最強魔女の復讐劇 ~ダンジョン配信で逆ハーレムを作り、全員ぶっ潰す!
樹脂くじら
1.宣戦布告
世界最強の魔女。
それが私、アザラ・グローア。
真っ黒のワンピースと、トンガリ帽子、腰まであるストレートヘアというどこにでもいる普通の魔女の格好をしている。
ありとあらゆる魔術を使い、私に敵う奴は人間や悪魔、それどころか神にも居ない。
けれど、私は平和主義者。
戦争を起こして世界征服なんて考えても居ない。
だって、猫は愛らしく、人間の作る作物は美味しい、魔族は力が強くて頼もしい、妖精は歌が上手。
そんなことする意味なんてないじゃない。
そう、思っていたーーー。
午後3時にさしかかるころ、私は最近流行りのダンジョン配信を見ていた。
魔術が発達して、ダンジョンに挑戦する者達を見ることが出来るバラエティ豊かな配信だ。
応援を込めて配信者に寄付をしたり、モンスターにやられた映像も映るので、救助にも行きやすい優れものだ。
こんな敵倒したなー、この罠の解除方法面倒なのよねと、昔を懐かしんでよく見ている。
村外れの小さな小屋。
私はそこに住んでいた。住む理由は簡単、ここの村の作物が1番美味しいからだ。
ダンジョンも制覇し尽くし、飽きて隠居生活をしている。
弾むような足音に、そろそろあの子達が来る頃かと配信を閉じる。
「アザラ!」
「リュカ、いらっしゃい」
勢いよく扉を開けて現れたのはリュカ。この村で1番強い青年だ。
小麦がかった綺麗な髪の色は、窓からはいる太陽の光で輝いている。
小さいが剣の腕が達者で、町の憲兵として有望視されている。
まぁ、私がいるからそんな必要はないのだけれど
この子がいれば安心して将来遠出をすることが出来る。
それほどの腕前だ。
「今日も、魔術の授業頼むな!」
「いいわよ」
リュカは剣の腕前はあるが、魔術はそこまで上手くない。
小さな村の小さな学校で、1番最下位の為、悔しくてよく私の家に遊びに来る。
控えめに小さなノックが聞こえる。
「アザラ様、畑で野菜が取れたのでこちら良かったら……」
「あら、アスタロトいらっしゃい。今日も沢山ありがとう!」
「いえ、アザラ様にはお世話なっているので、おかげでこの村は飢えや病の心配はいりません……」
丁寧で礼儀正しく、どこか大人びて、眼鏡をかけた少年は、アスタロト。
村長の孫で、勉強と魔術が得意。
「リュカ、アザラ様に迷惑をかけるなよ」
「かけてねぇよ!うっせーな!」
「こらこら、喧嘩しないの!」
会うと喧嘩してしまうが、仲は悪くないようで時折私の家に来て一緒に遊んでいる。
私が天候を操ったり、怪我人を治療したこともたり村人達は良くしてくれる。
こうやって、作物をわけてくたりして嬉しい。
今日の晩ご飯は、少し寒くなってきたのでシチューも良いかもしれない。
夕食を考え笑みが溢れる。
指先に微弱な電流が走る。
これは、村にはった結界を破かれた合図だ。
何重にも貼られた結界が解かれるのは、よほどの実力の持ち主だろう。
念のために、この家にも結界を貼り直し、2人には少し出かけることを伝え、原因を確かめに行く。
結界は無造作に破られた。
魔力が高い者の仕業ではなく、何十人もの魔術師が力任せにやったことだろう。
しかし、そんな人数の魔術師や魔女が来れば魔力で気づくはずだ。
なのに、気づかなかった……。
嫌な予感がしてこのことを報告しようと村長の家に向かおうとするが……。
「あぐっ!?」
鈍い痛みが足先に走り躓く、足には獣を捕まえるトラバサミが肉に食い込んでいた。
なぜ?
