世が巡り、界は交わる。~異世界転移したとしても必ず家に帰ります〜

@tanatosu1209

世界と世界は繋がる

第1話

周囲は土埃が舞い、視界が不明瞭。土埃の奥には人影や、明らかに人ではない、人ならざるモノの影が見える。


そう思った瞬間、全身の至る所からの鈍痛で意識が朦朧とする。特におでこに感じる鋭い痛み。思わず顎の関節部分にだけ力を込めて、何とか痛みに耐えようとする。


気持ち悪い....。痛み特有の吐き気のような不快感が全身を駆け巡る。手や腕には力が入らず、痛いところへ手を当てることも出来ない。


「やめ....ぎゃっ!?どこっ、ぶぁぐぁ!ーーー◾︎▽×○!!!」


先程見えた人影と不気味な影の方向から、聞きたくないような、悲鳴が聞こえた。


あぁ...。俺も、死ぬのか...。別に、小さい頃から死ぬのは怖く無いと感じていた。なぜなら人は誰しもいつか死ぬから。過程が違うだけで皆一緒。実際死にそうになった場面はいくつもある。現代だとしても意外と死の危険というのは身近なものだ。しかし、いざこうして意味もわからず化け物に殺されそうになると、あまりの理不尽さに怒りを感じてしまう...。


日常生活では感じたことの無い怒り。日常の中で死ねない理不尽さ。行き場はあるはずなのにぶつけられない感情。


せめて死ぬとしても事故や事件など、理解出来る現象の内で死ねたら、なんと心穏やかに死ねたことか...。


常識の埒外、不条理、ファンタジー、こんなものに殺されるとか、許せねぇ...。そういうのはスマホとかゲーム機とか娯楽の中だけにしろよ,


と、そこまで感情が高まり、昂りすぎて、冷静になる。


「あ゙ぁ、クソっ....。」


冷静になり、思う。別に俺はこれで死んでもいい。元より割り切れるような考えがあったから。死は怖くない。理不尽がウザくてウザくて殺意が生まれているだけだ。


でも、どんなに冷静になっても許せないことがある。恋人が理不尽にあうことだ。


俺とは違って、みんなから認められて、いつも素敵な笑顔で、素敵な考え方で、みんなを笑顔にする。死ぬことは怖くないとか平気で言っちゃうようなひねくれた俺ですら、受け入れてくれた、寛容な人。


そんな人が理不尽にあって絶望して、怒りながら死んでいくのは、この世界の理として、認められない。受け入れられない。美しくない。


俺が死んだとしても、俺は俺の理想を世界に押し付けてやる。世界に描いてやる。


そう思い、視界の端に写ったコンクリートの破片を手にした。


砂埃の奥から、人ならざるモノが、徐々に、近づいてくる。先程の悲鳴からすると、相手は生身の人間を簡単に殺せる力をもっているらしい。しかも秒殺。あっという間に声は出せなくさせる程度の力。そんな相手をするのに、世の中っていうのは銃の1つも用意してくれない。


「クソゲーかよ...。」


俺はそうつぶやく。痛みから立ち直った脳を働かさせ、生き残って彼女を救うための手段を模索する。


まずは目の前の存在を、なんとかしなくては...。そう思い、俺は内から生まれる感情に身を任せ、コンクリートの破片を構える。


ほんと、この世界はクソゲーだ。


ならこのクソゲー、しっかりクリアしてやるよ。命でももってけコノヤロウ。だけど絶対譲らないものは、手に入れさせてもらうぞ。


そう思い、この世界へ、反撃の1歩を踏み出した。



ちくしょう、なんでこんなことになったんだか....。

化け物を目の前にしているものの、死を覚悟しているためか、なぜこうなったかを無意識に回想してしまう。本当はそんな余裕もないのに。



こうなったのも全部、あの化け物達のせいだ...。

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