家族仲と恋愛を両立するのは難しい!

冬水葵

第1話 天崎涼葉

この、私立八景しりつやけい中学・高等学校は全国的に見てもトップレベルの偏差値を誇っている。

そして八景高校の制服は可愛いと評判が良く、女性の顔面偏差値が高いことでも有名な学校だ。

その中でも、俺と同じクラスの天崎涼葉あまさきすずはは八景高校の生徒会で書記をしていて、1年生で1.2と言われる美貌に、テストの成績も中等部の時からずっと1位という頭の良さ、おまけに性格まで良いという、神様に2物も3物も貰っているであろう人間だ。

そのため、中等部の頃からよくモテており、告白された回数は30を超えるとか何とか⋯⋯だが、いまだに彼氏は出来たことがないらしい。

そんな天崎涼葉は今⋯⋯


「香澄くん、あなたが好きです、私と付き合ってくれませんか?」


時刻は昼休み、涼葉は上目遣いをしながらそんなことを言っている。

大抵の男子ならば即OKしそうな状況だが、その告白を受けている香澄伊織かすみいおりは⋯⋯


「ごめん」


1秒の間すら開けずに即答した。


「そうですか⋯⋯理由をお聞きしてもよろしいですか?」

「単純に、お前が好きじゃないからだ」

「そうですか⋯⋯しょうがないですね、また出直します」

「⋯⋯なぁ、1つ言っていいか?」

「ぇぇ、なんなりと」

「そろそろ1週間に1回告白してくんのやめてくれないか!?」


そう、涼葉が伊織に告白するのは、これで4回目、初回の告白から1週間ごとに毎週告白を繰り返しているのだ!


「やはり、好きな人に意識してもらうには自分の好意を伝えるのが1番かなと思いまして」

「いやそれ1回でいいのよ、毎週毎週伝える必要は無いのよ」

「こちらの方が伝わるかなと思いまして⋯⋯」

「いやもう十分に伝わったから、もうお腹いっぱいなんよ」

「おなかいっぱい?⋯⋯あ、先程ご飯を食べたからでしょうか?」

「いや、そういう意味じゃないんだけど⋯⋯」


伊織とて、最初に涼葉が告白してきた時は嘘告白を疑った。

しかし、涼葉があまりに真っ直ぐな瞳で伝えてくるため、その考えはすぐに無くなった。


「それでは、どうやってこれ以上仲良くなれば⋯⋯」

「⋯⋯それじゃあ、天崎さんがよければ連絡先でも交換すr⋯⋯」

「いいんですか!?」

「おぉう、めっちゃ食い気味じゃん」

「連絡先、交換してくれるんですか!?」

「こっちから言ったんだから、嫌だとは言わないよ」

「やった!ありがとうございます!」

「そんなに喜ぶほどのもんでもないんだけどなぁ⋯⋯」


涼葉があまりにも嬉しそうにはしゃぐので、伊織も苦笑してしまう。


「早く交換しましょう、さぁ早く!」

「分かった、分かったからちょっと落ち着いて、軽いキャラ崩壊してるから」


涼葉を何とか抑えた伊織は、某連絡アプリで涼葉とアカウントを交換した。


「あの、今日の夜連絡してみてもいいですか⋯⋯?」


涼葉は不安そうに瞳を潤わせて上目遣いでそう聞いた。

まぁ美少女にこんな頼み方をされて断れる人間がいる訳もなく。


「あ、あぁもちろん良いぞ」


伊織がそう言った瞬間、涼葉の表情はパァっと花が咲いたように晴れやかになった。


「では、今夜よろしくお願いしますね!約束ですからね!」

「分かってるよ」


その時、昼休みの終わりをつげるチャイムが鳴った。


「それでは、また放課後に」

「ああ、また放課後な」


そう言って、涼葉は教室に帰っていった。

まぁ、涼葉と伊織は同じクラスなのですぐに合うことになるのだが。


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