私は自動的に攻撃を反射できる魔術を纏っている。トラバサミが反動で破壊されるほどの威力のはずなのに、なぜこんなことが…….。
こんなこと一度もなかった……。
痛みと、経験したことのない事態に判断力を失っていたのが不味かった。
頭に激痛が走り、また地に倒れる。
追撃と言わんばかりに、喉に剣が突き刺さる。
詠唱をしなくても魔術は使えるが、どうしたわけだか今日は魔術を発動できない。
「すまない」
「許してくれ」
まるで呪詛のような許しを求める言葉に、血で汚れた視界で声の主を探す。
そこには村の大人達と、神界の神と、魔界の魔王が笑っている。
「何を謝ることがあるのです?貴方達は神の神託通りにしたのです。誇るべきですよ」
「よく言うわ!神罰によって村を陥没させ、皆殺しにするって脅したくせによ!」
優雅に、豪快に、耳障りな笑い声をあげて見下す。
村人達は泣きながら私に謝罪する。
そうか、そういうことか。
神と魔王に、脅され、私に渡した野菜に毒を混ぜ込んだのだろう。
その毒により私は魔力が使えなくなったのか。
微量により気づかなかった。
何年も、何年も、何十年もかけて。
中には老人もいるではないか。
可哀想に。
「こいつが居ると迷惑なんだよ!強いのは俺だけでいい!」
「弱い奴ほどよく吠えると言うもの、まぁ、所詮この魔女も哀れで矮小な生物だったというもの」
1人では倒せないから、手を組んだのか。
そんなに私が怖ったのか。
血が詰まり、口から大量の血が吹き出す。
祈りの言葉を吐き出す者もいるが、その祈る先の神は、今、目の前で貴方達を脅している者だぞ、そう考えるとなんだか呆れて笑ってしまい、また血を吐く。
「犯れ」
「殺れ」
無数の槍と剣が現れ、私を串刺しにする。
叫び声も上げることが出来ず、脳、目、腕、腹、足など無数に突き刺さし、血が吹き出す。
私は意識を手放したーー。
目が覚めると傷が塞がっていた。
服は見るも無惨に破かれ、薄暗く汚く、カビ臭く、辺りには苔が生えている。
周りを確かめようと視線を泳がすと、突然けたたましいファンファーレが鳴り響いた。
「やぁやぁ、天国の諸君、地獄の諸君!」
「魔族以外の下等生物達!」
大きな画面が現れ、そこには人だけではなく様々な種族の者達が不安そうな表情でこちらを見ている。
「今までこの魔女のせいで、我々は手が出せずにいた!」
「でも、それも今日で終わり!」
「「我々は魔女を殺した!」」
ファンファーレと2人の笑い声が重なる。
「ただ殺すだけじゃ腹の虫が収まらねぇ!だから、今流行りのダンジョン配信をこの女にやらせる!」
「クリアのルールは簡単。ダンジョンに隠された禁書を6冊探し当てること!」
「ただし魔女の魔力はこの禁書によって封じてる。0冊所持は勿論魔力0!役立たずの糞女ってわけさ!」
「ダンジョンだから、勿論モンスターは襲ってくる。殺されて犯されても安心しなさい。私が蘇らせてあげるから。まぁ、獲得した禁書はまた違う場所に隠されるけど」
「この動画は全種族に向けて配信中!お前の無様な様を見せつけな!ギャハハッ!!
俺の邪魔をした罰さ!」
「クリアの猶予は1年間。その間、いや、それより前に私が飽きたら人類を皆殺しにします。」
「「それでは、皆様お楽しみを!」」
ゲラゲラとした笑い声に、私は自分の平和主義者を呪った。
脅された村人は百歩譲って許す。
代わりに永久的に私に供物を捧げることが条件だ。
だが、神も魔王も許さない。
2人とも痛みを与えて殺す。
これより先は、私に害を持つ者全員殺す。
配信画面に向かって、中指を立てて宣言する。
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