第20話 のんびり屋エポンのおひとり散歩?

 校外学習から3日後の土曜日の朝、薫から明瀬に連絡がいった。

 エポンが散歩へ出かけて行ったのだ。

 ラパンがエポンを追いかけつつ、薫は先に明瀬とミランで集合する。

 集合場所は神尾商店街前の門だ。

 朝の10時15分。明瀬たちと合流し、薫たちはラパンの元へ向かう。


 「朝のエポンの様子はどうだったの?」


 「特に変わったところは無かったよ。いつも通り朝ご飯をラパンの分まで食べて、少しボーっとしてから何処かへ行ったって」


 「うーん…確かにいつも通りミラ…」


 そしてラパンの元に着いた時、ラパンからエポンはずっと水がある所のそばを散歩していたと話を聞いた。

 魚屋の生け簀、小さな公園の小さな水たまり、スーパー銭湯など…最後の銭湯はお湯だがいいのだろうか?と、明瀬は思ったが妖精だし関係ないのかもしれないと、思い直した。


 「あ、いたラパ、今は公園の池にいるラパ」


 「やっぱり、水に関係する場所にいる…鯱って海の動物だけど、淡水でも大丈夫なのは妖精って感じだねぇ」


 薫はしみじみと呟いた。

 エポンが少しの間池の中を泳いでいるの観察する。

 特に池の中に、魚の友達がいるとかでもなく、ただただ泳いでいるだけのその姿を見つめていると、段々眠くなってくる。

 明瀬はウトウトしてしまった。していた内に、エポンは再び移動を始めた。


 「早く、追いかけるラパ!」


 「え、あぁ…そうね……ねむ……」


 「あ、明瀬さん……眠そうだね…」


 「あまりにものんびりとした時間が流れてたものだからつい……ふああぁあ……」


 思い切りあくびをしながら、背伸びをする。

 ラパンの後を付いて行き、エポンのを順調に尾行をする4人。

 今度は移動中に野良猫に木の実を貰っていた。

 ミランが「友達も作ってたミラか……」と呟く。

 木の実を貰ったら、次はそれを木の下にいた虫にあげていた。何かを話しているようだが、声までは聞こえなかった。

 明瀬は「妖精って虫とかとお話しできるのね…」と小さな声で言った。

 虫に木の実をあげた後は、誰かの家の金魚に話しかけたり、知らない人の家の池のメダカに話しかけたりなど、散歩というよりも知り合いへの挨拶回りの様な事をしていた。


 「エポンはこの世界にそんなに知り合いが出来ていたラパか……」


 そうラパンは呟いた。

 今度は河川敷の方へ向かっているようだった。

 河川敷の方へ行くと、周囲には特に家などは無く、尾行していた4人は何となく最後に寄る場所かな?と考えていた。


 「河川敷……そういえばこの町はおっきな川が流れてたんだったね」


 思い出したように薫が呟く。


 「芝乃川ね。利根川にもつながってる水量も多い川よ」


 「あ、止まったラパ。河川敷の下…川沿いラパ!」


 「よし、行こう」


 薫たちは、駆け足で河川敷をのぼる。

 エポンの散歩の目的、謎の少女の正体を見つけるべく駆け上る。


 その先にいたのは一人の少女とエポン。

 ラパンの説が正しければ、その少女こそが謎の少女、黄色の女の子だ。

 そしてそこにいたのは、薫や明瀬のよく知る人。


 黄海柚希が立っていた。


 「おおお、黄海さん!?」


 「柚希が…あの女の子…なの?」


 「きっとそうラパ!あの人って、どっかで見た事がある気がするラパ」


 「前にミランたちが階段でお昼食べてた時に来た子ミラ。そういえば、話し方とかエポンと似てたミラね」


