3.呪い

「俺の名前はクロウ。俺がお前を守る」


まるで騎士のように膝まづき、誓いの言葉を告げた彼の頭部は、鈍い音を立てて転がる。

 

「ぎゃ!?」


 突然のことに悲鳴をあげてしまうが、彼は気にした様子もなく頭部を広い、首に繋げる。

 

「……どうやら、呪いが中途半端のようだ。」


「呪い?」


「お前が、呪いをといてくれたんだろ?」


 そんな覚えはない。渡した薬草にはそんな効果は含まれていない。

 ……もしかして、ずっと私が持っていたら魔力が薬草に移り、回復効果だけではなく呪いを解く効果も生まれたのかしら?


「でも、中途半端って……貴方、クロウさんはどんな呪いをかけられたの?」


「……首を切断されて殺された。その時に呪いをかけられ、部屋から出ることができない不死身の体になった。

だが、肉体の損傷は修復せず、痛みだけを受け続けていたんだ。」


 とんでもない呪いに身を震わせる。

 私をこんな目に合わせた奴と、犯人は同じだろう。本当に虫唾が走る!


「……痛みはもうないの?」


「あぁ、平気だ。

不死身の肉体のままだが、部屋からも出れる。」


 クロウは嬉しそうに弾む足取りで、ゴーレムだった砂を踏み超え、部屋を出る。


「このゴーレムどうやって倒したの?貴方、魔法が使えるの?」


「いや、切った」


「え?」


「『EMETH』の文字から『E』を切って消したんだ」


「あ、あの一瞬で!?」


「そうだ」


 とんでもない早業だ。でも、ここに閉じ込められるぐらいだから、私と同じように強過ぎて、神と魔王が鬱陶しくなり閉じ込めたんだろう。

 この強さなら納得だ。何より早すぎる。何も見えなかった。


「それで、名前は?」


「あ、失礼。

アザラ、魔女よ。強過ぎて魔力を全部取られてここに閉じ込められたわ」


「なるほど、俺はクロウ。

同じように強いが故に、弱い奴に目をつけられ閉じ込められた。

速さなら誰にも負けない、俺がお前の足となろう」


 これ以上ない強力な味方に口角があがる。

 私だけじゃない、クロウさんの復讐も同時に果たせるんだから、なんて最高なのかしら!

 復讐も出来て良いことも出来る!

 

 私は平和主義の魔女。

 でも、平和を害する者は退治しなければね!


 クロウさんと同じ呪いをかけるのも良いかもしれない!私は,これからのことに胸を弾ませた。

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