貞操逆転ごはん作る系男騎士
鋸鎚のこ
第1話 貞操逆転世界の死刑囚
──デッッッッッッッ!!
これが最期に見る光景ならば、悔いはない。
拘束され、泥でぬかるんだ地面に座り込まされている姿勢から、軍服に身を包んだ美女の見事に張り出した下乳を眺めていた。
私ことデュシャ・フォルダントが、脱獄した途端に捕えられたのは予定外だった。縄で縛り上げられ引き出されたのは軍服美女の前。女は折り畳み式の椅子に脚を組んで腰掛け、采配を手で弄んでいる。
「ところで……この男は?」
綺麗な女だった。冷ややかな瞳に見つめられる。その声は恐ろしいほど抑揚がなかったが、音楽的なまでに美しい。そして胸がこれでもかと大きかった。
「先遣隊が捕えました、脱獄囚です」
そばに控えている部下らしき細めの女が淡々と答える。
「ふむ、殺すか」
この場で一番偉い立場らしき女の非情な言葉を聞いて、私の背筋に冷たいものが走る。せっかく地獄から逃げ出せたというのに、すぐに捕えられて殺されるとは。
神よ。もし存在するのなら、最初から一縷の希望など見せないで欲しかった。
「陛下、死刑囚の中にはリトゥイネ王国にとって都合の悪い政治犯や学者もおりますれば。一概に殺してしまうのはいかがなものかと」
だが部下が冷徹な女をたしなめるように意見を申し立てた。陛下と呼ぶのが聞こえたのは気のせいだろうか。
「……他の死刑囚も連れてこい」
そうして始まったのは、罪状を読み上げられてはその場で斬首されていく死刑囚の処罰だった。もはや害獣の駆除と言うべきだろう。命乞いの絶叫が血飛沫に変わっていく。強盗殺人、旅人を狙う賊といった凶悪犯が次々に首を落とされていく一方で、リトゥイネの政治体制を批判しただけで囚人となった者は助けられたようだ。
そしてついに、私の番になった。
「この脱獄囚の罪状を述べよ」
暁の空に遠くの山々の冠雪が菫色に染まっている
いかん、現実逃避してしまった。私はこの地獄での三ヶ月──走馬灯というものだろう──を思い出していた。
社畜の連勤術師として童貞のまま過労死。転生した私は地獄で目を覚ました。敵国リトゥイネの戦争捕虜として死刑囚鉱山に送り込まれていたのだ。
転生したら貞操逆転世界で死刑囚だった件について。
神はなんて無慈悲な存在なのだろうか──。
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