 色々と話すが、とにかく目の前で談笑をしている黄海とエポンの元へ急ぐ薫。

 急に走り出したものだから、急いで追いかける明瀬たち。


 「おーい!黄海さーん!エポーン!」


 「あれぇ?天土ちゃんだぁ。エポン、連れて来たのぉ?」


 「違うエポぉ~。もしかして後を付けて来てたエポぉ~?」


 エポンの言葉にドキッとする薫たち。

 だが、ラパンは毅然とした態度でエポンに声をかけた。

 自身の疑問を解消するために。違うなら違うでよいのだ。

 捜索は難しくなるだろうが、ラパン自身は構わない。そう思っていた。


 「エポン!前にカオルたちが博物館に行った時に戦ったリコルドを浄化する時、最後に手を貸してくれたのは、エポンラパ?!」


 その熱烈な問いに、エポンはあっけらかんとした口調で「そうエポぉ~」と答えた。

 そしてそれに対して、ミランは口をあんぐりと開けて驚きを隠す事が出来ていなかった。


 「あの時変身していたのはぁ~ゆずだよぉ~」


 続いて黄海の暴露に、明瀬は「えぇ……柚希が……?」と困惑した表情をみせていた。

 たははと笑う黄海に、薫はラパンたちの様子を見てから話しかけた。


 「えっと……あの黄色い女の子が、黄海さんとエポンが変身したアンジェストロなら、言いたい事があったんだ」


 「言いたい事ぉ?」


 「あの時、私のお母さんがあの怪物…リコルドって言うんだけど、あれの中にいたんだ。それで、黄海さんたちのおかげで怪我無く無事に助けられたんだ。ありがとう…本当にありがとう……」


 深々と頭を下げて、黄海にお礼を言う。

 その様子に、黄海が慌てて薫の肩を掴んで頭を上げさせると、いつも通りのゆっくりとした口調だが、真っすぐ薫と目と目を合わせて話し始めた。


 「えっとぉ、ゆずにぃお礼なんてぇ、要らないよぉ?最後の方しか見てないけどぉ、あそこまでぇリコルド?って~のをぉ追い詰めたのはぁ、天土ちゃんとぉ葵ちゃんの2人でしょぉ?ゆずはぁ、最後の最後ぉそこだけを手伝っただけだからぁ」


 「その最後の最後に手を貸してくれたっていうのが大きかったんだ……ずっとお礼を言いたかった…会えてよかった…!」


 目尻にほんの少しの涙を浮かべながら、薫は笑顔を浮かべていた。

 黄海は心の中で、親と仲が良ければあの状況は怪物に家族を人質に取られているという事だし、心底心配だったんだろう、と今更だが気づいた。


 「変身したのぉあの時が初めてだったからぁ、ヒヤヒヤしてたけどぉ、上手くできてたんならよかったぁ~」


 それならば、お礼は素直に受け取っておく事にした。

 薫は、黄海の”初めて”という言葉に反応をした。

 彼女の中では、あれだけ力を発揮できているのなら、実は何回か変身した事があるんじゃないかと思っていたのだ。

 だが、黄海曰く”初めて変身した”との事。

 ずっとエポンを睨みつけていたラパンも初めてという部分に耳をピクンと反応させ、落ち着いた口調で、エポンに話しかけた。


 「ど、どういう事ラパ?エポンはアンジェストロになれる、自身のバディだから一緒にいたわけじゃないラパ?そもそもあの日、どこにいたラパ??」


 ラパンの問いにエポンは再び何とも思っていない様な雰囲気で、あっけらかんと答える。


 「えっとぉ~ちょっと前に散歩してたらユズキに出会ってエポぉ~。アンジェストロがどうとかは知らなかったエポぉ~。変身した日はぁ~偶然あそこの池に遊びに行っていたエポぉ~。そうしたらぁ~、ユズキを見つけたからぁ~話しかけたらぁ~急に変身してぇ~ああなったエポぉ~」


