0-12 ドラゴン討伐④
奴が木々にぶつかり倒れている。
――――殺したくなるだろ?
オレは奴の背後を狙い、物音を立てず接近する。奴から視線を外し、気配を消して、自分の身を隠す。
そして奴に木刀を振るった。
――――光の剣術“【宝刀】煌め……”
「……!!」
すると、奴は振るう直前で体外に蒸気を放出。
何とか反応し後ろに下がれたものの、ドラゴンを仕留め損なった。
「クソ……」
奴の体が徐々に縮んでいく。蒸気が地味地味と減っていくからわかる。
この間、オレは何もできない。
剣術で遠くから斬ることはできるが、この蒸気が出ている以上狙いが定まらず、かえって返り討ちにされてしまう。
やがて蒸気は収まった。そしてオレは驚愕した。
奴の身体がほぼオレぐらいにまで小さくなっていた。
力ではなく機動力とスピードを優先したか。こんな芸当は基本魔術には無い。恐らく奴の天性ま……いや、性質と言ったところか。
オレは木刀を持って身構える。
何か不味い空気を感じる。
奴もまたオレを睨んでくる。
「さあ、第二ラウンド……だ……」
嘘だろ。もうオレの
オレは奴に頬を殴られ、かなりの距離まで飛ばされた。
「イテテテテテ……」
なんとか直前でガードして防げたものの、頭から血が流れ出してきた。
くそ。こんなこと言ってる場合じゃねえ。
次が来る……!!
奴は先のスピードよりも速くオレに突進してくる。
奴の口から魔法陣を展開。一斉に最低位魔術〈
一本一本が火傷になるほどの熱を持った槍。魔術返しで防ぐのも良いが、さすがにこの量を返すとなると奴に隙を与えてしまうし、第一オレが今持っている武器は木刀だ。
ここは躱す。
オレは奴に向かった。炎の槍を躱し続け、奴に仕掛ける。
「うぉおおおおおおおおお……!!」
「ガララララララララララ……!!」
狙うは奴の首。オレはそこしか勝機は無い。
奴は高位魔術〈
オレはここで決めなきゃ奴に勝ち目は無い。
奴との距離はわすが三十センチメートル。奴は頭を突っ込ませ、押し寄せる。オレは横に反復して躱し、そして木刀を握りしめ剣術を放った。
――――光の剣術“【宝刀】煌めき”……!!
決まった。確信を持ってそう言えた。
だが、何故だろう。手応えが無い。
確かにオレは奴の首に当たった感覚がある。そして、スルッと木刀が首全体に行き届いたのも。
と、ここで何かが地面に落ちた音がした。
オレは恐る恐るその落ちた方向に目を配る。
「は……?」
――木刀の刃先がそこにはあった。
ちょっと待て。さっきの感覚は一体なんだったんだ。確かに奴の首を落とした。それはわかる。
奴が現に倒れているからな。
だとしたら、奴の首はまさか……。さっき前足を斬った時よりも硬くなってるのか。
ここで、オレの違和感が当たる。
「おいおい、ちょっと待て。嘘、だろ……」
奴の首が見る見るうちに再生していく。
この再生速度、まさか……!
最高位魔術〈超速再生〉。治療系の高位魔術〈
なのに、こいつはそれをやっている。
このドラゴンはヤバい。確実に仕留めないと、どのような被害を出すのかわからない。
でも、どうやって……。
あいつにはオレの剣術はほとんど通らないだろう。
なぜなら奴は知能が高いからだ。吸収するのが速い。
さらに奴の皮膚が固くなっているはずだ。
ついでに木刀が折れてしまっている。くそ。
ここに来る途中にあったボロ臭い武器屋で何でもいいから剣を買っとけばよかった。
ならどうする。逃げるか? 戦うか?
逃げてもいい。どうせ元々
ただ、逃げた先にあるのは……。
『え、ドラゴンも倒せなかったの……!? そんなんでよく私を超えれると思ったよね……!! チョーウケるんだけど!』
オレはイラッとした。フレイのあの顔。マジで腹立つわ。
だからオレは逃げる選択肢なんて無い。戦おう。
そう思って木刀の柄を捨てて、素手の勝負に持ち込む。
大丈夫。オレにはまだ策がある。
「さて、第三ラウンドと行こうか……!」
走った。ただ奴目掛けて突進した。
なーに、心配することは無いさ。
オレはノア・ライトマン。一流魔術師ノア・ライトマンだ……!!
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