第4話 役割を終えた生命

 役割を終えた生命は、その構成要素たる物質が地球に回収されていく。他の生物だったり、水などの風化作用だったり様々だが、ともかく生命は物質を運搬するトランスポーターであると同時に、自分自身が運搬される物質でもある。それ故、死が存在する。仮に、石油をエネルギー源とする微生物なり何らかの生命がいたとする。彼らは石油をどんどん抽出してエネルギーとして利用し、大いに栄えるが、石油がなくなったところで死滅し、彼らの死骸もまた他の生命に運搬されてゆく。重要な点は、滅びも必然であり、また滅びたことは彼らが愚かであったことや間違っていたことを意味しない。彼らは立派に役目を果たしたのだ。

 人間も同じである。人間は他の生命ができないような物質を次々と運搬していく働きが求められている。もし、その働きを十全に全うできなくなったら、必然的にその種は滅び、その死骸は別の生命への運搬されていく。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る