 「ぐぬぬ……!マイペースに話し過ぎてわけわからないラパぁ!」


 「え、えっと、何時かは知らないけれどバディかどうかとかは関係なく柚希と出会って…偶然近くにいたから、校外学習の日に変身できたって事……よね?」


 「そうだよぉ、ただ急に変身したからぁ、ビックリはしたよねぇ」


 そりゃあそうだと、ミランが笑うとラパンは彼の胸毛の中にしまい込んでいた”星の輝き”を取り出してエポンに持たせる。

 エポぉ?と石を受け取ると、黄海は「綺麗だねぇ」と近づく。

 すると”星の輝き”は、黄色に強く輝きだした。

 それはつまり、紛れもなく黄海とエポンがアンジェストロのバディだと示している。


 「エポぉ~」


 「おぉ~……綺麗な光だねぇ……」


 「呑気に言ってる場合じゃないラパ!!あの日、偶然でも変身してラパンたちにバレないで帰った理由を聞きたいラパ!」


 ラパンがそういうと、エポンの表情は急に曇り始めた。

 そして、ミランと明瀬と薫はラパンが聞いた内容で、ようやくラパンが何に怒っているのかを理解した。

 今日、尾行すると言い出したのは明瀬だが、そもそもエポンに何かあると言い出したのはラパンだ。

 あの昼ご飯の時、とても激しい感情を見せていた。

 今日もエポンに話しかけた時も、語気を強くして問いかけていた。

 この黄色のアンジェストロを探していた時、エポンに対してラパンはずっと苛立っていた様だったのだ。


 その理由が、先ほどラパンが言った”なぜコッソリ帰ったのか”という事だった。


 「結構適当なところはあるけれど、責任感は人並み以上にあるラパンだから、アンジェストロに変身できるってわかったのに何も言わなかった事が納得いかなかったミラね……」


 古くからの知り合いのミランは、ラパンの性格を言いつつ怒りの理由をまとめた。

 明瀬も薫も、ラパンの責任感が人並み以上、適当な所がある、という所にピンときていなかったが、まあそれはまだ2人の人間とラパンが性格を理解できる程の付き合いがないからなので、仕方ないといえる。

 バディである薫でさえ、好きな物は林檎くらいしかよくわかっていない。絆はとても深いのだが、案外さっぱりとした関係だったりするのだ。


 「アンジェストロの力は妖精界を救う力ラパ!ひいては人間界を救う事にもなるラパ!!にもかかわらず、何で何も言わなかったラパ…結界内でイブニングが近くにいた時は仕方が無かったかもしれないけれど、その後にはいくらでも話せる機会があったはずラパ!何で、教えてくれなかったラパ!」


 ラパンは心の内に秘めていた思いの丈を、全てエポンにぶつける。

 その光景を、薫たちと黄海は静かに見守っていた。

 そして当のエポンは、少々俯き加減になっていた。

 先程までのあっけらかんとした態度はしていない。


 「……ないエポぉ…」


 「ラパ?よく聞こえないラパ」


 「エポンは戦いたくなんてないエポぉ!!」


 「ラパ!?」


 まさかそこまで大声を出されると思っていなかったため、ラパンはエポンの声に押されて後ろに転がってしまった。

 ラパンは急いで跳ね上がって、立ち上がるとすぐに言葉の真意について聞いた。


 「戦いたくないってどういう事ラパ?……確かにカオルみたいに戦う事が性格や心に合っていないって事もあるとは思うラパ…、でも事情が全く違うラパ。カオルは本来戦わなくてもいい人間界の住人で、エポンはイブニングの侵攻を受けて早く助けなくてはならない妖精界の住人ラパ。カオルはできるなら戦わない方がいいけど、エポンは戦う力があるのなら、戦うべきラパ!」


 「……ラパンはそういう風に考えられるエポぉ~……でも…でも……エポンはぁ……エポンはぁ……」


 おろおろしながらも、中々言葉が出てこないエポン。ラパンは行動にこそ表していないが、イライラしているのが空気感で伝わってくる。

 それを憂いたのか、黄海が会話に入って来た。


 「エポン。ゆずたち、話し方が似ていたから仲良くなれたよねぇ?」


 「エポぉ~?」


 急に割り込んできた黄海に戸惑いつつも、ラパンは話の動向を見る事にした。

 ただどちらもゆっくり話すので、とてもマイペースに話が進んでいく。


 「ゆず、物事の難しい所を簡単に考えたりぃ、言い換えたりする事があるんだぁ。それがねぇ、絶対にダメというわけじゃないとも思うんだけどぉ、決して良いとも言えない癖だって自覚してるのぉ。でねぇ?もしかしたらエポンとゆずそういうところも同じなのかもってぇ…そうなのかもしれないってぇ…思うんだぁ」


