内田 Ⅱ
最悪だ。なんで祐希はこう、大切な事を先に云わないのだ!
「おい、待ってくれ綾人!」
「何だ、早く佐原春香の家を教えたまえ!」
「一体何がどうなっているんだよ?さっぱり分からないぞ!?」
全く。こいつは本当に頭が悪いのか?
「君の元に送られてきた手紙の差出人は、佐原慶次だ!きっと彼は僕らに先回りして春香の身に何かがあった証拠を突き止めてしまった!」
「根拠は!?」
息を切らしながら走って、祐希は僕に突き詰めた。
僕は呆れるように答える。
「君は本当に莫迦なのか!?『捜査本部は解散させろ』から、警察はこれ以上この事件に介入するな、ということが読み取れる。つまり、慶次は復讐を開始したんだよ!」
「はぁ!?」
「もし、彼が春香に何かあったと知ったとすれば、家で呑気に寝るような莫迦なことはしない!彼は春香の雪辱を果たすために登山サークルメンバーを襲おうとしているかもしれないんだよ!」
「かなり滅茶苦茶な論理だな!さすがは内田綾人だ!」
「滅茶苦茶なのは君の脳の小ささだよ!」
しかし、祐希も焦っていることは、さすがの僕でも表情から読み取れた。
左手でボリボリと、頭を掻く。
「確か、この辺りだったはずだ!」
「確か、では困る!」
「うるさい!莫迦!」
僕の中で取り巻いている不安の波長は頂点に到達した。
「綾人!」
「なんだ!?」
「慶次は一体どのようにして復讐を使用とするつもりだ!?」
「それを知りたいから、いま走っているんだろうが!」
「お前のお得意な支離滅裂推察でも良い!頭が混乱しているんだ、鎮静剤がほしい!」
「僕の推理を鎮静剤扱いするな!」
「黙れ!」
「まず、彼は春香に暴行を加えた人間を特定したはずだ!そして、凶器を調達し、一人ずつ……」
「その続きを聞かせろ!」
「云うまでも無いだろう!」
「あんな貧弱な青年に、そんな残虐な真似ができるとは思えない!」
「人を見かけで判断する警部殿がいるとは、日本の警察も落ちた物だな!」
「黙れ!」
内心、かなり苛ついていた。もう、虐殺は始まっているかもしれないのだ。
「あそこだ!あそこが佐原慶次の家だ!」
「よし、突撃するぞ!」
「突撃って……夜中の三時だぞ!」
「人の命がかかっているかもしれないんだぞ!そんなことに構っていられるか!それより、家に訪問した際に、何をするべきだ!?」
今度は長城がため息をつく。
「こんな夜中にすいません、だ!」
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