サンタおでん ~サンタさんも、おでんを囲みます~

椎名富比路@ツクールゲーム原案コン大賞

サンタおでん

「いやあ、今年も寒かったねえ」


「ですよねえ。今日は特別寒かったですね。十月まで夏日が続いたのってなんだったんだってくらいで」


 サンタさんとトナカイくんが、おうちに帰ってきました。


 今日は仲間が、お鍋を作って待ってくれているそうです。


 いったい、なんのお鍋を作ってくれているんでしょうか。


「待ってましたよ、西のサンタさん。お鍋、煮えてますよー」


 いっしょにお仕事をしている仲間が、サンタさんのためにお鍋を用意してくれています。


 ミニスカサンタさんが、率先して作ってくれたのは……。


「おっ。おでんですかーっ。食べたかったんですよぉ。東のサンタさん」


「でしょ? ささ、どうぞどうぞ」


 ミニスカサンタさんが、サンタさんのために、コタツの脇を開けてくれました。


「では、今年もたくさんの子どもたちにプレゼントを配ったので、乾杯!」


「かんぱーいっ」


 サンタさんが音頭を取って、おでんパーティの始まりです。


「うん、うまい! 牛スジ最高」


「糸こんにゃくって、おでんにするとこうもおいしいんですよねえ」


 サンタさんとトナカイくんが、おでんの具材をハフホフと頬張りました。


「タマゴが、おっふおっふ」


「ジャガイモも、ホクホクですよ」


「なんといっても、大根がなんとも言えないねえ」


「はい、サンタさん。これだけで、あと五年は戦えますよ」


 おでんも楽しいですが、やはりいっしょに食べてくれる人がいてこその、お鍋です。


「ささ、東のサンタさんもどうぞ。待ち遠しかったでしょ?」


 サンタさんが、ミニスカサンタさんのために、おでんをよそいました。


「ありがとうございます。ごぼ天のヘタリ具合が、最高ですね」


「だよねえ。ごぼ天はちょっとヘタってるくらいが、食べ頃だと思うよ」


 サンタさんは、しっかりしたごぼ天も、それはそれで大好きです。

 ですが、話を合わせました。


「ああ、おいしかったです」


「シメをいただきますね」


 サンタさんは、白いご飯を用意します。


 おでんのおつゆを、ご飯にかけました。

 

「え、おじやにするんですか?」


「はい。おでんといえばこれでして」


 サンタさんが、おでんのおじやをサラサラと食べます。

 パートナーのトナカイくんも、同じようにおじやをサラサラ。


「へええ。変わっていますね。ウチはシメにうどんを入れるんですよ」


「そうだったね! 今日はそっちも、楽しもうかな?」


 今度はミニスカサンタさんが、おじやを。

 サンタさん組は、うどんを堪能しました。


「これは、うまい! おじやと甲乙つけがたいね!」


「うどんダシだから、合うよなと思っていましたけど、予想以上にうまいです」


 トナカイくんも、めちゃくちゃ気に入ったみたいです。


「おでんのおつゆとご飯で、甘くなるんですね」


 ミニスカサンタさんも、おじやをおいしく食べました。

 

「そうなんだ。これはこれで別腹なんだよ」


「新しい発見が、ありました」

 

「みんなでお鍋をするって、楽しいね!」


 ごちゃごちゃした具材も、一緒に煮込んだら、おでんになります。


 形が崩れたじゃがいもも、味があっていいですね。


 煮立って少しトロトロになりすぎた大根も、これはこれで味わい深いです。


 みんな好みが違って、みんないいのです。


「ごちそうさまでした」


「いえいえ。サンタさん、今日はありがとうございます」


「え、どうして?」


「これは感謝なんです。孤児だったワタシに、サンタさんの修行をさせてくれて」


「いやいや。ボクだって昔、先代のサンタさんに同じようにトレーニングしてもらったんだ。お互い様だよ」


「そうだったんですね」


「トナカイくんだって、そうさ。二人して、寄り添い合って生きていたときに、サンタさんがお仕事をプレゼントしてくれたんだ」


 今では、サンタさんは自分の仕事を天職だと思っています。


「みんな個性があって、いいんだよ。これからも、子どもたちを幸せにしようね」


「はい。サンタさん」



 こうして、サンタさんの夜は更けていくのです。

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