 「……エポぉ~……」


 「だからぁ~、ちょっとづつでもいいからぁ、お友達に簡単でもいいからぁ、答えてあげてぇ?」


 微笑みながらエポンにそっと手を当てて話した。

 するとエポンは、声にならない声を出して急に芝乃川に飛び込んで泳いで行ってしまった。


 「あぁ!エポン!どこ行くラパ!」


 静観していたラパンが、川上へ上っていくエポンの背中に叫んだ。

 しかしエポンはそんな声に耳を貸す事なく、そのまま河川敷から去っていってしまった。


 「エポン……」


 黄海は心配そうな声で呟き、エポンが行った先を見つめた。

 はぁ……と、ため息をつきラパンは、黄海の方を向く。

 そして一瞬、ミランを見て頷く。

 ミランも頷く。

 何かを話そうとしているようで、相互確認をしたのだ。


 「どうしたの、ラパン?」


 ラパンの不思議な態度に、薫は困惑していた。

 明瀬は真面目そうな空気に、腕を組んでラパンを見つめている。


 「ユズキ、ユズキはどれくらいエポンのことを知っているラパ?」


 「エポンの事ぉ?う〜ん……そういえばぁ、詳しく聞いたことはないかもぉ〜」


 顎に手を当て考えるが、何も頭に浮かばなかった。

 薫はラパンとミランの事を、明瀬はミランの事を……どういう思いで戦っているかは知っている。普段の過ごし方なども。

 さっぱりとした関係と言ったが、過去の事を詳しく話そうとしない妖精たちが人から見てドライに見えるのだ。

 だが、黄海とエポンは時々会う友達くらいの関係性である。

 更にエポンは、他の妖精2人以上に自分の事を喋らないのだ。

 黄海は名前と妖精界からきた鯱の妖精という事しか知らないのだ。


 「ユズキの手首にアンジェストロに変身するための腕輪が無いのを見るに、本当に偶然ミラクルで変身できたんだろうって思うラパ。でも変身できたなら2人は相性がいい…バディなんだって事ラパ。さっき”星の輝き”もそれを証明していたラパ」


 ラパンの言葉に、黄海は静かに頷き聞いていた。


 「ラパンは、妖精界の住人で妖精界を助けたいラパ。勿論、人間界の人たちを巻き込むっていう事に責任も感じているラパ。……それでもラパンは今も氷漬けにされている妖精たち、女王様も…助けたいラパ。もしエポンに、ユズキに力があるのなら……力を貸して欲しいって思うラパ……」


 「そっかぁ…」


 「さっきはラパンが怒っちゃって、エポンには嫌な思いをさせちゃったラパ……。だから、もしユズキさえよければ、エポンを説得してほしいラパ…」


 エポンを説得してほしい。それはつまり黄海にも、アンジェストロとして戦ってほしいという意味であった。

 黄海は少し思案してから、ラパンの頼みを受け入れる事にした。


 「わかったぁ、やってみるよぉ。エポンの事心配だしぃ、それにぃ、ゆずに何か誰かのためになる力があるならぁ、妖精さんたちの力になりたいもんねぇ」


 黄海の言い方……というか、話し方でラパンは少しこれからいう事を躊躇いかけるも、とにかくもし、黄海がエポンの力になってくれるのならと言う思いで口を開いた。


 「さっきユズキがエポンに言った事は大まか正解ラパ。エポンは昔から良い言い方をすればマイペースでのんびり屋で、悪い言い方をすれば物事を深く考えない適当な性格だったラパ。その性格は妖精界が滅ぶ時すら変わらなかったラパ」


