エピローグ 日常 表
まるで流行のアニメを見た翌日の小学生のように、
「あのな
「ちっとも
あんな事があった直後ではあるが、学校が消えてなくなるわけもない。校舎の時計は何事も無かったかのように時を刻み、何の
その日──昼休みに入ったところで、帝人は第一校舎の屋上に向かった。
街で見るのと何も変わらない空を見上げながら、帝人はそれが故郷とも同じ空だという、当たり前の事に気付く。不思議なもので、あれだけの非日常を体験した後だというのに──彼の心の中には不思議な
事件の翌日、
更に驚くべきことに、
隣の席に座った美香は、帝人に一言だけ「ありがとね」と告げ──休み時間は誠二のもとにべったりとくっついている。
「くそう、あの子が誠二の彼女だったのか! 何てこった! あれなら確かに愛に生きても不思議じゃねえッ!」
二人の様子を見かけた
ただ──それを契機に、美香は杏里とは一緒に行動しなくなったようだ。休み時間になるたびに、教室の隅に一人でぽつんと座っている。帝人はそんな彼女の様子を複雑な思いで見守っていた。
彼女にとってこれが良かったのかどうか──それは彼女自身にしか
──だが──本当にそうか? 自分にはどうやっても解らないのか? 結局、人は人の心など解らないのだろうか。
『進化し続けるしかない』
──
自分が見ていたのは上だったのか下だったのか──今となってはどちらか解らない。いや、今でもそれを見続けている事は確かだ。ただ、少しだけ自分の前と、後ろを振り向く
帝人は教室の窓から見える60階建てのビルを
完全な非日常を体験した後に残っているのは、充実感と虚無感を合わせた奇妙な感覚だけだ。
──今なら、きっと素直に現実を見られる。受け入れられる。
自分に素直になろうと考えた時に、彼はまず自分が何をすべきかを思いついた。
そして、彼は屋上に居た。聞いた話では、彼女は毎日ここで昼食を取っているらしい。
あれだけ
それがまさか、こんなことで
ネット上では、誰にでも簡単に声をかけられるのに──
彼は
──同じクラスの
少年が
少年が杏里を先に
少年が正臣を
少年が正臣にローリングソバットを喰らうまで、あと50秒
少年が杏里を喫茶店に誘うまで、あと73秒
少年が杏里にお茶を断られるまで、あと74秒
少年が杏里に屋上での昼食を誘われるまで、あと78秒
少年が杏里に恋をするまで、あと────
少年が杏里に告白するまで、あと────
チャットルーム
一日が終わり、
──まあ、当然かな。
帝人は苦笑しながら、ほぼ毎日参加しているチャットルームを
──この人も甘楽さん──
────
【こんばんわ】
[ばんわー。ちょっと
【どうもです、今日は
[あー、寝不足?
【ええ、ちょっと】
[
【甘楽さんは……来るんですかね】
[あ、すんません、何か急用が入ってしまったみたいです]
【あれ、そうでしたか】
[すいません、お先に失礼します]
【はいはい、お疲れ様です】
────セットンさんが退室されました────
「悪いね、お楽しみのところ」
セルティの背後で、白衣の男が申し訳なさそうに笑う。
『問題ないよ』
軽い調子でキーボードに文字を打ち込むと、セルティは勢いよく
「そいつは結構、今日の仕事は結構ヤバめらしいから気を付けてよ。内容は……」
仕事の依頼を受けると、セルティは音も無く部屋を後にする。
そして今日も──セルティの一日が始まった。
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