見た目小学生、中身ジジイ

@noritaka1103

第1話 謎の仙人

「わしゃー、もー死ぬな」

末期のガンで今は病院のベッドに横になって寝ている。年齢的、体力的に考えてももう長くは生きられないのは、自分が一番よく分かっている。

ワシに家族は居ない。いや、厳密に言えば「先立たれた」といった方が正しいかもしれない。

妻はワシと同じ「ガン」で一昨年、帰らぬ人となった。そして、妻を追いかけるような形で唯一の子ども(息子)も事故で亡くなった。

だからワシに「家族は居ない」のだ。


ただただ、病院の天井を見つめるというなんともムダな日々を過ごす。

正直、同じ病室の入院患者さんの家族のお見舞いがうらやましい。自分のところ(ベッド)に来る人はだいたい病院の医師・看護師・清掃・食事配膳のスタッフさんくらい。


そんなある日、「仙人」と名乗る男がやって来て開口一番に「お爺さん、まだまだ生きたいよね?」と話しかけられる。

…怪しすぎる!そんな手に引っかからないぞ?

ワシの表情を見るなり仙人と名乗る男は「まあ、信じられないのも分かります。そういう反応だと思って説明書を持って来ましたのでお読みください!」


「このボタンを押すと若返ります。ただし、若返り年齢はランダムですので、あらかじめご了承ください」


「…一通り読んだが…なぁ?仙人さんと言ったかな?ワシが死ぬ間際のジジイだからって、その…馬鹿にしていないか?いくらなんでも、シワだらけで腰も曲がって末期がんのジジイが若返れるって都合が良すぎるよ!なんかウラがあるだろ?」


と言うと仙人は…


「そこ(説明書)に書いてある通り、若返りますからね。20代・30代って可能性もありますし、小・中学生に若返る可能性もあります。見た目だけで中身はさほど変わりませんけど…」


まあ、どうせ死ぬ運命なんだから成功しようが失敗しようが、どっちでもいい。成功すればラッキーだと思えばいい。

ということで、仙人から差し出された「ボタン」を一押しする。


…これといって変化はない。「失敗?」と思ったが、仙人は満足げにニコニコしている。

「明日になったら、効果が出ると思います!たぶん、成功です!」

と仙人が意味深なことを言い残して、病室を去る…

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2024年11月25日 13:00

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