ユイカって人は椎崎さんにとってそんなすごい人なんだ」
「そうね、私がゲームにハマったのもユイカ様の影響だし!それに、今もこうやって元気やれてるのも、全部ユイカ様のおかげよ!」
「そ、そうなんだ。確か、椎崎さんって中間テストが終わってすぐくらいから、来なくなったんだっけ?」
「そうだけど?」
この短期間に何があったんだ...改めて、「如月ユイカ」の影響力すげぇな。
「例えばだけどさ、その如月ユイカさんが学校へ行くように説得したら、まだ考えたりするの?」
「そんなの考える間もなく、行くに決まってるわよ!今の私があるのは、ユイカ様のおかげだし!」
「ほう...」
「てか、そんなこと聞いて何になるのよ」
「い、いやぁ〜例えばの話だよ、例えば!」
「まあ、いいけど、そんなこと聞いてどうすんのよ」
「参考程度にね〜あははは」
そんな時、ドアをノックする音が聞こえた。
「美羽〜吉田くんとのお話は終わった?」
「ママ?一応、一段落はついたのかな」
「あら、そうなのね〜じゃあ、ちょっと入るわね〜」
そう言って、椎崎の母が入ってきた。
「どう?学校には行くことにはなったの?」
「行かないわよ!」
「あらあら〜それは残念ね〜」
と、俺の方を悲しげに見てくる。
お母さん、そんな目で俺を見ないで......
「てか!ママが吉田くんを勝手に部屋に入れたんでしょ!」
「そんなこと言われても〜ちゃんとノックはしたわよ?」
「だからと言って、知らない人を勝手に入れないでよ!」
そう言いながら、ぽかぽかと母を叩く。
なんかとも可愛らしい光景だな...着ぐるみパジャマといい、椎崎さんって可愛らしい一面が結構あるんだよな〜
「次から気をつけるから、ごめんってば〜そんなことより、ご飯はどうする?」
「あっもうそんな時間だったんですね。俺、そろそろ帰ります」
「え〜せっかくなら、うちで食べて行ってもいいのよ〜」
「い、いえ、流石にそれは悪いですよ!」
「もう吉田くんの分も用意したのにな〜」
と、再び俺の方を悲しげに見てくる。
そんな目で見られると、断りにくいじゃん...この人、最初から全部手回ししてるんじゃ...
「こうなったママはもうダメよ、諦めなさい」
「そ、そうなんだ...じゃあせっかくだし、いただいて行こうかな〜」
「あら、嬉しいわ〜もうできてるから、みんなで食べましょ〜」
こうして半ば強引に...じゃなくてご厚意に甘えることにした。
下に行くと、豪華な料理が並んでいた。
「え、すご」
「吉田くんがいるから、つい張り切っちゃったわ〜」
「ママは料理が好きで、すごく美味しんだけど...毎回作りすぎちゃうのよ」
「そうなんだ。でも、そんなに美味しいなら、いくらでも食べれそうだけどね」
数分後――
「も、もう食べれない...」
「私もお腹いっぱい...」
「あらあら〜たくさん食べてくれて嬉しいわぁ〜」
椎崎の言う通り、結構な量が残った。
「いやぁ、本当に美味しかったです!こんなに美味しいのに、お腹がいっぱいで食べれないのが残念ですよ〜」
「あら、嬉しいこと言ってくれるわね〜」
「機会があれば、またいただきたいですよ!」
「いつでも食べに来てもらっていいのよ〜」
「吉田くん、ママをあまり調子乗らせない方がいいわよ...」
確かに、この人は少し気をつけないといけないかもな〜
「じゃあ、俺はここら辺で帰りますね」
「あら、もう帰っちゃうの〜」
「流石に、俺も帰らないといけないんで」
気づけば、時刻は6時を回っていた。
むしろ、初めましてでご飯までいただくとは思ってもいなかった。
「それは仕方がないわね〜せっかくだし、主人にも会っていけば良かったのに」
「そ、それはまたの機会にしときますね〜あははは」
「じゃあ、その時を楽しみにしとくわね〜あ、そうだわ!美羽、せっかくだから吉田くんと連絡先交換しといたら?」
「え、なんでよ!?」
「はぇ!?」
「だって、吉田くんいい子だし〜また遊びに来てもらったらいいじゃない〜ねっ?」
急な提案に驚きだが、俺は何故か気に入られたらしい...
「別に私はこれ以降、関わるつもりないわよ!」
「連絡先の交換くらいいいじゃない、減るもんじゃないんだし〜吉田くんも別にいいでしょ?」
「お、俺は椎崎さんにお任せしますよ」
「じゃあ、交換で決まりね〜」
そんな中、椎崎がジト目で何か言いたそうに俺の方を見てきた。
そんな目で見るなよ、俺だってどうすることもできなかったんだから...
「はいこれ、私のQRだから」
「お、おう」
俺はQRをスキャンして、友達追加した。
そんなこんなで、連絡先を交換し、俺は椎崎の家をあとにした。
椎崎の家をあとにした俺は悩んでいた。
「はあ、どうしたものか...どうせまた、先生に椎崎さんを説得してこいって言われるんだろうな〜」
そんな独り言をぶつぶつ言いつつ、対応策を考える。
実のところ、1つは浮かんでる。ただ、この策には協力者が必要であり、そいつの了承が必要になってくる。協力要請する相手がまためんどくさいんだよな......
「よし...なるようになるか!」
こうして、野生の着ぐるみパジャマって子との出会いが、平凡な高校生活を変えていくのであった......?
引きこもり少女と始める学園ラブコメ だーな @danadana514
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
フォローしてこの作品の続きを読もう
ユーザー登録すれば作品や作者をフォローして、更新や新作情報を受け取れます。引きこもり少女と始める学園ラブコメの最新話を見逃さないよう今すぐカクヨムにユーザー登録しましょう。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
関連小説
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます