鬼ごっこ

 【模倣者デミウルゴス】のヘイトが良い感じにこちらを向いて、4体とも私の背中を追ってくる。

「私はこっちだよ~【空中跳躍】」

 【模倣者デミウルゴス】との距離を空中跳躍でもっと離してみる。すると 【模倣者デミウルゴス】も空中跳躍を使って、一瞬で距離を詰めてくる。

「よっと」

 空中跳躍の連続発動で急制動を行い、【模倣者デミウルゴス】の肩に着地することで連続使用カウントをリセットする。

 トキハちゃん達の方を見れば、数的劣勢ではあるものの、どうにか膠着状態に持っていけてはいるようだった。

「龍鱗剣…は使えないんだったね」

 つい龍鱗剣のノリで使おうと思っていたけれど、そういえば今手に持っているのは龍鱗剣じゃなくて雷刃剣だった。どうりで空中跳躍の動きがピーキーだと思った…。

「さてさて、最適化して捕まえてごらんよ~」

  【模倣者デミウルゴス】の一体が、私の進行方向に空中跳躍で合流する。

「丁度いい足場を…ありがとね」

 【模倣者デミウルゴス】の胴体を蹴って空中跳躍をリセットする。まだまだ飛べるよ~。

「今度は…全員で囲って来るのね…」

 四方八方を【模倣者デミウルゴス】に囲まれ、逃げ道は上か下だけ。上は天井が近いからちょっと逃げにくいかも?

「…ま、でも君たち空中跳躍はそれで4回目だよね」

 私はまだ滞空出来るけど、【模倣者デミウルゴス】の空中跳躍はもう4回使用されている。その勘に着地を挟んでいないから…。

「…お…っとぉ」

 【模倣者デミウルゴス】が【模倣者デミウルゴス】を蹴落とし、空中跳躍をリセット、滞空していた私に向かって飛んでくる。

「だから、それは丁度いい足場にしかならないんだよね~」

 【模倣者デミウルゴス】達の空中跳躍はかなり扱いが上達している。けれど、捕まえてくるときに動きが直線的になる所は一向に治る気配を見せない。

「―――よっと。そんなだから足場にされちゃうんだよ?」

 …でも、いつまでも逃げる側っていうのも…なんだか面白くないよね~。

「…じゃ、攻守交替と行こっか?【空中跳躍】」

 飛び上がった【模倣者デミウルゴス】と入れ替わる形で地面に向かって空中跳躍を発動、さらに着地際に空中跳躍をもう一度発動して減速、姿勢を維持したまま着地する。

「恰好の的だね~。【剣術・超加速ヘヴィ・アクセラレート】」

 雷刃剣だから速度はそれなりに乗るはず。地面を蹴って飛び上がり、またもすれ違い様に【模倣者デミウルゴス】の1体の鎧を切断する。

「【空中跳躍】」

 1回目の空中跳躍で上方向への速度を殺し、2回目の空中跳躍で横方向への速度をかける。

 右隣の【模倣者デミウルゴス】に着地して、もう一度空中跳躍。2回目から3回目の間で速度の損失は殆ど無し、3回目で雷刃剣との相性もあり一気に加速する。

「せいっ」

 そのまま【模倣者デミウルゴス】の一体のコアがある位置に剣を突き立てる。【模倣者デミウルゴス】の装甲自体は結構固いけど、雷刃剣自体龍鱗剣よりも遥かに鋭いのと、速度が乗っていたのもあって、容易にコアを貫通した。

「まず1つ~。【剣術・エアスラッシュ】、【剣術・ソニックブレード】」

 エアスラッシュにソニックブレードを重ね掛け、地面にそれを撃ちこむ。発生した衝撃波で飛んできた【纏盾シールダー】を踏みつけて空中跳躍をリセット。

超加速ヘヴィ・アクセラレート再使用まであと1分…思いの外長いなぁ。仕方ないや」

 雷刃剣を鞘に収納、もう一方の鞘から龍鱗剣を取り出す。刀身はフレアブレードの使い過ぎで青っぽい色に変色している。

「【剣術・フレアブレード】」

 ま、まだまだフレアブレードは使うんだけどね。龍鱗剣には悪いけど、もうちょっとだけお仕事してもらうよ。

「【空中跳躍】」

 炎を纏った龍鱗剣を片手に空中跳躍で飛び上がる。雷刃剣から持ち替えたおかげで、少し速度は落ちたけどその分制御しやすいいつもの速度域になった。

「はーいどっこいしょっ」

模倣者デミウルゴス】の足を目掛けて龍鱗剣を振る。

 耳に刺さるような甲高い金属音を響かせた龍鱗剣は、ボロボロの刀身にさらに亀裂を入れながらも【模倣者デミウルゴス】の脚部の防具を切り裂いた。

「あっちゃぁ~………」

 修理費が高くついちゃう…。刀身が完全に折れてないだけまだマシだけど…。

「もうあんまり使わないほうが良いかな…」

 赤熱状態の龍鱗剣の刀身が冷えると、亀裂はさらに深くなり、剣の幅の約1/2まで亀裂が入ってしまった。

「これ以上は流石に…」

 いや、使えないわけじゃないんだろうけどね。…けど修理費用が高くついちゃうし、正直この状態の龍鱗剣で【模倣者デミウルゴス】と相手するのもまあ無理な話ではあるし。

「しょうがない、今回は雷刃剣で我慢するかぁ~…」

 あって良かったスペアソード。帰ったら一番最初に龍鱗剣を修復しなくちゃね。

 雷刃剣…龍鱗剣の使い勝手が良すぎてあんまり使ってないんだよねぇ~。最初の方は雷刃剣もぜーんぜん1軍だったんだけど。

「さて、そろそろ地上で鬼ごっこしようか」

模倣者デミウルゴス】3体の攻撃をひらりひらりと躱しながら着地する。次に地面スレスレの空中跳躍を発動して、片足を切り落とした【模倣者デミウルゴス】に接近する。

「コアは…この辺かな?【剣術・ソニックブレード】」

 コアのある胴体部に叩きつけるように雷刃剣を振り下ろす。遅れてやってきた衝撃波で【模倣者デミウルゴス】の鎧にほんの少しだけヒビが入った。

「…このくらいのヒビが入ったら…」

 雷刃剣を突き立てると、鎧が大きな音を立てて貫通する。

「2つ目…っと」


――――――――

作者's つぶやき:リリィさん強い。リリィさんさいきょー。

…あの、本当に書くことがないんですけど。…そうですね…。龍鱗剣はトキハさんやタリスタさんの武器と同じような自己修復が付いていない…中盤の武器くらいの性能です。

まあランク35~45もあれば手に入る武器ですので、使ってる人はそこそこいますが、ランク60辺りから使われなくなる印象な気がしますね。

それでトキハさんとタリスタさんに互角で渡り合うってなんなんだよ本当に…。

――――――――

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