第3話 疑心暗鬼の男とナビと

「……で? ナビ? 進捗は?」

『———間違いありません。 データの受信を完了致しましたが、アレは紛れもなく宇宙戦闘用基地母艦ガーンデーヴァです。 最終データも”あの戦闘”を最後に記録が止まっていました』


…まじかよ。

目の前のディスプレイに表示された映像をマジマジと見つめる。

見てくれは俺が前世で搭乗していた”母艦ガーンデーヴァ”そのもの、しかし―――


「それにしても、かなり劣化しているな。 動いてるかどうかも怪しいぞ?」


形が崩れているという訳ではないが、外装にかなりのダメージを負っている事が映像でも確認できる。


『データの記録が存在していなので、詳細は不明です。 が――――推定数億年は整備されていない状況と言っても過言ではないでしょう』

「数億年…? ということは、こいつは…数億年もこの世界の宇宙そらで漂ってという事なのか!?」

『えぇ。 間違いありません。 もはや、戦艦としての機能は皆無といえるレベルです――――しかし、惑星軌道上を回り続けているので”衛星”としての活用は可能かと思われます』

「衛星ねぇ…はぁ…どういう訳か…異世界に来たらこいつが居たと。 偶然だと思うか? ナビ?」

『偶然―――というには、あまりに出来過ぎた話ではありますが。 そもそも私達が転生している事自体、異例ですからね―――なんとも言えないというのが、正直な感想です』

「はぁ…とはいえ、こりゃ―――」

『えぇ。 生きろという事なのでしょう。 ちょうど、ガーンデーヴァから目的地の指定が来ましたよ』

「———は?」


そう告げたナビはディスプレイ上に赤いマーカーを表示させた。

ここから500m先か…


「わざわざ目的地の指定までしてくれるなんて、お優しい事! けっ! まぁ、文句ばかり言ってられねぇか…ナビ! 頼んだ」

『了解致しました。 周囲のスキャニングを行いながらナビゲートを開始致します。 ですが、お気を付けください。 現在の機能では周囲15m程の熱源しか感知が出来ません。 現状”普通の人間”であるマスターでは…』

「安心しろ。 最悪―――化け物の懐に向かって飛び込んでやるから」

『おや、まだあきらめて居ませんでしたか』



――――――――それから数分後。


「ぶえっくし!!! ぶえっくし!! はぁ~…きっつ…」


俺は魔物花粉症に襲われている最中であった。

いや、ふざけんなよ! 異世界来てまで花粉症があるなんて聞いてないんですけど! 異世界って花粉症とか無いんじゃないんですか!? 前世では―――そうだった!!!宇宙そらには木や花なんで生えてなかったわ。


『異世界に来て早速花粉症にやられるなんて話。 聞いた事ありませんよ?』

「うるせぇ! あいつらがおかしいんだよ! 超人になって風邪もひかないからアレルギー反応もないんだろうよ!!」


え? なに!? 異世界来てまでアレルギーとか辛すぎだろ!


「で? 周囲に反応は?」

『今のところ、それらしきものは感知できませんね。 こういった場合―――普通は魔物の1匹や2匹に遭遇するパターンだと思うのですが―――』

「ラノベの読みすぎだろ」

『————えぇ。 どうやらそのようです』


と、そんなこんなで500m程移動した俺達、本当に何もなかったので安堵する俺と、少し残念がっているナビ。

何はともあれ、一安心といった所だろうか。


「で? あれは?」


森の中を歩いてきたつもりの俺だったが、目の前の光景を見て首をかしげる。

そこにはどうからどうみても森の一部だった場所が綺麗にくり抜かれ、綺麗な土の地面と空から降り注ぐ太陽の光。


その中心にはポツンと、この世界には似つかわしくない機械端末が地面に刺さっていた。


「なぁ、この世界って騎士鎧みたいな巨大兵器が日常的に存在する場所だと思うか?」

『だとしても。 これほど、自然豊かな場所に――――我々のよく知る素材で出来た機械端末が存在していると思いますか?』

「…だよな。 だとしたらあの化け物も一緒に居るはずだし。 まじかよ…”ブリュンメタル”製の機械端末だと?」


虹色に不気味に輝くそれは俺が最後に見た巨大地球外生命体の外骨格にそっくりな素材で出来た未知の機械端末。

ただ、問題はそれだけじゃない…このブリュンメタルは俺達の技術でも加工が不可能な程…途轍もない強度をしている物だったはず。


カンカン!


一度端末の外装に触れてみると、ブリュンメタルだという事が良くわかる。

非常に軽い音が鳴り響く…これだ。 これこそが、このインチキ素材特有の音なのである。


この素材は強い衝撃を受けると瞬間的に強度を増す…が、軽いダメージであればそのまま衝撃を和らげ受け流す―――こいつに何度苦しめられたことか。


ピピッ!


「ん!?」


ガチャン! キュイ――ン…

俺が触れた事が原因なのか、突如光を放ち始めた端末は待ってましたと言わんばかりに変形を始める。


「こ、これは…」

『なにかの管理コンソールでしょうか? なにやらディスプレイに表示がありますが―――』


そこにはこう書かれていた。


――――拠点ブリュンヒルドの起動を確認―――


ようこそ、異世界へ…宇宙そらからの来訪者よ。 

運命の歯車が捻じ曲げられ、不幸にもこのような世界へ来てしまった君への些細なプレゼントだと思って受け取って欲しい。


とはいえ、こちらもその運命を再び捻じ曲げた代償として君には数々の試練が待ち受けている事だろう。 

だが、安心してほしい。 

解放者よ、君ならばこの世界でも上手くやっていけるだろう。


検討を祈る――― 名無しの王より。


――――――――――――――――――――――――――


ブンッ!

画面が真っ暗になった。


『ジジッ…インス…トール完了…ジジッ……ローディ…ング中―――――』

「お、おい! ナビ!?」

『————拠点ブリュンヒルドの起動を確認。 これより7日後―――168時間後に魔物の群れが襲来する予定です。 防衛の準備をしてください―――尚、拠点管理コンソールが破壊された時点で拠点所有者である”須藤 真央”様の生命は停止致します。 ご注意を―――』

「—————は? 7…7…7日後!? えぇ?! お、おい! まて! ナビ! 何をいって!!」

『おっと、こいつはやられたぜ…』


―――――――――――――――――――――――――――――




―ブリュンメタル―

虹色に輝く怪しい結晶体。

まるで金属の様な光沢を放っているが、金属ではない。

非常に軽く衝撃に強い事から死骸をそのままシールドへと括り付け、応用する事もあった。



いよいよ登場、拠点管理コンソールとは!? 次回にご期待ください!

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