 「滅ぶ時もってどういう……?」


 明瀬が苦虫を嚙み潰したような顔をしているラパンを見ながら、言葉をかける。


 「エポンは世界が凍らされていく中、家でボーっとしながら日向ぼっこをしていたラパ。もう寒くなってきていたっていうのにラパ」


 「へぇ、それはぁ…どうしてぇ?」


 黄海はゆっくりと、質問を投げた。


 「エポン曰く、いつかそんな日が来ると思っていた…とか言ってたラパ。この町に来てからは少しは一緒にいたけれど、カオルと出会ってからは殆ど一人で家にいるか散歩するかで…妖精界を助けるって考えが無いラパ」


 「それはぁ……筋金入りって感じぃ…だねぇ…」


 「そうラパ。筋金入りラパ。例に挙げられるのはそういう人生の中でも特に危険な時だけじゃないラパ。エポンが買い物を親に頼まれた時は、買いに行く途中でやめて家に帰って来たなんて事もあったラパ」


 「す、すごいねぇ……」


 エポンのあまりにもマイペースなエピソードに、共通点があるといっていた黄海も流石に戸惑いを隠す事が出来なくなってきた。


 「それでも、エポンと組んでくれるラパ?自分に何か危険が迫っても何かしら理由を付けて諦めちゃうかもしれないラパ。責任感も無いから、これからも頼まれた事を平気で投げ出したりするかもしれないラパ。……それでも、エポンと一緒にいてくれるラパ……?」


 「もちろん~、だってぇ、エポンはゆずの事助けてくれたんだからぁ~。きっと心のどこかではぁ、ラパンちゃん?たちと一緒に戦いたいって思ってるんじゃないかなぁ。ゆずは戦うっていうのが、友達を守る事にもなるからぁ、別にいいんだけどねぇ」


 黄海はラパンが心配そうに問いかけるものだから、これ以上心配させない様に即答でエポンと一緒に戦うという意味で返答した。

 そして薫からは、エポンに助けてもらったってどういう事?と聞かれる。


 黄海は2年生の初日の放課後、買い物帰りにこの河川敷を歩いていた時、芝乃川に流され溺れている野良猫を見つけ助けに川に飛び込んだ。野良猫は抱えられたが、今度は黄海が地面に足がつかず水の流れに押されて、自分が溺れてしまった。

 それを助けてくれたのがエポンだった。服の一部を引っ張って岸まで引っ張っていってくれたのだ。エポンのおかげで猫も黄海も無事だった。

 それから、エポンとの交流が始まったのだという。


 「な、なるほど…確かに勇気がある様に聞こえる話だね…」


 「でも、エポンがそんな事をするなんてミラ……驚きミラ……」


 「人間界に来て、心変わりしたラパ…?」


 「妖精たちがそこまで言うなんて…余程、故郷じゃのんびり過ごしていたのね…」


 素直に感動する薫とは裏腹に、妖精たちは自分たちが知っているエポンがしなさそうな、行動に驚いていた。

 そして、黄海はエポンが泳いでいった、川上の方に視線を移し、何かを決意した目をする。


 「じゃぁ、ゆずはこれからエポンを追いかけるねぇ、皆も来るぅ?」


 そう、逃げてしまったエポンを追いかけるのだ。


 「もちろんだよ、黄海さん!エポンが戦うかは置いておいて、ラパンとちゃんと話し合った方がいいと思うし…当然黄海さんともね!」


 「右に同じよ。ミランたちって一緒に逃げて来た3人組なんでしょ。ならできる限りでも仲良くした方がいいと思うわ」


 「ミランは先に空から探してみるミラ?」


 「いや、何があるかわからないから、アオイと一緒にいた方がいいラパ。あ、ラパンも一緒ラパ!」


 「うふふ…じゃあ、行こ~!」


 黄海はそう言い、素早く河川敷の上まで駆け上り、川上の方へ走った。

 4人もその後を急いで、追いかけていく。

 

 (今日はずっと、誰かの後を追いかけてるなぁ…)


 薫は走りながらそんな事を考えていた。


 一方エポンは、ラパンから言われた事、黄海から言われた事が頭の中でグルグル回って、もう何が何だかわからない!という混乱状態になってしまっていた。

 そして一心不乱に川上へ川上へと泳いでいた。


 それを上空からイブニングが冷たい瞳で見つめている事も知らずに。

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