夜の水槽で息をする

翡翠 くらげ

第1話

夜がもうすぐ明けるのだろう。ベッドから見える窓に掛かるカーテンから薄暗い光が入ってくる。

また、朝がきたことに安堵するようなまた朝がきてしまったことにどこか痛みを覚えるような複雑な気持ちに陥る。

気だるさが残るのは、きっと昨日が雨だったせいだろう。重い体をゆっくり起こしてベッドを少し整える。まだ学校に行くには早すぎるが着なれた制服に手を通す。髪を軽くとかして一応窓から外の空を確認する。

「今日は晴れだから行けるな」

誰にきかせるわけでもないが小さく呟いた。

リュックを持ってまだ、寝ている家族を起こさないようにそっと玄関を出る。

外はもう夏前だが、まだ少し薄ら寒さをおぼえる。昨日の雨のせいもあるだろう。今から梅雨の時期が始まると少し鬱々としてしまう。学校指定のカーディガンの袖を少し伸ばしてからポケットにいれていた音楽プレイヤーを取り出す。イヤホンを接続して、耳に押し込みプレイリストの一番上の曲を再生する。

外に出ると紫陽花が雫を乗せて反射で光っていた。まだ残っている地面の水溜まりを踏まないように気をつけて歩く。

さしてかからない距離をゆっくり時間をかけて歩く。

重低音のピアノが響くのと反比例するように足取りは軽やかに目的地に向かっていった。

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夜の水槽で息をする 翡翠 くらげ @Yorunokurage_0

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