第8話

〜時間軸?? 高次盤座標1101050290〜


何も無い空間に存在が2つ。


「...以上が報告になります。」


片方は部下として働く存在。


「あ、え?マジ?そりゃ不味くね?」


もう片方は部下の主。


「はい...。申し訳ございませんでした。」


「うわっちゃー、いやー、謝らなくてもいいよ〜。ちょっと考えるから待っててねー。」


「承知しました。お手数お掛けして申し訳ございません。」


気にしなーい、気にしなーい。と、気の抜けた声が空間に響く。


主の方は報告内容に対して可能な範囲で対策を考える。


しばらくして、言葉を紡ぐ。




「オーケー。まず前提として君は悪くない。あれは、そもそもイレギュラーな道具だったからね。全くもって嘆かわしいよ。幸い、彼らを巻き込んだ後に消滅したからね。時間を開けずに2回目が起動されちゃったら、そりゃ壊れるよね。」


「...。」


「んでもって、我々が対処しなくてはいけないことは大きく分けて2つだ。1つ、あの道具のせいで異界同士が繋がってしまったこと。2つ、本来渡ってはいけない人間達が異世界へ渡ったこと。対象が知的生命体が故に、こちらは大きく干渉ができない。」


「仰る通りです。」


「まぁ、既に君は罪悪感で結構な干渉をしてしまったようだけどね。ここまで干渉しちゃうと幾ら僕でもフォローしきれないんよ、これはねぇ。えー、『投影魔法』『存命措置魔法』『格の適合力向上』『自分を投影して天使の存在を周知』『見方によっては人類への肩入れ』エトセトラエトセトラ。んで、何よりも、力の塊を何の申請もなしに地球側から異世界へ向けて異空間を渡らせたことが、致命的だねぇ。分かっているとは思うんだけど、やっていることは悪くない、けどそれを勝手にやっちゃうと責任を負わなくちゃ、だよね...。ぐぬぬぬ。主としては、罰を与えたくないんだよなぁ、こういうの。」


「申し訳ございません...。」


「いいよ、本当に。君は悪くないんだから。あんなのアクシデントだからさ。神である僕もあれは防げない防げない。とはいえ、不問にはできないから、僕から提案、というか罰を与えようかと思うんだよね。」


「如何なる内容でも。」


「ちょっと君を‪”降り‬‪”にしよう‬かと思うんだよね。」


「...はっ。承知しました。」


「まぁ出張だと思ってよ。一時的なね。期限付き期限付き。永久にはしないよ。君にはこの先も活躍してもらわなきゃいけないんだから。」


「感謝致します。」


「んでー、そうだなぁ、異世界行っちゃった人間達って今何人だっけ?」



「現在20名弱です。」


「おっけー。まぁそっちの方が仕事量もほどほどだと思うし、君にその子らの管理を任せようかなと思う。過干渉は不可。‪”‬‪降り”‬をした状態でこれしたら、もう君を消すしかなくなるからそのつもりでね。僕のためにそれだけはやめてね〜。」


「承知しました。」


「具体的な業務内容は....はい、送っといた。後で確認してね。」


「ありがとうございます。」


「あとは〜、あ、そうだ。そっちの都合もあると思うから、こっちの方針伝えておくね。まずは混じりあった世界の法則をこっちで安定させるね。あの世界は地球という星を中心に異界に繋がった箇所が多くあるからね...。地球は化学力が発展しているけど、もう片方の世界の法則と相性悪いからなぁ。フェアにするため、人類を中心に知的生命体の選定をして、それから【勇者】とかの配役を決めようと思う。あとは、流れ次第かな。あとは融合した次元を元に戻すのはリスクが高すぎるから、人間が行ったり来たりすることができないように結界を貼っとくね。」


「承知しました。頂いた業務内容を中心に勤めて参ります。」


「あいよぉ〜、よろしく。はぁ、あの馬鹿どもの対処もしなきゃいけないのに、苦労かけるね。頼んだよ。」


「はい。」


「ほんじゃーまたね〜。この珍事件に収集付いたら、またここに呼べるからよろしく。ざっと1056年後くらいかなぁ。まぁすぐだからちょっとの間頑張ってきてね。」


「貴方様からのお言葉を励みに努めて参ります。では、よろしくお願いします。」


「まぁ、ほどほどにね。きみ、頑張りすぎちゃうところあるから。人間を観察して見習っておいでよ。じゃーね。」



『降れ』


主の方がそれだけを言うと、部下の方は一瞬で消えた。


「ぐぇー、なんだよこれ、阿呆かよ。道具作るならしっかり作れよなぁ。バグのせいで遠い星にクソでかい亀裂できてんじゃん...。ぐぁー、バランス調整だるくなるぅー。.....え、ちょっ、待て、あぁっ!あぁ!!!?ぐぬぁぁぁ!!これ、調整ムズいって、こんなやつ次元通ってくるなよ!!【勇者】1人で足りるかぁ?いや無理だよなぁ。でも2人も選定するリソースも無いしなぁ。あー、やっべー、これどうする?あー、ん?おぉー。待てよ。あの馬鹿どものせいで異世界に行ってしまった地球人達が居るよなぁ。あの子らの中から...。そうだ!!そうしよう!この手だと規約的にも問題無いし、リソースも、まぁギリ大丈夫かな。」


神と呼ばれる存在は、ブツブツ独り言を呟きながら作業に取り組む。


交じり合った世界の安定化を目指して。

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