第2話




 世界連盟との終戦を経て、俺は日常生活を取り戻した。


 

 あの戦いで俺は死んだことになっている。


 世界規模までに発展した一大決戦だったので、仕方のないことではあった。

 

 世界最強の中立機関が戦って敗けたなんて話が広まれば大混乱だ。

 嘘ではあるが世界連盟が『脅威』を討伐したという形で面子を保ち、『転生者レンジロウ』は死亡した扱いとする。


 そうすることで戦争は表向きには完結した。


 現在は「詠坂レンジ」という偽名というか略称で生きている。


 完全に姿をくらませて、極東に潜伏している状態だ。


 海外の暮らしも興味はあったが、やはり異世界日本とはいえ慣れ親しんだ国が一番だ。

 よく見れば陰陽師や魔術師やら異能者がちらほら、魔法少女なんかも見かけるが、そこは割り切っている。


 やっぱ多少のアレな事情があっても食事や娯楽、利便性は捨てられないよねって話だ。


 転生特典を使えば、そこら辺の都合はなんとかなりそうだが、なるべく自重している。



 いやもうね、死にたくないのだ。



 基本的に俺の転生と転生特典が騒動の原因である。

 

 流石にもうないとは思うが、悪目立ちして妙な組織に目をつけられたくない。

 やたらと黄金に輝く聖剣使いに、宇宙を股にかける巨大機動兵器使い、様々な変身形態をもつ怪人戦士、隕石を落とす天才魔術師や概念を操る魔法少女等々、そんなバケモノを相手と戦うような真似はもう御免である。


 一歩間違えたら普通に殺されるような相手ばかりだった。

 

 まじで勘弁してほしい。


 某スタンド使いの爆弾魔ではないが、平穏な生活がしたいのだ。


 過剰な富も、突出した名誉も要らない。

 

 ソシャゲとweb小説で時間を浪費できるような人生を送りたい。


 なので俺は転生特典を使って無双する気はない。

 むしろ全能力をもって騒がず目立たず、そこそこのモブとして人生を終える所存である。


 転生した直後は「2度目の人生ね.........ふっ、どーするかねぇ」なんて人生達観した感じに気取っていたが、戦争で殺されかけてからは俺の意見は真逆に向いている。


 人生何度目だろうが絶対死にたくねぇ。


 痛いのは無理です。


 面倒な人間関係からも解放されていたい。


 騒がず目立たず適度に人生をエンジョイしたい。


 だから俺は学生になったのだ。


 学歴が付き、かつ異世界世間の常識を学ぶことができる。

 おまけに選んだ学校は「異能持ち」の生徒が大半の場所だそうだ。転生特典持ちの自分も身を隠すのに最適じゃないか。


 正直天才だと思ったね。


 最初こそ躓いたが、なんだかんだ上手く行きそうだ。

 戸籍も身分もスマホでちょちょいと偽造できたし、案外悪くないスクールライフを送れそうだ。



 ____そう思っていた時期が俺にもありました。



 まあツッコミどころは色々あるが、とりあえず入学初日の同年代のセリフを抜粋しよう。



「お前を殺す(意訳)」


「屈しろ、殺す(意訳)」


「いい勝負をしよう、それはそれとして殺す(意訳)」



 面と向かって開口一番に笑顔でコレである。

 

 まあ冷静になれば『異能』が集う学園にマトモな常識があるはずがない。


 結果として俺は、魑魅魍魎が跋扈する魔境に足を踏み入れた。



 普通の学校にしとけばよかったと、死ぬほど後悔しながら。




 

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