第4話 心の壁を越える

その日から、彼女は定期的に自然の中へと足を運ぶようになった。日常の喧騒から逃れるたびに、自分自身と向き合う時間が増え、内なる感覚に浸ることが日常の一部になっていった。しかし、同調圧力の中で過ごす日々は、彼女の心に微かな不安を生じさせ続けていた。


ある日、彼女は一人で深い森に足を踏み入れた。そこは静寂に包まれていて、周囲の音すらも自然の一部として感じられる場所だった。彼女は大きく息を吸い込み、心の中のわだかまりを吐き出すように、ゆっくりと息を吐いた。


「こんな世界で、私の感覚はどこまで許されるのだろうか…?」


その問いは、彼女の心の奥にずっと根を張っていた。社会の目から解放されても、心にはまだ見えない壁があった。自分の感覚を信じて生きることへの恐れ、そしてその感覚を他人に否定されるかもしれないという不安が、心の中にしがみついていた。


しかし、森の静けさに包まれながら、彼女はふと気づいた。その恐れもまた、他人の視線や意見に縛られたものであり、自分自身の本質ではないと。周囲の声や価値観に囚われている限り、真の自由を得ることはできない。


彼女は自分の内なる声をもう一度聴き、その声に身を委ねる決意をした。「この感覚が私を導いてくれるなら、何も怖くない」と。


そして、彼女は周りの音に耳を澄ませ、自分の鼓動が静かに響くのを感じた。その音は、まるで彼女を新しい世界へと誘うかのように鼓動していた。彼女は目を閉じ、何も考えずにただ、その感覚に集中した。


次の瞬間、彼女の心の中の壁が音もなく崩れ落ちた。それは、彼女にとって解放の瞬間だった。恐れも不安もすべて消え去り、彼女は純粋な感覚と快楽に包まれた自分自身を感じた。


「これが…私だけの真実。」


心の壁を越えた彼女は、自分だけの快楽の中に完全に没入していった。

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