圧倒的駄作シリーズ

@edamame050

「かえる」「うさぎ」「傘」

「かえる」「うさぎ」「傘」

 ウサギの柄の入ったこの傘は私のお気に入りだ。いつもの装備で家を出る。今日もこの都市を覆う雨雲が依然街並みの表情を暗くさせている。ひとたび繁華街に足を運べば空模様を反映させたような顔ぶれがそぞろと並ぶ。すれ違う人々はこれからもきっと晴れることを期待してない。教えてあげたい。晴れない空なんて無いことを。いつかは必ず太陽が私達を迎えてくれることを。

「みなさーん! 聞いて下さい! きっとそのうち晴れますよ!」

 私が精一杯声を上げて伝えても、誰も足を止めず淡々と進むだけ。誰に届かなくてもいいんだ。私は伝えたいことを伝えたかっただけなんだから。街路樹の下から跳ねたかえるが誰かの足に踏まれて死んだ。それでも誰も足を止めず前に進むだけ。無情なんだ。空はその様を見下ろして雨が追悼の意を表してるようだった。淀んだ空気が私の存在まで同化させてしまう前に踵を返してかえるに背を向けた。どうか安らかに。





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