第12話

「美愛ちゃん、覚えてないかもしれないけど、一度ここで会ったことあるんだ」


ここで会ったことあるの?


「え?」


ウソだ。春くんに会ってたら覚えてるはず。だって、好きな人だよ。


「覚えてないよね。まだ、仕事はじめたばかりの頃だし」


いつの話?仕事はじめた頃?


「あの頃、仕事がうまくいかなくて、ここの近くで撮影してたとき、休憩時間にブラブラしてたんだ。で、風が強くて帽子が飛んじゃって、そしたら美愛ちゃんが拾ってくれたんだ」


そんなことがあったような・・・


「俺ね、その日から美愛ちゃんのことが頭から離れなくて、その一年後くらいに手紙もらって、写真貼ってあって、すごくびっくりした。あの子だって。それから、ライブにも来てくれて、本当に嬉しかった」


手紙は、覚えてもらいたくて、写真貼るようにしたんだけど・・・


「俺ね、はじめて会ったときに一目惚れしたんだ。だから、手紙もらったとき運命だと思った」


運命?そんな風に思ってくれてたの?


「・・・」


でも、なんだか信じられなくて、今起きてる出来事が夢みたいで・・・だってさ、こんな普通の一般人が普通より下の下だけど、そんな私に春くんが運命だとか一目惚れとか言ってて、そんなことあり得ないもんね。


「美愛ちゃん?」


「・・・はい」

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