僕はまた失う

@answer124

僕はまた失う


ノブへ


さよなら、あの日の君

ずっとずっと別れからも

私を支えてくれた君。

記憶の箱庭の扱い方をまだ知らなくて、

あの夜の幸せを今も懺悔している。

若い君と私、見つめあった後、

あの日、私はきっと死んだんだと思う。

、、、、、、、、、


1

「ノブ。」

18歳になったばかりのユイの誕生日だ。ノブが祝っている。「俺さ、ユイのこと好きだ」


これはなんなんだろう、どんな気持ちなんだろう。ユイは思った。

気づけば、ノブを抱きしめていた。

かわりに、ユイが口を開くことはなかった。

それから、そういった関係は続いた。


「ノブってさ、将来はげそうだよね」

そんなことばかり言っては。ノブをからかっていたユイは、自分の気持ちを知る術はなかった。ただ凍りついたような心がそこにあった。

ノブは時々不機嫌そうな顔を浮かべたけど、ユイは言葉が止められなかった。



(ねぇ、こうして、あぁして)

ユイの要求は日に日に激しくなっていった。

ノブは、もう黙ってそれに従うしかなかった。



「別れよう、ユイ」


「わかった、二度と連絡してこないで」


18歳の時から交際が続いていた僕たちの最後の会話になった。あの別れから2年経った今、ユイの自殺未遂を聞くまでは。


ねぇ、なにがあったの?ユイ。

今ではしゃべることもできなくなった、と手紙をもらった日、僕から手紙を出せなかったことを、とても悲しく思う。


記憶の中でユイを探す。その旅は、その時から始まった。

僕は君に手紙を綴ろうと思う。どんな形になっても。


"君の微笑み 淡い微笑み 僕はまた失う"


久しぶりにあったユイは、もう僕をからかうことはなかった。

障害が残ったユイはしゃべることもできなかった。

もう抱きしめて、とも言っていない体がベッドに横たわっていた。

30才の夏だった。







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