無能と罵られて伯爵家を追放された先は、魔獣の森でした~僕を追放したせいで実家は地獄を見てるらしいが知ったことじゃないので、美少女達とスローライフを楽しみます~
果 一
第1話 伯爵家を追放されました
「ルーク=マークス、貴様を我が伯爵家から永久追放する!」
重々しいクソ親父の言葉と共に、周りに従者の如く控えていた2人の兄――長男ガイと次男デーズが頭を踏みつけてくる。
「ははははっ! こりゃ傑作だぜ! お前にはお似合いな末路だなぁ!」
「まったくだ! これからこき使う相手がいなくなるのは残念だが、テメェの存在にストレスを感じなくて嬉しいぜ! 今夜は宴だぁ!」
グリグリと、頭の奥を刺激する痛みに耐えながら、僕は物思う。
――やった! と。
あ、言っておくけど僕は別に頭を踏まれて喜ぶドM趣味はない。
このときを、どれほど待ち望んでいただろう?
代々優秀な魔法使いを輩出してきた名門の家系=マークス侯爵家の三男として生まれてから、今日までの15年間。僕はひたすら虐げられてきた。
――「おい無能! お前、俺様の魔法の的になれ!」――
――「あーあ。お前が攻撃避けたせいで納屋が壊れちまったじゃねぇか。直しとけ」――
――「お前の飯? バカかよあるわけねぇだろ。そんなに欲しけりゃチキンの骨をわけてやんよ」――
――「おい、昨日洗濯頼んだのにまだ乾いてねぇじゃねぇか? は? 雨だったから仕方ない? 火属性魔法で乾かすこともできねぇのか。あ、そーかお前、無能だから魔法の勉強もさせて貰えないんだっけ? 悪い悪い。ぎゃはははは!」――
脳裏を駆け巡る、兄たちの下卑た嘲笑と、親の失意に満ちた目。
それもこれも、僕が生まれ持ったスキルのせいだった。
スキル。人が1人につき一つもつ特異能力。
魔法使いとして名を馳せた武闘派の血を引く家系なのもあってか、長男はあらゆるものを切り裂く《絶対斬撃》。次男は、あらゆるステータスが跳ね上がる《身体能力強化》。
そして僕が持ったのは――あらゆるスキルを見ただけで学習する《コピー》。
これだけ聞けば強すぎるスキルだが、ある弱点が浮き彫りになった。
それは、コピー元となったスキルよりも精度が大幅に落ちること。
その結果、器用貧乏ならぬ不器用貧乏とされ、僕は落ちこぼれとして不当な扱いをされるようになった。
元々、伯爵である父が平民の愛人に産ませた子どものせいもあったのだろう。
兄達には優秀な魔法の家庭教師がついていて、来年からは王都にある魔法学校にまで通うというのに、僕は未だに初級魔法すら使えない。
そればかりか、兄たちからは魔法の実験台と言われ、散々魔法を撃たれてきたし、本来メイドがやる仕事を全て僕1人に押しつけてきた。
炊事、洗濯、掃除。小屋や家具の修理まで、何もかも、嫌がらせのように。
体調を崩し、しんどい日でも誰もお見舞いにきてくれないばかりか、バケツいっぱいの汚水をぶっかけてたたき起こし、夜更けまでこき使われる。
そんな生活を続けていた僕に、ようやく転機がやって来た。
――ああ、ようやくこの家からおさらばできる。
「お、お願いです父上! どうかお考え直しください! なんでもしますから!」
歓喜に打ち震えるが、ここは堪える。コイツ等のことだ、惨めったらしく喚き散らせばむしろ喜んで追放してくれる。
誰が「父上!」だ。こんな血税で肥え太った豚など、なぜ父と呼ばねばならない。
胸の奥底から吐き気がこみ上げてくるが、惨めに足下にすがりついて泣きわめく。
「ええい、気色悪い! こんなのが我が息子などと、思いたくもないわ!」
額に青筋を浮かべ、クソ親父が僕の顎を蹴り上げる。
僕の身体は、冷たい床の上に転げ落ちた。
「早く追放してしまいましょう! 転移魔法を使います!」
「おう。そうだな!」
兄が何事かをつぶやくと、僕の周囲の床に青緑色の魔法陣が浮かぶ。
「じゃあな無能。もう二度と顔見せんな!」
「待って兄さん!」
あばよ兄貴!
心の中ではそう思い、気付かれない程度に変顔で煽りつつ、僕の視界が息も詰まるような実家から別の場所に切り替わった。
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