異世界転生して必死にレベリングしていたら、大魔法使いになっていた

仲仁へび(旧:離久)

第1話




 どうやら、異世界転生した先が悪かったようだ。

 赤ん坊に転生してそれから3年後。


 ふとした時、両親が話していたのを聞いてしまったのだ。


「もうこの世界は終わりね」

「この子が大人になってすぐ世界が滅ぶなんて」


 びっくりすぎる。


 私がいるその世界はあと20年で滅ぶって嘘でしょ?

 なんか話によると魔王がうんたらかんたらするらしい。


 前世では20歳でぽっくり言った私は、ちょっとした不注意の事故が原因で、自業自得だったと言える。

 だけど、だからこそそれ以上の年数を生きたいとおもっていたのに。


 真っ青になった私は必死にレベリングするしかなくなった。


 この世界に、レベルという概念があるのが幸い。

 しかも前世でやっていたファンタジーゲームの舞台に似ているから、まだ良かった。


 それでも。

 それでも。


 なんでこんな世界に転生するのよ。


 嘆かずにはいられない。


 実際嘆いた。


 三日三晩、嘆いた。


 もちろん両親に心配されて、お医者様にみせられるまでがワンセットだった。


 ちなみに「とても健康な女の子です。ちょっと個性的なだけの」と言う結果だった。





 しかし嘆いたところで何も変わらないので、私は必死になって修行した。


 名のある魔法使いに弟子入りして、名のある猛者に戦いを挑み。


 人々を困らせるやばいモンスターを討伐して経験値を入手、あと戦い方を学んでいった。


 そしたらそこそこ実力のある魔法使いになった。


 だから、勇者パーティーの初期メンバーとして入れる事になったのは幸運だ。


 この世界が滅ぶ原因は、魔王が暴れているから。


 シンプルな理由だが、解決はそうじゃない。


 魔王はなんと4人いて、同時に倒さないといけないらしいからだ。


 私は必死にあれから12人くらいに増えたパーティーの仲間と、息を合わせる訓練をした。


 その過程で、思考の一部を共有する魔法を開発したり、未来を読む力を身に着けたりした。


 プロの魔法使いも目玉が飛び出るくらいのビックリの所業だったが、名誉とか要らない。


 だって魔法倒せないと、死ぬし。


 そういうわけで、ちょっと有名な魔法使いになった私は、仲間達とともに魔王当別へと向かう。






 そういったわけで場面転換。


 ぱぱっと時間を早送り。


 決戦の舞台へ。


 魔王との戦いは、いつも死ぬかと思うような激戦だった。


 三途の川が見えたのは数えきれない。


 でも、なんやかんやして、あれこれしながら生き残れた。


 つまり魔王を倒せたのだ。


 その瞬間は、はめをはずして「いやったあああああああ。いやっほおおおおい」と叫んでしまったくらいだ。


 新しく仲間になった追加のメンバーがドン引きするくらいに。


 恥ずかしい思いをしたが、そうもなる。


 テンションぶち上がる。


 だって、第二の人生あってラッキーと思った矢先に、地獄に突き落とされ、第二の人生の時間全てを世界救世のために、ではなく自分が生き残るために努力してきたのだから。


 喜び大爆発だ。


「あんなに喜ぶなんて(ドン引き顔)」と言われたけど、それでも良い。


 今までは世界情勢が情勢だったたけに、子供の頃よりは自重してきたけど、最初の人生してた時のように普通にしていていいのだから。これからは楽観的に生きよう。






 というわけで、私はすごい魔法使いとして王都に帰還。


 色々と豪華な感じに歓待された。


 その最中、新聞記者に。


「世界を救う原動力はなんでしょうか」とインタビューされたので、私は正直に答えた。


「死にたくなかったから」


 と。


 でもあんまりじゃない?


 続編があるなんて聞いてないわよ。







 今度は、魔王が100体になったのを討伐するという、無理ゲーのゲームの舞台だ。


 クソゲーとしてあっちの世界で発売されたらしい。


 どっかの地域で出会った別の転生者が泣きながらそう言ってきた。


 今度の猶予は5年。


 5年で世界が滅ぶらしい。


 もちろん私は死にたくないので、必死でレベリングした。


 この世界の秘境にかくれすむ大精霊に会って、頑張ってまた修行。


 人間の限界を超えて、すごい魔力量を体内に蓄えた。


 しかも竜とかいう伝説の生き物にもじゃんじゃん挑んでドラゴンスレイヤーにもなった。


 そうして5年が経過してあらわれたのは魔王100体。


 クリアしたもののいない、クソゲーな舞台の世界の通りに。


 激戦の中の激戦だった。


 どれくらいかとお言うと、色々ヤバい感じになるくらい。


 そりゃもう私は阿修羅になった。


「うおおおおおお」とか「どりゃああああ」とか乙女にあるまじき気合の声で、魔法を連発。


 でも、そのかいあってか、魔王は全て討伐。


 勇者達も手伝ってくれたので、被害も思ったよりは出なかった。


 私は何だかんだで生き延びる事ができたのだ。


 そんな私に訪れた再び歓待。


 前回よりもさらに良い感じの扱いを受けた。


 そして同じ記者に質問される。


「世界滅亡に挑むあなたの原動力とはなんでしょうか」

「生き延びたいという思いです」


 正直に答えた。


 とてもつまらなそうな内容だが、嘘を吐けない人間なので仕方がない。


 これで、私の人生に安らぎが訪れることだろう。







 と、思っていた。


 思っていたのだが、ところがそうじゃない。


 今度は精霊界で邪神が悪さをした。


 精霊界が滅びの危機に瀕しているので、隣の世界にある人間界も危機に陥った。


 仕方がないから、私は泣きながらレベリングした。


 宇宙からきた、邪神の親戚さん達をえいやっと魔法で倒しながら。


 そうしたら、レベルがカンスト。


「あなた以外に魔法をこんなにも極めた人はいません」


 と言われるぐらいになった。


 そんな感じなので、邪神も難なく倒せた。


 レベル的には楽勝だった。


 だが邪神は妙に人間臭くて悪口を言ってきたのが苦労した。


「自分本位」とか、「他人の事なんてどうでもいい」とか「救世主にふさわしくない」とか。


 それでも頑張って倒した。


 共に戦ってくれた勇者達とともに。


 涙目になりながら。


(精神的に)疲労困憊になっていたら、勇者達が慰めてくれた。


「自分の為に戦えるのも立派な事だと。そのついでに他人をすくってやれるお前は十分に優しい」と言ってくれた。


 優しいのはそっちの方だよおおおおお。


 私は滝の様な涙を流して、勇者に縋りついた。


 ムードに流された勇者とはなんか色々あって、関係が進展。


 なぜか付き合う事になった。


 あ、ちなみに勇者は男です。


 イケメンです。


 女性ならみんな求婚するくらいのだけど、私にはただの戦力としてしかカウントしてなかった。


 今思ったらひどいね。ごめん。





 そういったわけで、精霊界と人間界に救世主になった私は、気が付くとすごい魔法使いになっていた。


 異世界転生して必死にレベリングしていたら、大魔法使いになっていた。


 だが、そんな波乱万丈ストーリーの主人公になるよりも、ただのスローライフがしたかったなあ。涙目。


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