ナメアイ
桜田 優鈴
プロローグ
朝寝坊をしてしまったこと。癖毛が何時にも増して外ハネしていること。慌てて履こうとしたストッキングを伝線させて駄目にしてしまったこと。今日が十一月三十日であること。
そんなとるに足らない、ひとつひとつを見れば大したことがないような諸々が重なって混ざり合ってぐちゃぐちゃになって、
午前十時を知らせる陽気なアナウンスが流れる。開店の時間だ。自動ドアのロックを外すために入口へ向かうと、店先に背の大きな男性がガラス壁に寄りかかって立っている姿が見えて、首を傾げる。この雑貨屋に置いている商品はどれもターゲット層が女性で、童話をテーマにしたメルヘンチックなデザインのものばかり。男性なんて、年に数えるほどしか来店しない。不思議に感じたが、すぐに彼女さんにプレゼントでも買いに来たのかなとその目的らしい事項を思いついて勝手に納得して、ついでに勝手にほっこりして、馴れた操作で開錠した。
「いらっ…」
いらっしゃいませ、と紡ごうとした唇はそれを成し遂げられずに震え出す。時の流れは彼を大人にしていたけれど、その顔を見紛うことなど有り得ない。その人物の正体を理解したとき、視界がゆらりと波立った。
* * *
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ナメアイ 桜田 優鈴 @yuuRi-sakura
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