第3話
「……ほんとに、すみませんでした」
「大丈夫ですよ。少しは気持ちが晴れましたか?」
二人は「居酒屋 宴」を出て、駅前広場にいた。
ベンチに腰掛けて水を飲んだ舞は、
「
「嬉しいですね。でも、無理はしないでください。僕にできることがあれば何でも協力しますよ」
「……深見さん、ずるいですよ……」
舞は再びぼろぼろと涙を零し始める。
慰めたつもりだった要は涙を零し始めた舞に焦り、動揺しながら再度声を掛けた。
「え、あ、大丈夫ですか……? ティッシュいりますか?」
こくりと首肯した彼女にティッシュを渡す。
いくばくかの時間が流れ、既に日付は変わってしまった。秋夜の冷ややかな風が火照った身体を冷やす。
「深見さん」
舞は不意に要の名前を呼んだ。
「あ、あの、今日は私の話聞いてくれて、ありがとうございました。きっと、私が話しやすいようにたくさん気遣ってくれたりしてたんですよね……、すみませんでした」
要としては「自分の思うがままに聞いたりしてこちらこそ申し訳ない」という気持ちだったので、謝られると若干いたたまれない。
「で、でもっ……、私の話を聞いてくれたのが深見さんで良かったと思ってます。深見さんは初めて会ったのに親身になって話を聞いてくれて、とっても嬉しかったです」
「……っ!」
そう言いながらはにかむ舞の表情は、要の心臓を跳ねさせるのに十分な破壊力を持っていた。
「い、いえ、突然話しかけたのに飲み相手になってくれて、こちらこそありがとうございました」
「ふふっ、話しかけてくれたのも、私を気遣ってなんじゃないんですか?」
先程とは異なるいたずらな笑みを浮かべる舞の表情もまた、要の目には魅力的に映った。
「そ、そろそろ帰りましょうかっ。寒かったり酔って気持ち悪かったりとかないですか?」
跳ねる心臓を落ち着かせるべく、要は無理やりに話を逸らした。
問いかけにこくりと頷いて立ち上がる舞を見て、要も立ち上がる。互いの歩幅を合わせて、未だ賑やかな駅構内へと歩みを進めた。
「深見さん?」
「どうかしましたか?」
「また、相談してもいいですか?」
「ええ、もちろん」
一呼吸置いて、要は続けた。
「きっとまた、あの居酒屋で会えますよ」
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