【ワルキューリァ・オンライン】案内人のダンジョン攻略記

ますぱにーず/ユース

【ワルキューリァ・オンライン】の案内人

 大々的に紹介もされず、爆発的にヒットもせず、ただ緩やかにユーザー数を増やしているゲーム、【ワルキューリァ・オンライン】。

 ダンジョンを作り、攻略されないよう敵などを設置する魔物側、それを攻略する人間側に分かれて、自分のダンジョンや武器・防具のランクを上げていくゲーム。

 レビューを見ていると、しばしば『RPGの皮を被った周回ゲー』という声が上がっている。実際その通りだとは思う。RPPロールプレイポイント、ダンジョンをクリアした時にスコアに加算されるそれは、ロールプレイの没入度に応じて変化するポイントの事だ。だから、正直なにもせず10回周回より、役になりきって1回クリアの方が遥かに報酬が良い事のほうがよくある。

 ダンジョンで得られる報酬は、宝箱からの武器防具、ダンジョン内部にたくさん存在する魔物を倒した時に得られる素材、あと、ポイント。

 武器防具はそのまま使える場合もあれば、古びている、錆びているなどして、修理が必要だったりもする。

 素材とポイントは、それらを使って武器防具を作ったり、より強力な物にすることができる。

 魔物側も、プレイヤーがダンジョンの内部で倒されるなどすると、ポイントが手に入って、強力な魔物を召喚できたりもする。あともちろんRPPロールプレイポイントは魔物側にも適用される。


 そんな【ワルキューリァ・オンライン】で、私は案内人をやっている。いや、運営側の人間とかじゃなくてね?普通に案内人。…まあいわば初心者のアシストだったり、新設ダンジョンの構造を全部把握して、攻略者に付き添ったりして、所謂オペ子ちゃん的な役回り。

 依頼料とかは貰わないけど、実は案内のおこぼれで報酬を少しもらえるから、それを使ってかなりいい装備を持ってたりもする。

 …けど、武器から防具一式まで全部そろえる事は無理。自分で倒さないと手に入らないような素材が必要な時だってあるし。もちろんない訳じゃないよ?私だって、時にはダンジョン攻略をしたいときだってあるんだしさ?

 そんなわけで、私はゲーム内でちょっぴり有名になっている。【ワルキューリァ・オンライン】のサイトに『最初はこの人に頼るべし』って私の名前が書いてあるし。


「ん、君、見るからに初心者っぽいね」

「あ、こ、こんにちは…。あと…はい、初心者です…」

「うん。初めまして。私は案内人のリリィだよ、君は?」

「あ…案内人…って、もしかして…サイトで紹介されてる…?」

「ん?そうそう。私がその案内人」

「そ、そうなんですね…、えっと、僕はヌートラって言います…」

「そっか、よろしく」

 明らかに緊張しているヌートラくんの緊張をほぐすために、とりあえず握手をする。

「えっと…その、案内をお願いしても…いいですか?」

「うん、いいよ。…それじゃあ、ここは詳しく見て回った?」

「い、いえ…まだです」

 ここ、つまりプレイヤー達の拠点、前哨基地。ここから、1~10のランクで難易度分けされたダンジョンに行ったり、ダンジョンで得た装備の修理、装備の製造、強化などが行える。

「それじゃあ、先にここを見て回ろうか」

「はい。お願いします」


「ここが鍛冶屋、装備の製造と強化ができるところだよ、ダンジョンに潜って素材とポイントが集まったら、ここに来て色んなものを作ってね」

「分かりました!」


「次にここが、交換・錬金所。ポイントを使って素材を手に入れられるけど…ここで交換するくらいならダンジョンに潜ったほうが早いかもね」

「錬金と交換は何が違うんですか…?」

「ん?入手方法の違いかな。交換はポイントと引き換えに即時手に入るけど、錬金はポイント、素材を放り込んで数時間かからないと手に入らないから。当然。ここでしか手に入らない素材や武器もないことは無いんだけどね」

「なるほどです」


「そして、ここが修理場。ダンジョンの宝箱には、錆びた装備が入ってる事があるの。錆びてたらそのまま使えないから、ここで修理して使えるようにするんだ。錆びてる方が使うために一手間かかるけど、その分強力なものが手に入りやすい…要するにガチャ要素だね」

「そうなんですね」


「最後、ここからダンジョンに向かえるよ。難易度は1~10まであって、高ければ高いほど攻略は難しくなるけど、その分手に入るポイントも素材も多いし強い。逆に低ければ低いほど、ポイントも少ないし素材も少なく弱い分、攻略しやすいんだよね」

 まあ…見た目はこんな中世の村みたいな所にそぐわない超ハイテクそうなホログラムだけど…。魔法ってことでいいのかな。

「…あ、そうだ。最後にRPPロールプレイポイントの説明だけしておくね。簡単に言うと役になり切ったほうが報酬が美味しくなるよってだけ。今の内にキャラ付けしておいたらいいかもね」

「その、リリィさんは…?」

「…私はピエロみたいなものさ。いつも演技をして、偽っているだけ。本当の私はもっと…醜いい、かも?って、まあそれは良いとして、おすすめはこのダンジョンだよ。運営が公式に出してるチュートリアルのダンジョンだからね」

「じゃあ、それに行きます」

「分かった、それじゃあ、行くよ」


――――――――

作者's つぶやき:案内人、正しく東海さんにぴったりな職業…!

過度に目ただず、それでいて全くの無干渉という訳でもない…ちょうどいい立ち位置だぁ。

それはそうと、東海さんは案内人というだけあって変に強キャラ感がある…。

中身は人畜無害…であってほしいよなぁ。

ここから3作品並行で更新すんのかぁ。頑張るぞぉ。

――――――――

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