第4話 さらば薫!?ラパンの思い!!
薫が公園の森でラパンを捜索していた頃、ミランは商店街の門の前にいたラパンに声をかけ、今回の家出の理由を問いただしていた。
ラパンはミランからの質問に抽象的な言葉で返答していたが、遂に「カオルが戦えない」と話した。
「カオルが…?どういう事ミラ、昨日あんなに勇敢に戦ってたミラ!」
「勇敢なのは間違いじゃないラパ…でも、でもでも、本当はそうじゃないラパ。アンジェストロに変身する前に言っていた、戦うのは嫌っていうのが本音ラパ…」
「本音って…何でそんな事わかるミラ?戦うのが嫌って、そりゃそうかもしれないけれど…何も言わないで出て行くほどの事ミラ?それに、昨日だってカオルはこれからもよろしくって言ってたミラ」
ミランは昨日の事を思い出しながらラパンに話す。アンジェストロに変身する前の怖がっていた薫、変身してソル・アンジェになって戦っていた薫、そして戦いを終えて爽やかな表情でラパンと握手をする薫…確かに最初は自分たちの声も聞こえないくらい恐怖に支配されてしまっていたが、ラパンと一言二言話した後はもう獅子奮迅の活躍だったと、ミランは振り返る。
相手の攻撃を防ぎつつ、相手を確実に倒せる場所まで誘導し浄化。ラパンが戦えないという事の意味がまだミランにはわからなかった。
「…そこまで振り返れば、ラパンじゃなくてもわかるはずラパ。もう一度、ソル・アンジェの戦いを思い出せば、何が無かったかがわかるはずラパ」
「思い出せって言われてもミラ…怪物のパンチやキックをフェアリニウムでできた盾で防いだり…いなしたりミラ……?……あっ」
もう一度振り返れと言われて、振り返っていたミランは、とある事実に思い至る。
そう、それこそラパンが言う、薫が戦えないという意味なのだ。
「もしかして、一回も攻撃してない…ミラ?相手からの攻撃を全部防ぐかいなすかして……浄化技くらいしか自分から動いてない…ミラ?」
ミランの言葉にラパンは静かに頷く。
そう、昨日の戦いの際、薫は一度もその手で怪物に攻撃を行わなかったのだ。
「さっき言った、誰かを傷つける事を心の底から嫌がっているからラパ。例えそれが自分を傷つけてくる様な異形の怪物であったとしても、攻撃をするのを躊躇うラパ…実際変身してすぐの時に攻撃をしようと意識してたラパ…でもすぐに止めたラパ、心の奥から淀んだ黒い何かが溢れそうになったからラパ。合体しているとカオルの心も抽象的だけどわかるラパ。あれはただの恐怖ではなかったラパ…あの時感じたのは、嫌悪感という言葉では言い表せないほどの暴力への忌避感だったラパ…」
攻撃を止めた時に感じたという薫の心。ミランは朝にラパンがいなくなったと気づいた時に薫が同じようにラパンの心が伝わって来たと話していた事を思い出す。
今朝聞いた時、ラパンの心は故郷を助けたいとかアンジェストロになれた嬉しさを感じられた…ミラン的にはラパンがそのように思っていただろうと想像できるし、きっと大きく間違っているという事は無いだろうと思う。
ではラパンが感じた黒い淀んだ暴力への忌避感もまた、大きく間違っていないのだろうか?
ではラパンがいなくなった理由は、薫が自ら戦おうとしないから?
ミランはそちらの方が違和感がある考え方だと、自身の考えを否定する。
「ラパンはそれを感じて…妖精界を助けられないから…カオルから離れたミラ?」
違うとわかっていても聞きたかった。彼女からも否定してほしかったのだ。
ラパンはミランの願い通り、首を横に振った。
よかったとミランは安堵する。彼にとってラパンは適当な性格をしているが、決して非情な妖精ではないと信じているからだ。
「合体した時に感じたのは黒い感情だけじゃないラパ。心の奥底から溢れていたのは…ポカポカとしてる、あったかくて気持ちの良い…桜色の光の感情だったラパ……。何度も言っている通り、カオルは人を傷付けるのを嫌がるラパ。怪物でも…妖精でもラパ。ラパンは……そんな優しい人を……意志を持って拳を握ろうとするだけで、忌避感を感じるくらい穏やかな人を……他所の世界の争いごとに……戦いに巻き込んでしまったラパ……」
ラパンの目からは止めどなく涙があふれていた。
大きな瞳が乾いてしまいそうなくらい、大粒の涙を流しながら、ラパンは優しい薫をいつ終わるのかわからない、過酷な戦いに巻き込んでしまった、”星の輝き”が選ぶという事をどこかスーパーヒーローを見つけるくらいにしか捉えていなかった……本当は争いに関係の無い人の才能を見つけ出し、巻き込んでしまうかもしれない…危険な石だったんだという後悔を話した。
「ラパン……そんな風に考えてたミラか…」
「戦いが終わった時の安堵した気持ちも、とっても大きかったラパ…だから、昨日の今日だけど…アンジェストロのコンビは解散ラパ…」
そう呟くラパンの顔はとても寂し気で、本心からそう言っていないのは誰の目からも明らかだった。
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